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ちょっと少なめですが。



「あんさん、これは不味いですわ。プレイヤーキラーに囲まれとりますやん」


 カイトーが慌てた声をあげる。

 確かに俺も、まさかこんなところにレッドネームプレイヤー。

 通称プレイヤーキラーがいるとは思わなかった。


「あれ、ローレントじゃね?」


「マジかよ、ついに俺らにもツキが回ってきたかなあ」


「レジェンド狩りがハマる説」


 数は三人。

 今まで見たプレイヤーキラーとは一線を画している部分がある。


 一人は鎖鎌を右手でブンブン振り回し。

 もう一人は短い手頃な曲刀を二本両手に遊ばせて。

 三人目は何もなく自然体の様子であるが……。


 そういう手合いはもう何度も戦ってきた。

 だいたい素手でぶん殴りますよってやつに限って、暗器を仕込んでいるのは容易に想像がつく。

 着ている装備がゆったりとしているのがその証拠だ。

 なんか殺し屋のバラエティパックって感じがした。


「とりあえず誰が行くかじゃね?」


「一番槍は俺がかましたいところだけど、さすがにレジェンドクラスだからなあ」


「全員でかかっても箔が付く説」


 俺の目の前で三人はそう言い合うと、改めて凶悪そうな笑顔をこちらに向けた。


「まあ依頼だと時計塔の宝物を守れって言われてっけどさ、この様子じゃ既に荒らされた後じゃね?」


「なら殺してしまえば装備は俺らが全ていただけるよなあ」


「レジェンドクラスのドロップアイテムは超美味い説」


 そして殺し屋のバラエティパックはいきなり襲いかかってきた。

 カイトーの短い悲鳴が聞こえてきて、俺の袖口をぎゅっと握りしめるが、野郎型ヒロインはお呼びでない。

 後ろ蹴りで遠くに転がすと、そのまま前に一歩踏み出した。


 先に飛来するのは鎖鎌。

 馬鹿正直に投げつけて、刃の部分が俺に向かって居なかったので楽だった。


「めっちゃ躱すじゃん?」


 躱さなくても別にいいのだがな。

 握りが甘かったので六尺棒で鎖を絡め取って奪う。


「あっ! 返せじゃん!」


 そして改めて奪った武器で戦う。

 本当の鎖鎌の使い方を教えてやろう。


 もともとこのゲームは武器スロットは二つしか用意されて居なかったのだが、大型アップデートとともに武器スロットは鳴りを潜め、持てるだけ持つことができるようになっていた。

 相手からこうして奪った武器も使えるようになるし、いくらでも身につけておけるのだが……。

 よりリアルに近づくに連れて、弓使いは矢を常に矢筒に入れておいて自分でつがえなければならない仕様に数を減らしたとかなんとか。


 ちなみにリアルに近くなったと言ってもアポートで相手の武器を奪う事は出来ない。

 仕方ないよな。


「くっ、取り返すの手伝うじゃん!」


 鎖鎌を取られた男は予備の片手剣を取り出して曲刀男と共に駆け出す。

 暗器の男は未だ後方で俺の隙を窺っているようだが、初撃で失敗した時点で勝機はないと思った方がいいのにな。


「ただ避けるだけじゃ、俺の曲刀はよけれねぇよ」


 そんな事を言いながら曲刀使いが曲刀を投擲した。

 あらぬ方向へと飛んで言っているのだが、何かあるのだろうか。


「ははっ、多分奴はブーメラン属性を知らないんじゃね? 大人しくひき肉になれ!」


「名付けて夢幻二刀流だあ」


 ブーメラン属性……確かに知らないが、察しはつくだろう。

 風を切り音が聞こえて着て、そして迫ってきているのが感覚でわかる。


「うわっ! ほんまにブーメランみたいに戻って来てんで!? 避けな!」


 カイトーの声で確信に変わる。

 面白い属性だが、俺には全く必要が無い属性だった。

 あっさり躱すと、投げられた曲刀は回転しながらプレイヤーキラーの手に収まった。


「後ろの野郎が邪魔じゃね?」


「そうだな先にやっちまおうかあ」


「うわわ! 助けてあんさん! 目をつけられてしもうた!」


「わかったから、静かにしてて」


 さて、本当の鎖鎌を見せてやろう。

 まず分銅を回転させ投げる。

 正直言って、鎌よりも分銅の方が破壊力があるのだ。

 分銅鎖という暗器があるわけだが、鎖鎌より短く取り回しがし易い。

 無手の空手と組み合わせる事で、まるで無双のような強さを発揮した空手家と戦ったことがある。


「ひっ!? あぶねぇ!!」


 分銅の一撃を転げるように躱したプレイヤーキラーだったが、鎖鎌での本領はここから発揮される。

 鎖の長さは約三メートル。

 手に持ち振り回した状態だと約半分程か。


「お、おい下!」


「ひえ? かぱっ!?」


 分銅は囮。

 本来は分銅を投げた逆の手で時計回りに回転させた鎌の方を、下から抉りこむようにして斬りつける。

 琉球古武術の一つである鎖鎌は、砂浜が多い沖縄にてよく使われていた。

 柔らかい砂中を、砂を巻き上げながらいきなり出現し斬りつけるなかなか面白い武器なのだ。


「お、おい!?」


 鎌はプレイヤーキラーの顎から顔面に突き刺さる。

 即死だな。

 この様に、鎖鎌はただ闇雲に投げつけて使う武器ではなく。

 分銅を振り回して撹乱しながら、本懐の鎌は下方の死角を用いて使う。


 わかったかな?

 プレイヤーキラーくん。




ローレントの鎖鎌講座でした。




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