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「うるさいわね! さっさと前線に行きなさいよ!」
揶揄ったらドヤされてしまった。
これは俺が悪いな。
言われた通り前線を向く。
ノーチェを駆って、全力で突撃と行こうじゃないか。
「……違う迂回して横を叩く」
「わかった」
混乱する中央に突っ込んで掻き乱したい欲が出てしまった。
今回、俺の役目は薄い弱い脆いの三拍子が揃った部分の補助と攻撃だ。
前線組は、既にアルジャーノの全体補助魔法スキルを掛けてもらっている。
掛けなおしの為に奔走する必要はないので、強い敵個体がいそうな場所を順次巡って行こうか。
【構成員】Lv50
・ソルジャーエリート
・騎乗中
【構成員】Lv45
・ソルジャー
【構成員】Lv45
・ソルジャー
【構成員】Lv45
・ソルジャー
【構成員】Lv45
・ソルジャー
馬に乗っているのが、ソルジャーエリート。
カポレジームはまだ後方で待機しているのだろう。
トンスキオーネファミリーの時より開始のレベルが高い。
こっちの平均レベルはいくつくらいだろうか。
俺はともかく、ブラウでもまだレベル50にはなっていない。
届いているのは十六夜、アンジェリックくらいか。
……現状、廃人の壁とはレベル50なのだろうか?
わずかな疑問を胸に抱いて、ノーチェと共に敵の横腹に突っ込んだ。
「単騎で馬鹿が来やがるぜ! 蜂の巣にしてやれ!」
ソルジャーエリートがそう叫んでいる。
魔銃なんか、当たらない。
「……残像すごい」
「ノーチェを褒めてやってくれるか」
「……うん、素晴らしいお馬さん」
「ブルルルルッッ!!!」
アルジャーノがノーチェの体を優しく撫でた。
地を駆ける速さが少し増して、すごい残像で魔銃の射線から逃れていく。
どうもこの黒馬さん、女性プレイヤーとか女性NPCから撫でられるとすごく嬉しがる。
というか興奮してるんじゃないかってくらい鼻を鳴らす。
さて、俺からすれば味方の能力が上昇する分には何ら問題は無い。
むしろもっとやってくれアルジャーノって感じだ。
そして単騎だ蜂の巣だと豪語していたなソルジャーエリート。
俺らは決して単騎では無い。
ノーチェの左側にはローヴォが構えて不幸を振りまいている。
さらに、既に気性の荒い奴が俺の命令を無視して単身特攻をかけていたりする。
「うわああああああああ!?!?!?」
「な、なんだこいつ……クリムゾンコニー!? なぜ赤色の覇者がこんなところにいるんだ!?」
空からの強襲に、マフィア達は大きく動揺している。
「ギィッ!」
着地で二人犠牲になった。
そしてすぐにルビーは空へと戻っていく。
……味方につけたら本当に頼もしい兎だなあ。
「いくぞローヴォ、ノーチェ」
俺もそう合図を出すと、敵軍に切り込んだ。
得物は悪鬼ノ刀。
この時のために散々我慢させておいた気がする。
抜きはなった刀身は人の血に飢えている、そんな気がした。
「……ライトサンクチュアリ、……リットライト、……ヒールボール」
アルジャーノが発光、そして光の玉が六つ出現し夜の牧地を照らし、その玉がアルジャーノを中心に回転。
ヒールボールが当たった味方の体力が回復している。
光属性魔法使いの本領が発揮されたというところだろうか。
「……ライトブレス継続中」
ライトサンクチュアリは、闇属性魔法スキルのダークサークルのような物。
だが、闇属性魔法と大きく違う点は、プレイヤー自身が発光し移動しても効力が残っているという点だ。
ダークサークルは動かざること山の如しっていう形で、フィールドに対象エリアを作ってその中で闇属性魔法の効果が上昇するというスキルだった。
自分が発生地点となって動き回れる点は素晴らしい。
「便利だな」
「……闇魔法のように侵食はない。光を遮られた場合、効力が弱まる可能性がある」
メリット、デメリットが両スキルともあるってことだな。
密着状態にある俺、ノーチェは勝手にHPが回復いく。
ますます便利だった。
「油断してんじゃねぇ! 上役が来る前に俺らで片ァつけるんだよ!!」
一応最初の取り掛かりは成功した形になって入るが、人での数が違う。
ブラウのクランとアンジェリックの騎兵隊は徐々に押され始めて入る始末。
……一発撃っとくか?
エナジーブラスト。
側面から見ると、敵は一直線に並んでるし。
絶好の射撃ポジションな気がする。
「……何故、一時離脱する?」
ノーチェを切り返して、ローヴォを殿とし一時離脱すると、アルジャーノが疑問を浮かべていた。
「まあ、すぐわかる」
詠唱を開始していると、エリートソルジャーの声が聞こえて来た。
「ハッ! 尻尾巻いて逃げやがったぜ!!」
どうやら味方を鼓舞しているらしい。
戦場では士気を上げることは重要だからな。
「エナジーブラスト」
「あの光属性魔法使いにろくなサポートをさせ……ぐうわああああ!!!??」
エナジーブラストが直撃し、悲痛な叫び声をあげていた。
アルジャーノのボディーガードだとでも思っていたのか?
残念、人馬一体型の兵器でした。
「ちょ!! 危なかったじゃないですか!!?」
自律行動して敵を狩る二体の魔物。
本体はバッドステータスを振りまきながら残像を使うぞ?
遠距離からはビームと銛を投げ。
接近戦だと邪気を纏った刀と衝撃がすごい六尺棒を振り回すぞ?
あと離脱機能と空中を蹴って復帰機能付きで、HPが自動で回復する。
ん? ブラウの声が聞こえたような……。
「あの黒い馬に乗って発光してるやつを狙えええ!! 絶対に殺せ! 殺さないとかき乱されるぞ!!」
「無理ですエリート! そっちに手を焼いて入るとこっちがギリギリ持ちません!」
よし、もう一発エナジーブラストを打ち込んだら接近してアルジャーノの回復魔法スキルをみんなに与えながらマナバーストでもぶちかましてみようかな。
お読みいただきありがとうございます。
昨日は馬刺しと桜鍋でした。
値は張りましたが、美味しいものですね。




