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 出現する敵は、普通の構成員と馬に騎乗した構成員たちだ。

 名馬クラスに乗っているものはいないが、全馬とも武装をしている。


「トンスキオーネファミリーの時はちょくちょく無法市民を見たけどな」


「ああ? 裏で適当に操作して薬の密売やってからな」


 トンスキオーネの言葉で思い出した。

 そういえば下水道に見るからに頭がやられた敵がいたような。


「最高にハッピーになれるぜ? ヤリすぎるとゾンビみてぇになっちまうがな」


 俺の疑問に対して、トンスキオーネは随分と歪んだ笑みを浮かべていた。


「……オルトウィル様には絶対にいえない単語ですね」


 ニシトモも苦笑いしながら会話に入ってくる。


「ハッ、だから裏でやってんだろ。使ってるのも裏のやつだ。俺は見境無しじゃねぇ」


「やるべき場所は弁える。トンスキオーネさんはかなりの商才をお持ちのようだ」


 苦笑いしている割に、ニシトモは乗り気な口調だったりする。

 敵のマフィアといよいよ開戦するというのに、悪どい儲け話だこと。


 もしかして。

 いや、もしかしなくてもトンスキオーネとニシトモの頭の中にはペンファルシオの縄張りを奪った後の商売戦略みたいな物があるんだろう。


「おっと、そろそろ飛び道具の射程内ですね。エアリルさんお願いします」


 会話しながらでも、ニシトモは距離を測っていたようだ。

 エアリルに飛び道具の命中率を下げるための魔法スキルをお願いする。


「緊張感のかけらもないわね……マジックポイント・ウィンド、ウィンドウォール」


 ため息をつきながら、エアリルは風属性魔法スキルの【マジックポイント・ウィンド】と【ウィンドウォール】を発動させる。

 作戦会議で聞いた話だと、マジックポイントは火風水土のいわゆる初期属性の魔法スキルでのみ、発生地点を指定してスキル発動させることができるスキルなんだとか。


 普通の魔法スキルは、自分自身プレイヤーを起点に発動する。

 その発動点を指定して、変則的な箇所からの魔法攻撃を可能にするのがこのスキルだ。


 闇雲にスキルを打ち込むよりも、後ろからの奇襲や意表をついた強襲などでクリティカルダメージが発動するという仕様のゲームなので、使いどころを間違えずに組み合わせる事で、なかなか強力なスキルに化ける。


 今回、エアリルが同時発動させているのはオーソドックスな風属性魔法スキルのウィンドウォール。

 一定確率で相手を弾き飛ばす風の壁を生み出すスキルだ。


 ダメージ軽減狙いなら十八豪のアクアベールのようにウィンドベールを使っても良いはずなのだが、今回のように規模が大きい戦いになると一人一人補助魔法をかけていくのに手間と労力がかかりMP効率も悪い。


 ニシトモの作戦にウィンドウォールをマジックポイントにて敵と俺達の丁度中間に発動させ、そもそも飛び道具の射線をずらしてしまおうという運用法を試みているのだ。


「ハッ、面白いように銃弾があたんねぇよな!」


「今回なんか運がいいわねぇ、逸らし吹き飛ばしの確率ってそんなに高くないスキルのはずなんだけれど?」


「まあ、こっちにはバッドラックウルフがいるから相対的に確率アップしてるって事だろ?」


「反則級ね。いったい何をどうすれば、ほぼほぼソロプレイの癖してそこまでキワモノになれるってのよ?」


「カカカッ! きめぇってよコンシリ! まあ俺もファミリーをたった一人に潰された時はきめぇって思ったがな!」


 ニシトモの馬車の上では、予想以上の戦果を挙げたエアリルの魔法スキルにご満悦のトンスキオーネがいた。

 作戦立案にこの贅肉も立ち入ってるから、調子に乗ってるんだろうか?


「あのな……」


「……前を向いて。そろそろ最前線が衝突する」


 トンスキオーネに言い返そうとしたら、後ろに座っていたアルジャーノに顔を掴まれて前を強制的に向けさせられた。

 くそデブ、いつか、ボコる。


 さてエアリルの魔法スキルにて、両者とも遠距離武器が使えなくなった。

 それを想定して、アンジェリックの騎兵隊の方々とブラウのクランが前線で突撃する準備をすでに終わらせていたのだ。


 敵の最初の布陣は、魔銃を抱えた構成員を前面に二列重ね、その後ろに武装した構成員と騎乗した構成員が控えている。

 長篠の戦いにしてはお粗末というか、正直現状バズーカ以外の魔銃系って完全武装した相手にはなかなか通用しないと個人的に思っている。


 俺に効果が無かったからな!!

 そんなことを言うと、またどこからかお前と比べるなとやっかみを受けそうなので言葉にするのは控えておくけど。


 開戦だ!

 で始まる戦いなんて、本当に運営が用意したイベントって感じがする。


 戦いは戦う前から始まっているのだ。

 指定された戦場で待ち構えているなんて、正直生ぬるいよ。


「言葉はいらない! 僕たちの意志は、この剣に込めろ!!」


「折れない剣!」


「不屈の意志!」


「自ら道を斬り拓け! それが僕らの剣の意志だ!」


「うおおおおおお!!!」


「幸運の女神が微笑んでいる!!!」


 ブラウ達がノリにノって騎馬をぐんぐん走らせている。

 アンジェリックの私兵達は基本的に無言なのだが、……ブラウ達に追随しているところを見ると楽しんでいるようだ。


「本来なら、飛び道具の効果をなくしてから騎馬戦の混戦に持ち込んで味方撃ちを危惧させてから、ローレントさんや十六夜さんにピンポイントで魔銃部隊を狙ってもらおうと思ってたのですが……」


「思いっきり突っ込んでるな、馬鹿どもが」


 ウィンドウォールが飛び道具を弾くことを知って、強く前に出た先走り隊。

 隊列を組み、その辺のデブのマフィアより遥かに練度の高いペンファルシオファミリーは、弾かれずに撃ち漏らさない、そんな絶対の射程に来るまでじっと待ち構えている。


「まあ、作戦に失敗はつきものですし、初めてのクランによる規模の大きな戦いでテンションが上がってるんでしょね。トンスキオーネさんも落ち着いて作戦を練り直しましょう」


「アドリブはそこまで得意じゃないんだがな……おい女」


「おい女じゃないわ、エアリルよ。ってかローレントとフレンドなんだからあんたは私の友達のパシリなのよね?」


「うぐ、こいつは俺のファミリーの相談役なだけだ」


「俺が相談役をしているのはコーサーファミリーだ。トンスキオーネ、お前はそこのアンダーボス。つまり部下だ。言うこと聞け」


「……コンシリエーレの野郎、立場を盾に調子こきやがって……ケッ! まあいいぜ、エアリルとか言ったな、とりあえずウィンドウォールの詠唱待機は済ませてあるんだろ?」


「もちろんよ」


「だったら冷静に待ち構えてる魔銃隊の目の前に発生させてやればいい。こっちには不幸の邪神が味方についてるからよ、面白いことになるぜ? カカカッ!」


「……なるほどね。パシリの癖になかなかやるわね、とりあえず了解! マジックポイント・ウィンド、ウィンドウォール!」


 前線スレスレに、エアリルは魔法スキルを打ち込む。

 遠くで「撃て!」と一緒に発砲音が聞こえて、そして阿鼻叫喚の悲鳴も聞こえてきた。


「上出来だ」


 トンスキオーネがニヤリと笑う。


「僕の嫁が最強の防壁をもってして応援してくれている! 行くぞおおおお!!!」


「ハッ! 風の女神の意志のもとに!」


「続けええええええええええ!!! 風の女神が微笑んでいる!!!」


「……ほんと馬鹿ばっかりね」


 その割にはエアリル、顔が紅潮しているようだが?

 







あとがき小話(読み飛ばしてOK)


そうですわたしがトンスキオーネです。(食生活を省みて)

肉肉焼肉、カクテル日本酒ウイスキーちゃんぽんにタバコタバコ。

そうですわたしがトンスキオーネです。(迫真的に書くことがありませんでした)

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