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日が落ちる、そして始まるカチコミ時である。
まず、作戦会議としゃれこむために、ニシトモが指定したログイン時間に合わせて臨時作戦本部の宿屋へと向かう。
「コンシリエーレ、久しぶりです」
「ローヴォもコンシリエーレも久しぶりだな!」
「もふもふが増えてる……」
会議室にはすでに大所帯が揃っていた。
その中にはコーサーとワルド、ベスタもいた。
ワルドとベスタはいつのまにか一丁前な雰囲気を持っていて、正直コーサーより頼りになりそうだった。
アンジェリックにコーサーが連れてかれた時、一緒について行った成果が出ていて何より。
それにしてもコーサーの方が……。
「お前は相変わらずだなコーサー」
「ひどいですいきなり! コンシリエーレ!」
「オホホ、ローレント様? あまり妾を見くびらないでくださりますることこの上なしに? 囚われた馬鹿を取り戻す前哨として、ペンファルシオの縄張りに単身向かい、帰還しただけでもなかなかの者に育ってなくて?」
そうだったのか。
聞いた話によると。
囚われたセバスチャンが舌を噛んで自害、もしくは先走って殺されないようにコーサーが単身潜伏し監視していたらしい。
『どうせテイムモンスターと同じで契約魔法スキルの効果で生き返るんだから、お逝きなさい』
と、いうアンジェリックのとんでも理論によって。
コーサーは泣く泣く従うしかなかったんだと……。
「ぐうううう! みんな人を物のように!」
現在進行形で泣いている。
「コーサー」
「はいい」
「生きて帰ってこれたんだろう?」
「何度も見つかりかけましたけどね」
「よくやった」
「コ、コンシリエーレ!!!」
褒めるとコーサーはさらに泣いた。
まさか、あなたが褒めてくださるなんて。と言いながら。
人を何だと思っている?
何かやってもらったらお礼を言うぞ?
五徳でも仁義の次に礼が来る。
かなり大切なものだから恩を受ければ礼を返す。
当たり前のことじゃないか。
「クランマスター、ローレントさんってイメージと少し違います」
「クランマスター、掲示板に書かれている内容と若干違います」
「え? あ、うん。ローレントさんは元々気のいい人だよ。僕らの出会いも元々野良パーティだしね?」
「それは本当ですか? 基本孤高の戦闘狂じゃないんですか?」
「野良パーティ? まさか、そんな、そんなことってあるんですね?」
「本人いるからやめようね? 責任取らされるの僕なんだからさ?」
ブラウのクランメンバーが口々にそう言っていた。
教育がなってないな。
別に野良パーティでも楽しければいいと思ってるんだが、現状レベルについてこれるのが第一生産組のみんなとか、仲のいいフレンドだけなんだよ……。
お仕置きだな、喰らえ悪運の瞳。
「ほら! そう言うこと言っちゃだめだよ! 俺らは第一生産組の看板しょってるクランなんだから! 礼節は保たないと!」
「は、はい。申し訳ありません!」
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
「ロ、ローレントさん、クランメンバーが怖がってるからこっち見ながら目を緑に光らせるのやめてもらえないかな?」
ペコペコするブラウ。
その様子を見ながらエアリルが呆れ声で呟いた。
「あんたたちホント馬鹿ばっかりねー」
「……そんなことより、増えてる」
エアリルの隣にいたアルジャーノが、スタスタとこちらによって来ると、丁度俺の後ろで待機していたルビーを撫でた。
草原の覇者だった癖して、ルビーは気持ち良さそうにアルジャーノの愛撫を受け入れた。
そしてローヴォも羨ましがって自ら撫でられに行き、アルジャーノの周りがもふもふに包まれた。
バッドラックウルフにクリムゾンコニー。
ご大層な種族説明とか書かれていたようだが、それでいいのか?
「おいおい、コンシリはついに奴までも味方につけやがったのか」
ついにコンシリエーレを略してコンシリとしか言わなくなったトンスキオーネ。
「私も気になりますね。そのモンスターは一体?」
ニシトモも会話に参加し、みんなの興味は俄然このクリムゾンコニーへと向いているようだ。
「うふふ、アルジャーノさん私にもモフらせてください」
「……どうぞ」
おすすわけのように片耳を渡すアルジャーノ。
ルビーはまんざらでもない様子。
そこへずっとウズウズしていたワルドとベスタが耐えきれなくなって混ざった。
あっという間に俺の契約モンスターは囲まれてしまう。
そうなると、ノーチェが寂しがると思ったのだが……。
ノーチェを連れていくと毎回宿屋の小僧が「うへへ」と言葉を漏らしながら撫でているからいいや。
「で、どうなんです? そのモンスターは?」
「秘密だ」
このモンスターの凄さは、戦闘が始まればわかるだろう。
「……困りました。作戦が立てれません」
「クカカ、俺がバラしてやるよ」
「む?」
「クリムゾンコニーはテージシティの周りを巡回するモンスターだ。この街の連中は手を出してはいけないモンスターだって言ってるぜ。赤色の覇者を怒らせるなってな」
「結局、どういう戦力として使えるんですか?」
「それは俺もしらねぇ。まず、フィールドに出ないからな! クカカ、おっぱじまってからのお楽しみだ」
トンスキオーネは葉巻を吹かし、贅肉を揺らし、大きく笑い声をあげた。
結局ニシトモの思ったような答えにはならなかったようで、彼は軽くため息をつく。
「揃いも揃って困ったものですね」
でもまあ、本当に戦いになればすごさがわかるというものだ。
ルビーと契約を結ぶことによって俺もさらに自由な軌道範囲を得たわけだし。
ペンファルシオの縄張りに、攻め込むのが楽しみである。
「では、ひとまずマップをご覧ください。今回の作戦の立案は、トンスキオーネさんの話を伺いながら私の方で担当させていただきましたーー」
できることなら更新ペースは落とさずに頑張りたい。
踏ん張りどころ。
あと、予約投稿に切り替え始めていますので、感想レスポンス遅くなりそうです。
全て読ませていただいてます。
誤字修正なかなか出来ずに申し訳ないです。
でも本当にありがとうございます!




