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 レイラが皆を引き連れてやって来た。


「お~い! って何それデカッ!? 桟橋の主ってやつ?」


「またバーベキューですか? デカッ!」


「私は初めて見ましたけど! フィッシャーガーもデカいですね!」


 レイラに続いてサイゼとミオン。

 フィッシャーガーは半分くらい千切られて放逐されている様だった。

 悔しいが、もっと大きな獲物を捕らえたので気分は上々。

 いつのまにか新しく竃が組まれ、バーベキューが始まりそうだった。

 食材、魚か蛙しか持って無いんだけど?


「ふむ……でかいである」


「あ、ガストンさんども」


「大剣は無事だが、レイピアは」


「申し訳ない」


「預かるのである。それにしても、見事に大破しているであるな」


 桟橋を見ながらガストンが言う。

 一応仮組というか、所々を着手の為に補強されていた物だったのだ。


「いや、この際一から崩れてくれた方がマシさ」


 残っていた桟橋の木片を回収しながらミツバシが答える。


「それもそうね」


 レイラも川を眺めながら同意していた。

 とりあえずバケツに水汲んで捌いたカエルの身を晒しとく。


「うわっぐろ!」


 そしてついでに川の水で洗いながらピラルークとフィッシャーガーを捌く。

 下手に他の人がドロップ扱いすると、取れる部位が限られてくる。

 漁師スキルで素材まるまる生かした方が良い、なんだかんだ大食らいが多いからな。


「見たいです!」


「あ、私も私も!」


「どうぞ」


 鎧魚って言われてたし、どうやって捌いたら良いのかぶっちゃけわからん。

 鱗の隙間からレイピア入れて圧し曲げられたくらいだからな。

 適当な板の上に乗せて鱗の隙間からナイフをガリガリと入れて行く。

 これ、鰐捌くときとかこんな感じかな。


「ブースト!」


「相変わらずだけど、魚捌くのに身体強化使うってどうなの?」


 恒例のぼやきは無視して。

 近くで見ていたガストンさんがある物を手渡して来た。


「思い出したのである。頼まれていた物と、これはいつものお礼である」



【黒鉄の双手棍】製作者:ガストン

全て黒鉄で作られたヌンチャク。

鎖の部分まで黒鉄で作られておりかなり強固。

それに伴って普通のヌンチャクより遥かに重たい。

殴打武器補正がつく。

・攻撃20

・耐久Lv3

・耐久100/100



【黒包丁】製作者:ガストン

黒鉄で作られた包丁。

とりわけ堅い肉質を降ろす際に使うもの。

・攻撃10

・耐久Lv3

・耐久100/100



「おお、これ。いいんですか?」


「これからもご贔屓にということである」


 こんなの貰ってしまっては、他の鍛冶師を使えないではないか。

 着々と外堀を埋められて行く俺だった。

 ヌンチャクは即行アイテムボックスへ。

 包丁は今使わせてもらおう。


「そうだ、ちょっとレイピア一度返してもらっていいですか?」


「ん? わかったである」


 ピラルークを横向きにして、眼孔を通して地面に縫い付ける。

 刺したレイピアはそのまま地面に打ち付けて杭代わりに。

 どうせ修理してもらうし、と思って周りを見たら皆引いていた。


「うなぎ捌くみたいです」


「ですです!」


 サイゼとミアンだけがテンション上がっていた。

 フィッシャーガーは長さはあるが太さがそこまである訳じゃないのでそのままヒレ落としてガリガリ皮をむいて行ったが、甲冑魚と書かれているピラルークは流石に身から削ぎ落とす感覚で行かないとダメだろう。


 まず背中の包丁を入れる部分の鱗を取って行く。

 ガッシガッシ包丁の裏を叩き付けるようにすれば問題ない。


「や、野生的ね」


「野蛮であるな」


「よ、野生児! 島育ち!」


 トモガラは黙れ。


「一枚革で揃えれたら、この堅さは役に立つと思うんですが」


「うむ、すでに服飾裁縫よりも鍛冶屋の領分である気がする」


 ガストンがそう言うので出来るだけ傷つけないように皮を剥がして行く。

 背中、腹、尾、頭の鱗を予め剥がしておいて、皮を捲りながら隙間に包丁を入れて行く。


「わぁ! 桜色ですね?」


「サイゼちゃん、刺身醤油の開発を急がなきゃ! 私は調味料スキル先にあげちゃうね?」


 少々時間をかけて皮を剥がし終えた。

 いつのまにか見物が増えてる。

 見せ物じゃねーぞ!


 兜を落とすのは流石に中骨が太すぎて断念。

 食べれる部分だけ身から切り分けることに。

 皮さえ剥がせは後は簡単だった。

 柔らかいがしっかりしている肉質は綺麗な桜色をしていて。

 臭みも全くない。

 フィッシャーガーと違って頭が大きくないので一枚の切り身が二メートル程になる。

 皮素材もほぼほぼ二メートルの物が二枚になった。


 残ったのは骨と兜と内臓のみ。

 一応腹膜破って大量の内臓アラはブリアンに欲しいと言われたので取っておく。

 バケツ四杯分でした。

 本当は水気多いし、すぐ腐るしであんまり使えないんだな。

 農家スキルに肥料系のスキルがあるんだってね。


 イシマルの持ってきた荷車に乗せておく。

 そして振り返ったら既にバーベキューが始まっていた。

 知らない人も多く来ていた。



[生産スキルポイントを1ポイント獲得しました]



 そしていつのまにか生産スキルポイントが1ポイント上昇している。

 ピラルークうめぇ。


「ローレントさん、解体スキルって振ってます?」


 サイゼが話しかけて来た。

 答えは当然ノー。


「プレイヤースキルですか……、可能なんですね……」


「まぁ最初からわかってたけど、コイツを普通の物差しで測っても無駄よ」


 途中でレイラが割って入ってくる。

 素材の清算はニシトモに任せて、自分は更に盛られたピラルークの切り身を試食中だった。


「なかなかよねぇ、ここじゃまだ肉ばっかりしかないから」


「パンも、こっちの伝手で少しだけNPCからわけてもらってますけど、これもいつまで続くか……」


「う〜ん、やっぱり食べ物のバリエーションって必要だと思うわね」


 それは同意である。

 俺は三食肉ばっかり食べてもあまり飽きないが、流石に一週間となると話は変わってくる。

 そう言う意味で二次産業の前にくる一次産業の担い手と言う物は大事になってきている。


「ってかそこから生産活動始めろって言うのが、ここの運営のやり方なのかしら! 確かにプレイヤー間の取引推奨してたけど! NPCから無駄に搾取すんなってことだとは思わないわよ!」


「まぁまぁレイラさん」


「VRゲー最大手RIO社のリアルダイブ型VRMMORPG、……おろそしい。セカンドライフに改名しなさいよ!」


「ちょっとレイラさん、ログ残ってますから。そう言うのはあんまり……」


「放してサイゼ! もう飛び込む! 川に身投げしてやる〜〜!」


 錯乱するレイラ。

 まだフィッシャーガー駆除し終わってないというと大人しく引き下がったのだった。

 だが、桟橋の周りにたむろっていたフィッシャーガーの魚影は見えなくなっている。

 フィールドに来た時にはかなり跋扈していたモンスターだったんだが、桟橋の主を倒した結果なんだろうか。


「それにしてもエリアクエスト解放ねぇ……」


「だとしたら再びここに桟橋を作って良いんでしょうかね? またあの大きなお魚さんがわくんですか?」


「北の森の羆みたいに? どうかしらね、でも話を聞く限り討伐者のみエリアクエストは受諾可能みたいだから、湧くんじゃないかしら、……だとしたらどうやって出現するかよね?」


 レイラがこっちを見る。

 そりゃあもう、フィッシャーガー十匹以上日陰にロープで結んでました。

 桟橋の影ね。

 まさかそこがキーポイントだったなんて知る由もない。


「なら壊れた桟橋はそのままにして、少し離れた場所に……」


「——必要ない」


 声のした方向を見る。

 スティーブンとその後ろに一人の爺さんが。


「あら、エドワルドさん」


「おや、レイラさん。珍しい」


 普通の町人の恰好よりもどことなく高級そうな服装だった。

 鑑定したらわかるのかな。



【エドワルド】NPC:???

職業:町長



 何っ!

 貴方が町長ですか!


「私が、……町長です」


「あと薬師と錬金術師も兼ねてるわね。私の師匠といったら正しいのかしら?」


「わしはスティーブンじゃ。そこの似非魔法使いの師匠じゃて」


「ぷぷ、似非魔法使いって」


 一応スキル構成っていうか、その辺りの事情を知っているレイラが笑っていた。

 そしてエドワルドが口を開く。


「ありがとうございます。私の祖父の時代から、発生してしまった川の魔物には手をやいていました」


 どういうことだ?

 困惑しているとスティーブンから解説が入る。


「世界の声が聞こえたじゃろ?」


「長らく魔物に脅かされていた東のフィールドも、これならすぐ解放されそうです」


 彼等が言うには、エリアクエストというものはそのエリアの解放に関するクエストなのだそうだ。

 よくある様なRPGで、東の川に巣くう危険な魚の魔物を討伐することでエリアクエストを進めることが出来るらしい。

 で、もう一度この場所にボスが出て来るのかというと、そうではなく。

 中ボスみたいな扱いで、誰かがこれをクリアしエリアクエストが解放されると、誰でもチャレンジできるようになるとのこと。


「桟橋の開放をして頂いた四人には、この町から僅かですがお礼をしたいと思います」


 一応初期討伐ボーナスのような物はあるらしい。

 謝礼金と……、


「レイラさんから聞いておりますよ。最近の情勢はやっかみ事が非情に多いもので、この町には漁師はおりませんが、プレイヤーの方々には何人か漁師の方々がいらっしゃるみたいですから……」


「そ、それってまさか?」


 エドワルドの言葉にレイラが息を呑む。

 その、まさかの様だった。


「第二の町から事情は窺っています。もはや東の川は私らに取って重荷でしかありませんでした。それにレイラさん方ならばより良くしてくれると思いますので」


 得てして、東の川の壊れかけた桟橋は、そのとき討伐に携わっていた俺、トモガラ、イシマル、ミツバシの名前が刻まれた石盤を贈呈された。


 プレイヤーが寝泊まりできるホームの様な機能を持った石盤だった。

 簡単に言えば魔物がポップせず、そしてプレイヤーキラーが出来なくなる。

 そこに住む人の人数によって規模はある程度増して行くと言う優れもの。

 スティーブンが言うには、遠征隊と言う物はこの石盤の簡易版を持って中継地点を設け遠方への討伐任務に向かったりするんだとか。


 維持には通貨。

 拡張には魔石が必要だった。



【ホームモニュメント(ヴィレッジ)】管理者:レイラ

人が住みやすい環境を整える不思議な石盤。

規模によってモニュメントの名称も変わって行く。

[インスタント→ヴィレッジ→タウン→シティ→メトロポリス→ステイト→キングダム→インペリアル]

維持には定めた通貨を定期的に払うこと。

魔石、または魔結晶などで機能の拡張が可能。


概要[壊れた桟橋の主]

テンバータウンより東の川にある、壊れた桟橋は、長らく魔物の影響により人の手を加えることの出来ない荒れ地と化していた。そこへローレント、トモガラ、イシマル、ミツバシの四名がその壊れた桟橋の主ピラルークを討伐し解放した。

なお、この碑石よりエリアクエストである[東の川の異変]を受諾可能。



 え?

 なんで管理者が俺らじゃないのかって?

 全員めんどくさがってレイラに投げた。

 だって面倒くさいんだもん!


「まぁ、どうせ貴方達はめんどくさがると思っていたわよ。そしてエドワルドさんの下で地味にゲットしておいた村長スキルが今役に立つのね!」


 そして村長を持っているのはレイラだけだった。

 生産職チームの表情からしても、いつも話のまとめ役になっていたレイラで大丈夫といった感じ。


「レイラさんが村長なら! ミアン! 私達やっとお店が持てるんですか!?」


「きゃー! サイゼちゃん! 意外と早かったね屋台生活の終わり!」


「税金取るわよ?」


「「ぎゃーーー! 顔が腹黒いっ!!!」」


「そろそろ独り立ちであるか、親方に挨拶をせねば」


「何言ってんの、すぐ隣に第一の町があるじゃないの。いいガストン? 一応皆のホームとして使って行くけども、後続のプレイヤー陣が利用できる様な場所にしなきゃ意味ないのよ?」


 流石レイラ。

 いつもぼやいておりながらちゃんと後のことも考えている。

 エリアクエストは、攻略域を拡大するための重要なクエストだ。

 北の森の羆を倒すと先に進めるように、エリアクエストをクリアすると、きっとその先に進めるようになるはずだ。


 今回のように、廃れた重要な場所を切り開き。

 拠点を築き、攻略して行く。

 この一連の流れが出来てしまえば、自ずと悪かったバランスも元に戻って行くはずだ。


 ……ソロプレイしようとしてた俺が馬鹿みたいじゃないか。

 スキル構成的に仕方ないんだけど。

 ナイーブな妄想はしないでおく。

 さて、NPCも交えて色々交流会が出来つつあるようだ。

 いい流れだと思う。

 今日も夜の狩りは辞めておこうかな。





ーーー

プレイヤーネーム:ローレント

職業:無属性魔法使いLv13

信用度:80

残存スキルポイント:0

生産スキルポイント:3


◇スキルツリー

【スラッシュ】※変化無し

【スティング】※変化無し

【ブースト(最適化・黒帯)】※変化無し

【エナジーボール】※変化無し

【メディテーション・ナート】※変化無し

【エンチャント・ナート】※変化無し

【アポート】※変化無し

【投擲】※変化無し

【掴み】※変化無し

【調教】※変化無し

【鑑定】※変化無し


◇生産スキルツリー

【漁師】※変化無し

【採取】※変化無し

【工作】※変化無し

【解体】※変化無し


◇装備アイテム

武器

【大剣・羆刀】

【鋭い黒鉄のレイピア】※修理中

【魔樫の六尺棒】

【黒鉄の双手棍】

装備

【革レザーシャツ】

【革レザーパンツ】

【河津の漁師合羽】

【軽兎フロッギーローブ】

【黒帯】

称号

【とある魔法使いの弟子】


◇テイムモンスター

テイムネーム:ローヴォ

【リトルグレイウルフ】灰色狼(幼体):Lv8

人なつこい犬種の狼の子供。

魔物にしては珍しく、人と同じ物を食べ、同じ様な生活を営む。

群れというより社会に溶け込む能力を持っている。狩りが得意。

[噛みつき]

[引っ掻き]

[追跡]

[誘導]

[夜目]

[嗅覚]

※躾けるには【調教】スキルが必要。

ーーー


解体の模様については色々と参考にさせてもらってます。

このスキルの仕様からいきますと、主人公は絶対猟師にはならないでしょう。

オークやゴブリンの解体なんかしたくないですから。

でも必ずしも、生産職の解体が素材を余す事無く使用できる事に使えるってなだけで、普通に光の粒子にしてドロップとして集める事は出来ます。

でも勿体無いんで。


ホームモニュメントの最上位をエンペラー、エンパイヤで悩んだ結果。

インペリアルになりました。

そう、陣取りゲーム要素ですなぁ。



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