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さてナイトタイムだ。カチコミだ。
……の前にだね。
やるべき事をやっておくのだ。
テージシティに来たからにはやることがある。
それは、クリムゾンコニーと契約を行うこと。
できなかったら討伐でもいいけど。
あの風格、テージシティの周りにある草原マップでは群を抜いて強いと見た。
実入りは良さそうだ。
今までの俺ならば、そのままノーチェに跨ってフィールドを目指していただろう。
だが今回は事前に下調べを行うために冒険者ギルドに出向いた。
手続きがめんどいのと、大量狩りの後の取引で資金はかなり潤っていたからクエストを受けてお金を稼ぐなんてやらなかったわけだ。
「1クエストにつき1ポイントの信用度がもらえますよ。ちりつもです」
十六夜から聞いた新情報だった。
むしろ彼女的にはまだ知らなかったんかという視線を感じたのだが……。
冒険者ギルドに足を運んだのなんか、信用度の重要性が出る前の話。
知ってるわけないです。
本当にありがとうございました。
「ランクが上がることによって、発生する指名依頼などは報酬もよく、何より信用度のボーナスがつきます」
「マジかよ」
あぶく銭で購入した信用度なんか、いつ崩壊するかわからない。
かつ、俺は称号で減ることはないがすっごく上がりづらくなっている。
スティーブンに再び没収されてしまえば、身も蓋もない。
「どこで登録できる?」
「え、まだ登録してなかったんですか?」
登録してなかったんですよ。
ええ、本当に。
「一応初期登録は一律最低ランクから、信用度によって上がれるランクも変わって来ますので気をつけてください」
そんな訳で、テージシティの冒険者ギルドで初めてのギルド登録を済ませることに。
クエストはマスドッグ三十体の討伐とか、馬のたてがみを集めてこいとかそんなもんだった。
信用度は140ある。
信用度が100あればランクCへと到れるっぽいので、受付の人にランクを上げれる依頼を訪ねてみた。
「ランクCに上がるには、行商クエストでの実績が必要になります。最低でも五往復はしていただかないと……」
ガッデム!!
初期のランクがFだとして、行商NPCについていってお金がもらえる依頼はランクDからである。
ニシトモの行商に何回付き合ったと思ってるんだよ。
今は行商に行ってる暇なんかないし、なんとも世知辛いものだった。
ちなみにクランを持つにはクランリーダーがランクC帯以上に居なければならないらしい。
「とりあえずテージシティのフィールド依頼をすべて受けます」
「いいんですか? でも、そうですね腕は立つみたいですし、信用度も問題ないみたいなので……気をつけて行ってらっしゃいませ」
受付のお姉さんの笑顔に見送られながら、併設されるカフェでカフェラテを嗜む十六夜と合流した。
ちなみに夜通しでずっとログインしている俺と十六夜である。
多くのプレイヤーは来るべきナイトタイムに向けて仮眠を取っている中。
俺は一刻も早くランクを上げたいもんね!
ログアウトなんかしねぇよ!
「寝ていいよ」
「ふあ……あ、いえ大丈夫です……すぴぃ」
意識が混濁して来ているじゃないか。
修行が足りないな、この辺に置いて行けば勝手にログアウトして寝るだろう。
俺は速攻でノーチェに跨ると駆け出した。
「ああ~、待ってください~!」
「ぐんないっ!」
寝ぼけ出した十六夜の目は、闇が薄れている様でまともな美人の様に思えた。
眠気で少し抜けている美人みたいなものだな。
常時そんな感じだったら、もっと印象は良かったのに……。
【グレイトクロウラー】Lv15
草原を徘徊する巨大な芋虫。クラス3。
岩に擬態して糸で魔物を絡めとり触手で捕食する。
フィールドはこいつがいるマップだ。
とりあえずカチコミ前に毒の補給と行くのだ。
倒し方をミスると糸が手に入らない。
上手くやれば毒糸を生成するモンスターであるのだが、今回は糸も欲しいところだった。
まあマップ内にはまだまだ沢山いる。
前のマップあたりから既にプレイヤーのパーティが馬や犬狩りを行なっていたところを見ると。
そろそろこのマップも人が流入してきそうな雰囲気があった。
今だけだな、精一杯狩り尽くそう。
【ライトステップホース】Lv15
草原を走る野生の軽馬。クラス3。
ステップホースのクラスチェンジ。
【ミドルステップホース】Lv16
草原を走る野生の馬。クラス3。
ステップホースのクラスチェンジ。
【ヘビーステップホース】Lv20
草原を走る野生の重馬。クラス3。
ステップホースのクラスチェンジ。
並行して馬も狩って行く。
ヘビーステップホースの突進に一瞬ひやっとしたが、グレイトクロウラーと衝突して漁夫の利を得た。
衝突とともにHPを削られたクロウラーに全員で持てるスキルをすべて使う。
そしてうまい具合に糸を回収することもできた。
【丈夫な糸】素材
グレイトクロウラーの吐き出す糸。
蜘蛛糸と比べて取れる量が多い。
圧倒的な量である。
そして丈夫なのだ。
漁師は網に大量の糸を使う。
そう、投網は消耗品。
ミツバシとマルタに頼んで作ってもらっていた網代はバカにならない。
しかも比較的最初に取れる蜘蛛糸は、裁縫スキルを持つものも使う。
なんと、染めてインナーに転用しおしゃれ化することができるのだって。
需要が高まった結果、蜘蛛糸不足に陥る。
そんな気がする。
どっちにしろ自分の生産物は自分で素材集めすることに越したことはない。
さて、遠距離から駆け抜けつつエナジーブラストとマナバースト。
そして斬撃属性を付与させるマジッククロウの上位スキルマジックエッジを使って行く。
馬肉も申し分ないし、今夜は桜鍋だ。
みんながログアウトしたのは、テージシティでいつも泊まっているあの宿屋。
コーサーとアンジェリックによって実のところ魔改造されている隠れた名店。
その宴会場でみんなで馬肉を食べて英気を養おう。
久々の狩り回でした。
次回も狩り回というか中ボス戦のような感じです。
契約魔法が使われることでしょう。




