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十六夜がアイテムボックスからコロコロと出したのは魔銀と思しき何かである。
「これは!? どこでこれを発見したんですか!?」
オルトウィルがすぐに飛びついた。
十六夜の髪の毛が逆立つ。
「すすすすいませんこれはテージティで拾ったものなので私が断じて奪ったものでは」
「……っ……」
ニシトモが笑い声を堪えているのがわかる。
十六夜ってニシトモにも魔銀の件で連絡してたよな。
だから知っているはずなのだが、こいつ面白がって黙ってだな!?
「っていうかニシトモさんには連絡してるはずです!!」
「ええまあ、はい」
「はいじゃないが! めっちゃ言い出しにくい空気だったじゃないですか!?」
「ええ、この野郎知ってやがったの? カルビ追加三人前」
トンスキオーネはそろそろ食うのやめろよ。
話がややこしくなってきてるから、真面目にしてほしい。
「なんにせよ、男爵様が単身乗り込みそうな勢いだったので物理的に遠ざけたかったんですよ」
「……セバスはどうする? 見放したわけじゃないだろ? 他に手は打ってあるんだよな?」
オルトウィルの顔が、固まって居た。
唐突なネタバレの応酬によって、プルプルと小刻みに震えながら固まって居た。
「コーサーさんと共に、ベスタとワルドが向かっていますよ」
「へえ、あのコーサーが」
「アンジェリックさんに命令されて泣く泣くって感じでしたけどもね。そうです、あとアンジェリックさんがノークタウンで私兵を用意していただいてるみたいです。その前に追っ手が早くてギリギリだったのは確かですが、既にては打ってあります」
さすがニシトモ。
戦う行商人は違うな。
「私が、どれだけ心配したと……」
腰を抜かしたようにへなへなと壁にもたれかかったオルトウィル。
そんな彼にニシトモは言い放つ。
「心配するしない置いといて。男爵様、貴方は一度殺されたようなものです。マフィアの力が大きい都市みたいですが、さすがに私怨に呑まれすぎではないですか?」
「……セバスにもそれは言われていたよ。本当にバカなことをしたと、今改めて実感する。申し訳ない」
立つ瀬がないと反省するオルトウィルだった。
潰し潰されでは、禍根の鎖は二度と壊れない。
意思を継ぐものにどんどん受け継がれているようなものだ。
断つ時は根元まで、根こそぎ断つ。
中途半端なやり方をしてしまったことはオルトウィルも理解はしているだろう。
なんだかんだテージシティを収める男爵家の当主であるしな。
そんな時、ニシトモからメッセージが来た。
『これ、一応私のクエストイベントらしいので、おさわがせしました。ちなみにクエスト名は“私怨を持つ貴族の暴走”です。色々とクエストアイテムも揃ったことですし、戦闘はお任せしますね。なんとかグッドエンドの高評価で終わらせたいところです』
とのこと。
よくできてるゲームだこと。
クエスト詳細なんて俺見たことないんだよな。
なんか面倒くさくてね。
『報酬は弾んでくれ』
とだけメッセージを返しておけば十分だろう。
ニシトモなら全てを理解してくれるはずだ。
「ってか一言あれば助けるぞ?」
「私も私なりにゲームの世界を楽しみたいのですよ。あと一緒にテージシティに行ったはずなのに裏社会の話を教えてくれなかったから意地悪しただけですから」
「ああそう」
「取引先は大事にしていただかないと」
「十分だと思うけどな」
「うふふふ、二人ってとっても仲がよろしいのですね?? うふふふふ」
俺とニシトモはそんな十六夜の言葉に二人してしかめっ面になった。
さて、トンスキオーネが豚トロに舌鼓を打っている中で話は進められる。
「ペンファルシオの情報を教えろ」
「今食べてるだろ」
「…………教えろ」
「ちっ、仕方ねぇな」
ペンファルシオは、トンスキオーネファミリーとにたような形だ。
あまり重火器を持って居ないが、馬と練度の高い私兵を持っているらしい。
どちらにしろ、トンスキオーネに毛が生えたファミリーなので大したことがないのだと。
「では作戦は簡単です。真っ向勝負でローレントさんに先行していただき、頭を挿げ替えてもらう。いかがですか?」
「な!?」
なかなかいい作戦だと思った。
だがオルトウィルが驚いて苦言を呈して居た。
「そんなお粗末な……」
「馬鹿いってんじゃねぇよ、こいつは一人で暴れさせとけばいいんだよもう」
トンスキオーネも十分と理解してくれているようで何より。
俺はお前がいつからそんな食べ盛りの豚になっちまったのか驚いてるけどな。
「トンスキオーネを壊滅に追い込んだのなら、ペンファルシオも……」
「いいえ、ペンファルシオの頭にはコーサーをすげて、トンスキオーネさんと私で商売は続けて行くつもりです」
「なっ!? ニシトモさん何を言っているんですか!? 街から暴力を撤廃しなくては!!」
「男爵様はその体裁でいてくれて構いません。私も本心を言えば暴力反対です。ですが私が目指すのは一方的に潰してしまうのではなく、お互いが融和を図って折り合いをつけることです」
そうだ、ニシトモの意見には大賛成だ。
禍根を根絶やしにすることができない場合は、こうするしかない。
どうせ悪なんて潰えることはない。
光があるところには影があり闇が巣食う。
だったら闇は闇でこっちで統治してしまえばいい。
と、いうのがニシトモ意見だ。
「な、なぜそんなことを……」
「裏も表も関係ありません、全てと上手く取引してこそ商人ですから」
その言葉で締めくくり、要人オルトウィルをやきにくトウセンに残してそれぞれ戦いの場へを移動した。
二更新責めが明日も続きそうな予感。
小話。
餃子、ローストビーフ、エビチリ、焼きなす、レアステーキ、ハンバーグを食べました。
美味しかったです。
ん食べ過ぎぃ




