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途中に出てくる敵はローヴォと十六夜に任せて、ノーチェを駆けながら考える。
魔銀で関わってる人って誰だっけ。
確かオルトウィル・レジテーラという男爵家だったかな。
テージシティを治めている貴族だ。
ミスリル、または魔銀、魔法銀とよばれる素材を貴族の伝手を使って仕入れてくれる約束をして居た。
まさかとは言わんが、これがそうなのか?
「あ、ローレント様! コーサーが」
「急いでるから今度な」
「このお馬二人乗りなんです」
ノークタウンへ入ると、なぜか入口のところで待ち構えているアンジェリックが居た。
相手にすると面倒なので、今回は早々にノーチェを使ってスルーすることに。
十六夜がよくわからないことを言ったが、普通に戦闘用の馬は一人乗りだ。
そしてそのままノークとテージシティをつなぐ道へと抜けていく。
出てくるモンスターが多少は強くなる。
デイタイムのデンジャーシープではなく、ナイトゴートというヤギのモンスターだった。
鋭利な角を持っていて、突撃を仕掛けてくるがノーチェには届かない。
「見当はずれなところを攻撃してますけど、なんですか?」
「ノーチェのスキルに残像がある」
さすが幻影馬。
雑魚の攻撃は届きすらしないのだよ。
隙だらけの状況でローヴォが首元に食らいついて、十六夜が急所に矢を打ち込みあっさり倒れる。
ドロップはなんだ?
【夜山羊の角】素材
なかなか鋭く、硬い天然素材。
残念、肉ではなかった。
山羊の肉は臭い、硬い、筋っぽいと言われている。
だが、実際食べるとそんなことはない。
山羊の飼育環境が悪いせいで美味く無いだけで。
食用飼育される物であれば羊と変わらない。
「私が解体しますか?」
「いや、時間がかかるだろそれ」
猟師を持っている十六夜ならば、生産解体によって肉にありつけるのだろう。
だけどそこまでして食べたいってほどでも無い。
テージシティに行けば馬肉が好きなだけ食べれる。
狩りもそこそこに、ノンストップで道を駆け続けていると夜の闇に何かがうごめいているのが見えた。
猟師である十六夜にははっきりと見えているようで、とっくに弓を構えていた。
「夜盗ですね」
ノーチェの速度を落として接近してみると俺にも姿が確認できるようになった。
まだ割と遠い位置にあるが、何か準備をしているようだった。
「数はわかる?」
「ブルーノを上空に飛ばして確認させます」
さすが十六夜、役割をしっかりわかっている。
幻影馬とバットラックウルフなら夜闇に紛れることができる。
十六夜は暗い色のローブを深く被って金髪を隠す。
俺の装備は迷彩柄だが、ノーチェに乗っているから問題ないだろう。
「マップをみるとテージシティの割と近くになりますが、夜襲の準備ですか?」
「それにしては数が少なすぎる」
テージ並みの規模の都市を夜襲するならば、もう少し人数がいる。
とりあえず一人ずつ鑑定識別が可能な位置まで移動しよう。
「降りますか?」
「降りた方が隠蔽率が下がる」
幻影馬に乗った状態で動く。
ノーチェにもそう指示を出し、大きく道を迂回しながら近づいていく。
他のモンスターが気になるが、夜盗が多くて出現しなくなって居た。
また、何かのイベントなのだろうか。
近くに当たって、見張りに立たされている夜盗がいる。
どうやって処理しようか考えていると、十六夜の矢が目と喉に計三本刺さって無力化する。
倒れる間際に少し大きくなったブルーノが頭を鷲掴みしてこっちに運んでくる。
【ブルーノ】マナオウルLv1
・四大属性
属性四つも使えるのこいつ。
めっちゃ強くなってない?
「うふふ、つい昨日クラスチェンジを迎えてくれたのです」
魔法がこれだけ使えるとなると、戦闘要員としてかなりいいポジションにつけれるよな。
夜の空を飛べて、羽音は一切なく、魔法を打てる。
かなり強い部類に入るだろまじで。
俺は特殊能力を目当てにクラスチェンジをやってきたからなあ。
戦闘員は自分で事足りていると言うのが一つあるが。
「フクロウ系とウルフ系はテイムとしては人気です。ノークとテンバーで手に入り、索敵能力が高いので」
「へえ」
「馬は値段が張ります、そしてそれ以外は特殊な状況でないとテイムできません」
「珍しいテイムモンスターもいるのか?」
「そうですね……二体持ってるローレントさんが既に珍しい部類なのですが、ツクヨイさんのパンダやアンジェリックさんの大蛇はかなり珍しいんじゃないですか?」
あの二人か……。
「他にはスターブグリズリーをなんとかテイムしようとしている人がいたり、ゴブリンとオークをテイムできないか検証している人がいるそうです」
「そっか、世も末だな」
「ローレントさんなら一発ですね、契約魔法もありますし、私を契約しますか?」
「は?」
「なんでもありません、とりあえず敵の数は大体五十程です」
五十人?
なんとなく見に覚えのある数字である。
そうだ、あのシークレットエリアに巣食っていた盗賊団の数と同じだ。
まさにジャストタイミングで、馬に乗って指揮をとる男が現れた。
【ドン・ラバード】Lv45
名前持ちの盗賊団の首領。
小規模盗賊の手下を纏める頭取の上。
懐かしのドン・ラバードである。
トンスキオーネに引きこもりの小物と言われたあの、ドン・ラバードである。
レベルは上がっていないと言うことは、あの野郎サボってたな。
NPCでもレベル上がるはずなんだけど、このゲーム。
初期に色々手合わせとか手伝ってもらったマルスがそうだ。
ああ、マルスくん今頃どこで何をしてるんだろうな。
だいぶ前に遠くへ行ってしまったみたいだが……。
「おら! 逃すな! きやがったぜ!!!」
『おおおーー!!!』
ドン・ラバードの声によって夜盗たちが大いに沸き立った。
一体何が、と思っていると。
夜盗たちをかき分けて武器を身につけた集団が中央から切り込んでいた。
「一気に駆け抜けますよ!」
「まったく、雑魚どもが群がりやがって。誰に集められたんだかな!」
ニシトモとトンスキオーネ?
一体そんなところで何をやっているんだ?
あとがきは後日です。




