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 戦いはすぐ終わった。

 始まった瞬間、男の両目に十六夜の矢が突き刺さった。


 ラッキーパンチすらないシケた決闘だった故に人の引きも早かった。

 やっぱりそうだよな。という声が多く聞こえて来た。


 何がワンチャン期待だ。

 全掛け設定だからインナー姿になった十六夜を見たかった男達がいるのだろう。


「ローレントさん」


「ん?」


「何かしました?」


「……してない。ほら、飯食べようぜ」


「ならいいです。信じてますから、うふふ」


「……う、ん」


 実はローヴォと一緒に十六夜に不幸補正かけていた。

 俺が強くなるスキルではなく、敵が弱くなる。

 そんなバッドなスキルな訳で、バレずに面白い勝負になるかと思ってやった。


 実際、実力差がありすぎて意味なかったけど。

 反省はしているが後悔はしていない。


「はむはむ、運動の後は美味しいですね」


「あれで運動か」


 一瞬で弓を持ち、矢をつがえ、射つ。

 スキルを使用していない十六夜のプレイヤースキルは、なかなか惚れ惚れとする物だった。

 芸術のように無駄のない動き。

 俺は無駄が多いからなあ。

 とかいいつつ、別に見習わないけどね。


「ああ、この白身魚もまた」


「おい」


「んっふ、いきなり声かけないでください。喉につまりかけました」


「魔銀」


「ああ、そうですね。とりあえずこちらです」


 金髪美人が一転してジャンガリアンハムスターになっている。

 そんなハムスターがアイテムボックスから取り出したのが、小さな銀色の物体。

 これが魔銀だというのか。


「私もテージシティへ向かえるようになりまして、適当にクエストをこなしていたら発生した緊急クエストなんです」


「緊急クエスト?」


「ええ、他所では落し物クエストと言われています」


 彼女の話によると、緊急という割にはそこまで切迫したクエストではないという。

 フリーNPCの落し物を届けてあげるやら、フリーが何かしらのトラブルに遭遇し、それを解決することで報酬もしくは信用度を稼げることができるという気まぐれシステムだった。


 ここで一つ、今の話を聞いて思ったこと。

 NPCをおっちょこちょい仕様にするとは、何を考えている。

 運送屋に運んでもらってる俺の荷物があぶねえ。

 保険かけといてよかった、マジで。


「気が抜けないゲームだな」


「まあ、遭遇したら幸運ってことで」


 十六夜はテージシティの道端でこの銀の物体を拾ったという。

 幸運なやつだな。


「そんなことよりこれは魔銀なのか違うのか」


「わかりませんが、クエストインフォメーションに【?銀の???落し物※緊急クエスト】と書かれているので、魔銀について調べてる方々に連絡を取っていたんです」


 そして俺のところへ巡り巡って連絡をよこしたということだった。

 大方まずはガストンの元へ向かったんだろう。

 ガストンはかなりの案件を抱えた売れっ子鍛冶屋。

 たくさんの弟子を持ち、鍛治師の先駆者として後陣を率いている。


「ガストンさんは忙しくてまだ魔銀について詳しく踏み込めていないみたいでした」


「手が離せないのか」


 そりゃそうだよな、だから情報を持って俺のところへ来たという具合か。


「ガストンさんからは、今は誰も扱えないだろうとのことでした。とにかく、クエストを進めていけば何かしら深い情報が得られるとは思うので、とにかくローレントさんにお知らせした次第です」


「ニシトモには?」


「一応メッセージを送ったんですが、ローレントさんが全て理解してるとのことで」


 あのニシトモに丸投げされただと?

 何か怒らせるようなことはしただろうか……。

 記憶に無いのでサイクロプスの素材を格安で少しあげよう。


「では、……行きましょう?」


「あ、うん」


 十六夜は軽い調子で跳躍するとノーチェに跨ると胴を撫でる。

 ノーチェも十六夜を乗せたことを覚えているようで、気持ち良さそうに息を吐いていた。


「テージシティに何かあるんですよね?」


「まあ、そうなるよな。持ち主はわからないのか?」


「なんの情報もありませんでした」


 とにかくテージシティに向かえば何かがわかる。

 ニシトモは答えを知ってそうな予感ではあるが……。


 十六夜を乗せて第一拠点を出る。

 ナイトタイムに出てくるラクーンとキャットはシカトする。

 そのまま森に入ると、ローヴォを恐れて誰も近寄ってこなかった。

 まさに狼の王といったところ。


「待てや!」


「ん?」


「……また貴方ですか」


 森の入り口へ向かう時、あのチンピラ男が後ろから叫んでいた。

 ノーチェを止めて姿を見やる。

 インナー姿で息も絶え絶えといったところ。

 よく追いつけたな。


「俺の装備を返しやがれ!!!」


「そんなものすぐに店売りしましたからありません」


「な!? このアマ!!!」


 十六夜は全賭けにてすべて転がったチンピラのアイテムをすべて回収し、即売却した。

 二束三文にもならないアイテムばかりだったが、転がってると迷惑だと律儀に回収して売った。

 丁寧にひどいと思った。

 一番人を傷つけるやつだ。


「しらねぇぞ……てめぇら」


 プルプル震えながらチンピラが言った。


「もう怒ったからnーーほげぇ!!?」


「あ」


 そういえば今回は行商クエストに同行した訳では無い。

 あくまで十六夜と正規のルートを走っている状況。

 目を血走らせた懐かしきスターブグリズリーがこちらに駆けて来て、俺らを迂回してチンピラに襲い掛かった。


「ほわぁっ!? た、助けてくれ!!」


「……あの、ローレントさんと目があったら迂回しましたよねこのクマさん」


「たまたまだろ」


 実を言うと、蹂躙者の称号にレベル差によって敵から避けられると言う効果がある。

 正直、雑魚でも養分だと思ってる俺からすれば、少し残念だ。

 多対一の時にサポートが得られるのはかなりいいんだがな。


「ああああーーーー!!!」


 抵抗むなしく本日死に戻り二回目を経験した男を見送って、俺たちは先を進んだ。

 一応出て来てくれたスターブグリズリーに失礼なので、ローヴォをけしかける。


「ッ! ボッフ!」


 慌てたように鼻息を漏らして一目散に森の茂みに逃げていった。

 昔はあんなに強そうに見えたスターブグリズリーさんはもういなかった。





ローレントが押されている。

この物語のヒロインたちは癖が強い仕様です。



十六夜はそれはそれは美しい金髪美形女の子です。

そして瞳の闇が深いです。

最初はツクヨイと双璧をなすブラックな奴にしようとしていましたが、少し違う形になりました。

ツクヨイは裏が一切ない厨二で、十六夜は裏のアクが強い莫迦。

ちんちくりん貧乳と、スタイルばっちり美乳。


その中に参戦するブリアンはぼんきゅっぼんではなく。

ドンドンドンの三段活用(?)




あとがき小話(飛ばして結構)

自宅近くで最強にうまい焼肉屋に出会ってしまいました。

第一拠点に連なるお店などで詳細をかけていませんので、奴を焼肉屋転向させて出します。

奴とは誰か?

本作に出てきてすぐに消えた料理プレイヤーです。

覚えていますかね?笑

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