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三更新の二回目
テンバータウンに戻って正式に解散した。
ホームモニュメントは俺が預かることになった。
開拓マップで一番広いマップを持っていたからだった。
開拓マップとは?
訪れたことのある地域を指す地図のことである。
後はレベルで解放されたエリアを示していたりする。
オークのシークレットエリアは、レベルによって解放されていた可能性が出た。
テンバータウンの南の森なんか隈なく調べていたはずだもんな。
可能性はかなり高いと言えよう。
ちなみに十六夜の魔銀のことを三下さんに伝えて見たところ。
眠いめんどくさいの二言で片付けられてしまった。
結局のところ仮眠を取って再びログインという形になった。
ログイン通知でバレているのだろうか。
速攻十六夜からメッセージが入っていた。
『よく眠れました? 今ノークタウンに居ますのですぐに向かいますね』
なんて返そうか迷っているうちに、追伸が届く。
『サイゼミアンさんの方を予約して居ますので冒険前に少しゆったりしましょう』
まあ、ノーチェを回収したらすぐに向かうつもりだったので向かうことにする。
いつだか、テイムクリスタルについて話を耳にしたが、頼みの綱だったツクヨイはログインして居ないようだったのでメッセージだけ返信しておく。
結局先日メッセージを確認した時、十六夜のメッセージ確認に手間取って返せて居なかったし。
「ブルルルッ」
久々な気がするノーチェを撫でてやる。
鼻を鳴らしながら顔を寄せてくるノーチェの装備を取り外していく。
[契約モンスター:ノーチェがクラスチェンジレベルに到達しました。クラスチェンジ先を指定してください]
そう、クラスチェンジの時期に突入していたのだ。
契約魔法の経験値配分により何もしなくてもレベルアップ。
素晴らしい効果だと思うが、もう少し戦闘経験を積ませないとこれからの戦闘に耐えきれるか心配なところだ。
経験を積まなくても年は取る。
時間は平等であるというのに、その内容の濃さは人によりけり。
その差という物は容易に埋めることは叶わない。
よってコーサーにもトンスキオーネに言って経験を積ませようと思っているのだがなあ。
何故かアンジェリックが気に入って登用し、トンスキオーネは個人で動くことになっている。
それが現状だ。
まあ、トンスキオーネレベルなら俺の人脈を上手く使って何かしらの利益をあげて居そうだ。
懐刀なのか、それとも俺の心臓を突き刺す刃になるのかは定かではない。
奴のことだ……楽しみしておこう。
[ナイトメア:Lv25のクラスチェンジ先は以下の通りです]
【クラスチェンジ先】
・幻影馬
【マイナーチェンジ先】
・ダークホース
・シャイヤー
選択肢は一つだけ。
十六夜を待たせるとめんどくさくなりそうなのでさっさとクラスチェンジを済ませてしまう。
ちなみに幻影馬とはどんなものなのだろうか。
【幻影馬】
その姿はまさに幻、見た人の心のあるがままを映し出すと言われる。
幻影による残像を作り出すので攻撃を当てるのは至難の技。
その名の通り幻の馬と言われている。
[契約モンスター:ノーチェがナイトメアから幻影馬にクラスチェンジしました]
【ノーチェ】幻影馬:Lv1
特殊能力:残像
装備:無し
特殊能力は残像。
なかなか先頭向きの特殊能力じゃないだろうか?
ところで、現時点で特殊能力が種族名を冠するものではないようだ。
順当にレベルアップして行くと幻影に変化するのだろうな。
期待しておくことにする。
「……」
「ワォン」
「……ブルルッ」
大きさはあまり変わらない。
正直装備を作り直す手間が省けた。
黙って居たので喋らないタイプの馬なのかと思ったが、ローヴォが声をかけると返して居た。
仲よさそうで何より。
装備をつけ終えると跨ってプレイヤーの第一拠点へと向かった。
そして中央にあるサイゼミアンへと足を運ぶ。
「デートですか? うふふ、予約頂いてますよ! こちらです」
「え、違うけど」
今回はミアンが笑いながら通してくれた。
奥の席、いつもの場所にはすでに十六夜がいた。
色白で金髪、まさにエルフとかネタにされている十六夜は窓際の席が良く似合う。
そして俺には死地が良く似合う。
さて、こ気味なジョークもかましたところで十六夜が気づいて笑顔を向けた。
「お待ちしてました。サイゼさんとミアンさんにはコースを準備して頂いております」
「え、今から?」
「ナイトタイムですしね」
ゲーム内の昼時間はログインしていなかったから、時刻はもう夕方を回って夜である。
十六夜の意向としては、ゆっくりご飯を食べながらお話ししましょうってことなのだろうか。
「いいだろう」
「ではミアンさん、料理の方をお願いします」
「はいかしこまりました〜! なんかシュールですね〜!」
景色は?
外にはプレイヤーが沢山いる。
視線がちょいちょい集まってくるのがうっとおしい。
狩りに行きたい。
ノーチェの戦闘経験を蓄積させたい。
だが、せっかく用意してくれた飯を厳かにはできない。
あと……。
「………………うふふ」
なんというか……怖い。
この俺にここまでプレッシャーを与えた存在はこの娘っ子ただ一人。
そんなことを思わせるほど、ニコッとした表情で座っている。
これで少し強引なところがなかったらいいんだけどな。
何考えてるかわからない友達の筆頭のようなもんだ。
「魔銀の……」
「まあまあ、料理が来てからでいいじゃないです?」
腹を括って飯を待つことにした。
とりあえず十六夜の顔でも眺めて見ていることに。
綺麗な顔の造形してるくせに、本当に目は深い黒色だよな。
そして数分、ついに待ちわびていた前菜が登場した。
「なんかすごい雰囲気ですね、うぷぷ。さあ、お待たせしましたよ! 白身魚のカルパッチョでーー」
「てめぇこらおい!! てめぇがローレントっていうクソ野郎かおい!?」
ミアンが持っていた前菜が後ろから彼女を押しのけてやって来た男にぶちまけられた。
前回の文章について少しわかりづらい点がありました。
最後のメッセージの送り主は十六夜です。
ツクヨイはぶらっくぷれいやぁを自称する厨二だと覚えていただければ幸いです。




