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 みんなも怒涛の勢いでレベルが上がっていたようだ。

 サイクロプスのドロップを確認していくのだが、思ったよりしょぼかった。


「手負いだったか、もしくはちゃんと狩れってことじゃねェの?」


 そんなもんなのだろうか。

 正直、巨大な魔石を期待していた。

 ……期待はずれったらない。


「分厚い皮だけだっただよ?」


 全員揃って外皮だけだったようだ。

 まあ、実際悪くないドロップではあるのだが……。

 もっとこう、他にあるだろう。

 そんな香りを匂わせる物であった。


「……帰ろうぜ」


 経験値的にはかなり実入りは良かった。

 これで誰もレベルアップしなかったら怒りの狩りを取り仕切らねばならない所。

 気づけば夜が明けている。

 ナイトタイムももう終わりか。


 山籠りに来たはずが……。

 プレイヤーキラーが来て、ブリアンが来て。

 ゴリラがたくさんいて、怪獣大戦争が起こって。

 かなり内容が濃い狩りとなって、意外と満足している。


 ただドロップがな。

 魔石くれよ、魔石。

 とはいえ、こんなところでうだうだ言っても始まらない。

 帰りの道中にスキルを試してみることになった。


 新しいスキルを取得できたのは俺と三下さんのみ。

 三下さんは何故か秘匿として、教えてくれなかった。


 さて、帰り道の低ランク帯のモンスターならば……。


「エナジーブラスト」


「ケキャアア!?」


「焦げてるぜ?」


 MPの消費が激しいスキルであるが、攻撃力はかなりのもの。

 ファイトモンキーが一瞬で溶けた。

 さらに、このエナジーブラストの利点として、敵に当たっても貫いて後ろの敵にダメージを与える点。

 かなり評価できるところである。


 弱点特攻が効果的な手合いならば、MPを大量消費してしまうこのスキルは使う必要はない。

 対多数の場合、戦い方なんかいくらでもある。

 だが、集団戦で個人の動きが取りづらい場合に、正面突破で一掃がし易いこのスキルはかなり有効と言えるだろう。


「マナバースト」


「うおー、敵が飛んでいくだべよ?」


 ローヴォのおかげで確率補正が加わる俺には、関係なかった。

 エナジーブラストは確実に火傷のバットステータスを発生させ、マナバーストは確実に敵を吹き飛ばす。

 バットラックウルフという訳で、自分の確率上昇というより、相手の確率ダウンというか相対的に確率アップにつながっている。

 そんなところだろうと予測がつく。


「三下さんのも教えてよ」


「ハッ! テメェと再び戦う時に教えてやるよ」


 俺の意向としては、今から戦いたい。

 でも戦ってくれないだろうなあ、絶対。


 俺はある程度手の内は晒していくタイプだ。

 というより、しょぼい手の内を晒しておくことによって、他の技術が生きる。

 虚実と呼ばれる技術である。


 攻撃の手数にフェイントを加えることだと認識している人が多いと思うが……。

 実のところは私生活全てにおいて、戦う相手と認識した手合いにはある程度の嘘をついておく。

 こんなことがまかり通ってしまう世界なので、用心深くあるべきなのだ。


「ローレントさ、改めてお礼をいわせてもらうだ」


「ん?」


 なんのことかと思った。

 どうやら農具を送ったことに対してだった。

 こちとら信用度をもらってる訳で、対等な取引をしているので、お礼を言われると少しこそばゆい。


「農業プレイヤーが足りないだ。こないだのレイドボスさ倒しだだべ? あん時に貰っだ農地の開墾が中々進まないだべよ」


「ああ、あそこか。結局どういう開発になるんだ?」


「俺は知らん」


 レイラからはメッセージがいくつか届いていた。

 だが、全く読んでいなかった。

 三下さんとブリアンが喋っている隙にメッセージをチェックしていく。


 うわぁ、ツクヨイ、レイラ、トモガラ、十八豪からメッセージが来ている。

 そして恐ろしいことに十六夜からは三十通ほど届いていた。

 ブロックしようか迷ったが、その内容に一つ興味深いことが書かれていた。


『ひょんなクエストで魔銀を手に入れることができたんですが、今晩どうですか』


 句読点から先の文がすごく怪しげであるが、来た時間はつい三十分ほど前なので返しておこう。

 一度仮眠を取ったらログインする、とね。

 三秒で返信が来た。こえーよ!


「はァ……」


「どうしただ?」


「いやァ、街に戻ったらめんどくせぇ奴らがいるんだよなァ」


 プレイヤーキラーのことだな。

 三下さんは狩りやすいと思われているのか、かなり狙われていると聞いている。


 正直羨ましい。

 ちょっと本気を出しすぎたことを反省するべきだな。

 もう少し手を抜いて頑張れば倒せるかもって思わせとけばよかった?

 いや……それだと癪にさわるしなあ。


「そうだローレント」


「ん?」


「隠し拠点をつくらねェ?」


「どういうこと?」


 そんな三下さんはアイテムボックスからとあるアイテムを出現させる。




【ホームモニュメント(ヴィレッジ)】管理者:なし

人が住みやすい環境を整える不思議な石盤。

規模によってモニュメントの名称も変わって行く。

[インスタント→ヴィレッジ→タウン→シティ→メトロポリス→ステイト→キングダム→インペリアル]

維持には定めた通貨を定期的に払うこと。

魔石、または魔結晶などで機能の拡張が可能。




 アイテムを見た瞬間一瞬で理解できた。


「さすがに中継地点がないのはキツイだろ」


「俺はキャンプでも楽しい」


「テメェみたいに四六時中ログインできねェよ!!!」


「眠いだよ……」


「寝てろ! いきなり入ってくんじゃねェ!」


 現在、山から森に下り適当にひらけた場所でブリアンの作った料理を食べている。

 俺の料理が不味いことに気づいた三下さんがブリアンに任せた。

 ムカデとか貴重なタンパク質だろ!

 俺も好んで食べないが、食べるものが取れなかったら致し方あるまいに。


 と、拗ねたら。

 食べ物持ってるからいいんだよとドヤされた。


 ……確かに。

 三下さんの言い分はよく分かる。

 ちなみに米を使った料理をブリアンは作ってくれました。

 かなり美味しかったです。


「野菜スープに米さぶち込んだだけだっぺよ?」


「万倍うめェから心配すんな」


「んだんだ、三下さは狙われてるんだべ? なしてだ?」


「んなもん俺が聞きてェよ」


 なんだか話が飛び飛びになって来たので軌道修正をする。

 ブリアンは寝ぼけ始めて主旨がよくわかっていなそうなのでこの際置いておく。


「毎回フィールドワークすんのが怠ィのもある」


「俺は本来なら霊峰の岩場の小山で転移ができるけどな」


「それがズルいんだよ、俺はもう誰を師事してる訳でもねェからよ、自分でなんでもこなす必要がある」


 スティーブンの部屋に入れれば、転移でひとっ飛びできる。

 だがその条件は俺の許可が必要であるということ。

 現在、お叱りを受け中の俺にその権限はないんだけどな、悲しい話である。


「でだ。テメェとこにそんなもんがあるなら、いずれ使えるようになるだろテメェ」


「むむむ、そうなればいいが」


「まあ、先行投資ってやつだ。闘技大会の健闘賞で貰ったこのホームモニュメントがあればどこかに拠点を形成できる。そして現時点でテメェなら転移用のポートを作れる可能性が高いってことだ」


「そうなのか」


「候補としてはあと一人、テメェの妹弟子が上がってんぜ。錬金術師を囲って街同士のワープポートを復活させようって話も掲示板であがってやがる」


 知らなかった。

 もう掲示板は見ないからな。


 三下さんはぐーたら寝っ転がるブリアンを蹴り起こすと、ブリアンお手製の野菜雑炊をすすりながら言った。


「第一陣は二分勢力かそれ以外は大体散ってるからよくわかんねェけど。第二陣の連中が第三陣をまとめて何かしら起こそうって躍起になってんぜ。まあテメェの人脈にはかなわねェだろうけどな」


「ツクヨイってそんなに需要あるの?」


「はあ? 知らねェのか? 現時点の錬金術トッププレイヤーはあいつだ。師匠NPCのエドワルドとスティーブンの愛弟子だって、テンバータウンのいろんなNPCが高評価をつけてやがる」


「え、俺は?」


「ひとかけらも名前出てなかったぜ。ああ……一個あったわ。なんかペナルティ食らって破門されかけたやつがいるって。あれテメェ?」


 ……なんということでしょう。

 ツクヨイには媚を売っておこう。

 よし、やること済ませたら是非とも彼女とともに王都へ行こう。

 そうだ、王都へ行こう!


『起きたらメッセージくださいね』


 いきなり十六夜から追撃メッセージが来た。

 ひっ。





ひっ。






あとがき小話(飛ばして結構です)


エナジーブラストとエナジービームで迷ってたんですけど。

エナジーブラストの方が書いててかっこいいのでそっちにしました。

他にいい言葉が見つかれば差し替えるかもしれません。


魔闘家スキルは、あくまで道場をクリアしたスキルの亜種という形になっています。

なので、魔法剣士スキルがあくまで正統になります。

剣士よりの魔法使いなのか、魔法使いよりの剣士なのか、それで道場で取れるスキルは変わります。

もっとも、取れる人なんかそうそういない状況でもありますね。


生産職と戦闘職が完全に分かれたゲームってなかなかないですよね。

バランスよく器用に熟すとか結構あついプレイスタイルだったりしますけど。

レベル上がったら生産も戦闘も全部こなせるようになってクソかって思うことがあります。

その辺を反映させて戦闘も生産も単一でスキル取得している人にはバランスタイプは全く追いつけない。

そういう仕様、もしくはたくさんスキルをとると鬼のように育成時間がかかる仕様にしています。


ローレントが漁師まったくしなくなったのは、戦闘に振れ幅が増して来ているからですね。

最初は開拓をしなければ、という意味で漁師でもやってみっか〜。

という理由で初めていたものの、ソロじゃなくなって人脈ができてくると、戦闘を専門にこなす人がいるだけで、生産への供給が成り立つようになります。

相互関係はどちらから生まれているのかと言われれば、もともとの装備なんか店員NPCから売られているので、狩りして素材集めてありきの生産になります。

後陣に人が続々と増えていく状況、自分が率先してやることなんか少なくなってくる。と思うので、さらっと漁師設定をあやふやにしてました。

でも海賊との戦闘とか海のナワバリ争いは書くつもりなので、漁師やっててよかったーとか。

このお魚美味しいよねーとかそういう話を盛り込むつもりです。


そして大量狩りが板についてから、ローレントは生産解体という素材を余すことなく使う技術を使わなくなりました。ローヴォの幸運補正でただでさえドロップが多い状況、本人も面倒臭いのです。

主人公の設定てんこ盛りのこの物語ですから、ローレントだったら魔物の解体すらお手の物な気がしますね。




=======

活動報告にコメントくださった方ありがとうございます。

地味に返信させていただいてますよ。

エイプリールフールなんか全く気付きませんでした。

ツイッターで大量に書籍化しましたが流れて。

え、この時期めっちゃ流れてるやん!?

ってビクついてましたよ。




あ、今日は三回更新です。

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