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怪獣大戦争勃発中。
いかにして、この怪獣達を倒すか考えていた。
今の段階で、グレイトコングの速さを相手にするのは無理だ。
だとすれば比較的のろまなサイクロプスが狙い目となる。
どっちにしろ固い防皮に守られていて、切り崩すとすれば弱点特攻。
誰でも考えつきそうな攻略法だが、問題はどう実行するか。
超高所から、頭部に石柱の雨を降らせるのは?
グレイトコングの猛攻を簡単に防いでいたサイクロプスに通用するかは未確定要素だ。
それより、警戒されずにどうやって空を舞う。
いかんせん、こちらのダメージが通らなければ無意味となるよな。
だいたいレイドクラスの相手を前にして三人。
最悪一人と一匹で相手すること自体間違っているかもしれんのだが……。
それでも挑みたい。
それが漢の性なのです。
今がチャンスだ、逃亡を図るサイクロプスはイベントなのか知らんが、孤立している。
他の取り巻きモンスターはさっさと自分のエリアを守りに行ったようだ。
なんたる好都合か!
急げ急げ、とりあえずローヴォを先行させて追い立ててやろう。
「ローヴォ!」
「ウォン!!」
猟犬としての役目は散々教え込んで来た。
さあ、不幸を振りまいてこい。
「ゴアアア!!!!」
さすがに嚙み付けないので巨木の棍棒を避けながらアキレス腱を爪で切り裂いていた。
ローヴォの爪でもわずかに傷が入るのみ。
なかなかに堅牢な皮膚を持っているようだが、甘いな。
ローヴォにはアキレス腱を執拗に攻め立てさせる。
「さすがテメェのペットだぜ。やることがえげつねェ」
「そう褒めるな」
目論見通り、徐々にサイクロプスの逃げる速度が遅くなっていく。
着実にダメージは重なっているようだな。
HPバーを見ても全然減ってないように見えるが、こういう魔物相手にはまず機動性を削ぐ。
そして攻撃力を奪い、最後に防御力を消し去る。
「初手は突き刺す。一本銛を渡しておくから錐揉みの要領だ」
「ドリルだなァ? 俺もアキレス腱に穴開けてやるぜェ!」
「まかせるだよ!」
分厚い皮膚を削る作戦。
突きに回転を加えて無理やり穴を開けていく。
みんなで協力して右足を執拗に狙い続けると。
サイクロプスはついに呻き声を上げて片膝をついた。
「三下さんはブロッキングを優先してくれ。ブリアンは適当に見ててくれ」
「おーけェ」
「!?」
サイクロプスは逃げよりも先に足元に群がる俺たちを標的にする。
執拗に責めたおかげで怒りは十分に蓄積しているようだ。
体制を立て直すこともせず、必死の形相で巨木の棍棒を振り回している。
そしてそれを三下さんが完璧に弾き返す。
「レベル差がありすぎて針に糸を通すレベルのブロッキングポイントだァ」
「問題あるか?」
「ねェよ!! おらァ!!」
「お、おらにもなにができるごとねえだが!?」
「ブリアンはローヴォともう片方の足を狙ってもらえる?」
「んだ!」
防御は三下さんに任せて、今一番切れ味のある悪鬼ノ刀を穴を開けた箇所に大きく突き刺す。
突っ込んだ感触だが、明らかに象より分厚い皮膚だった。
中には脂肪がありドロドロとしている。
打撃の衝撃を和らげて分散させる構造のようだ。
「ゴ、ゴ、ゴガアア!!!」
明らかに異質の武器を突っ込まれてサイクロプスが焦っている。
悪鬼ノ刀の効力が発動しているみたいだ。
そして、それぞれが穿った穴をザクザク切っていく。
かなり抵抗されるだろうと踏んでいたのだが、三下さんのブロッキングが流石すぎる。
「ゆっくりでも構わねェよ。もう見切ったし」
反動でサイクロプスの動きを強制しているようだった。
バッドラックウルフの不幸補正と悪鬼ノ刀の邪気。
半ば呪いの塊を執拗に受けているおかげで三下さんのブロッキングがやりやすくなったようだ。
点と点を結んで線になる。
線と線を結べば面になる。
「はい、ぺらっと」
「うげ!!!」
「どうしただよー!?」
「女子供は来るんじゃねェ!! 見せもんじゃねェぞォ!!」
皮を剥がす。
アイテムボックスに速攻素材として入れておく。
さて、むき出しになったアキレス腱が目の前に。
どうします?
完全に切断しましょう。
「……やる?」
「やんねーよ! ってかテメェが凶悪すぎて抵抗激しくなってんの!」
「どすこーい!!!」
何をやっているブリアン?
さて、さっさと終わらせよう。
バツン。
あっさり断ち切った。
「ゴギャアアアアア!!!!!!!」
悶絶の咆吼が上がる。
人間でも死ぬほど痛いもんな、アキレス腱断裂。
むしろ、あれだけ踵を穴だらけにして痛がってないのがおかしいのだが……。
サイクロプスさんでもアキレス腱を断ち切られればさすがに痛かったようだ。
「聞いちゃいられねェ! さっさと仕留めるぞ!」
「足がもう一本残ってる!」
「だァ!! ちくしょうこのヤロー!!」
ってことで、ブリアンとローヴォに合流する。
二人で仲良くやっていた。
「ゴギャアアアアア!!!! ゴギャァ、グゴゴゴ!!!」
声がめっちゃ痛そうだ!
もう巨木の棍棒を振りかざすことなく、手を握りしめている。
拳を固めているくせに、反撃ではなく痛みをこらえるのに使うなんて。
無防備すぎるサイクロプスさん、失格。
「オリジナリティを考慮して、種さ植えでみただよ」
「いらねェよそんなもん。あいつが全部ぶった切っちまっただろォが……」
「ローレントさ……、もう右肩に登ってるだよ」
「レイドボス強襲イベントの時も思ったけどよォ、あいつこういう時異様にフットワーク軽いんだよなァ……」
そんなこと言ってないで一緒に戦ってほしいのだが……。
精神的に疲れたといって休む二人は放っておいて。
痛みでヒィヒィ言わしてるサイクロプスさんの肩に登って弾機銛を片手に腕を突っ込んだ。
そして起動させる。
ビィンッ。
バネから銛が射出される音と共に。
ボンッ!
ダンプカーのタイヤが破裂した時のような轟音が響いた。
「ゴギャヒィィィイイイイイイイ!!!!!」
あとがき小話(読み飛ばして結構です)。
ローレントが手負いの奴をやる時に手を抜くはずがない。
常に全力で狩る。
それがローレント。




