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 グレイトコングは動き出したサイクロプスの一撃をどうにかしのいでいる。

 それも時間の問題だ。

 見つめるレギオンコング一同の目は悲痛な面持ちとなった。


 決死の覚悟で雄叫びをあげて。

 サイクロプスの首元に飛びついたグレイトコング。

 そのまま首を絞め上げ、圧し折ろうとするが……。


「迂闊すぎるな」


 確かに体格と身体構造的に背中に手が回らないサイクロプスには有効だ。

 あくまで素手同士ならな。

 だが素手同士でもサイクロプスの体重に地面に押しつぶしてやれば一瞬で終わりそうなもんだ。

 ちなみにサイクロプスがどう動いたかというと。


「ちったァ頭は回るようだなあのデカブツ」


「当たり前だと思うけどな」


 持っていた棍棒で突っついて叩く。

 グレイトコングは呻き声をあげて倒れ伏した。

 そして足を掴まれたグレイトコングは、そのまま地面に叩きつけられる。

 何度も、何度も!


「棒で叩いた方がいいんじゃねェ?」


「うん」


 多分あれだ、イベントの演出的な感じだ。


「おらもあれ今後やっでみようがな?」


「そうなったらサイクロプス女と呼んでやるぜェ?」


 ブリアンの体格があるからこその技とも言えるな。

 あとトモガラとかもゲームの中だとあんな感じのゴリ押しが多かった記憶がある。

 遠心力でビタンビタンになるはずだが、コングのやつ。

 頭部を腕でガードし体を丸めていた。


「なかなかやるな」


「……もう何を褒めてるのかよくわかんねェよ……とりあえず説明しろやァ」


 単純に遠心力で体の端っこにある頭部へのダメージがやばいことになる。

 それをガードするには頭を覆って丸まって隠す手法がある。

 動物で表すとするならば亀だな。


 人は古来より投げるという技を多く使ってきた。

 何故か?

 物理法則に従って様々な力の補正がかかるからだ。

 そして安全圏からの必殺の攻撃や。

 相手を殺さないように拘束する投げ技。

 そう、まさに表裏一体と言える。


「はァ……」


「なんだかよくわがんねぇだ」


 呆れる二人を置いといて。

 ハラハラドキドキの怪獣大戦争はどうなったかというと。

 サイクロプス側がやや優勢になっていた。

 やはりトップが劣勢だとどうしてもこういう展開になるか。


 集団戦の攻として、先に敵将を打ち取る。

 古くからまかり通っている戦いの要綱が証明されているな。


「そろそろ終わっちまうのかァ?」


「ゴリラさんまけちまうだべや?」


「いや、死なない限り負けじゃない。それに……」


 気になることがあった。

 劣勢に立たされたレギオンコング達とグレイトコングは未だ諦めていない。

 正直言って三下さんとブリアンが言う通り。

 負け戦としての条件が整っているのだが……。


 うん、援軍が来ない限り。


 丁度そう思った時だった。

 月夜の闇が太陽のごとく照らされた。


「ゴアアアアア!!!」


 そしてボロボロになったグレイトコングが吠える。


「お、おい!」


「も、燃えるゴリラさんだべ!?」


 真っ赤な体毛を燃やすゴリラが姿を現した。

 まるで遅れてすまんと言うふうに、グレイトコングに「ゴフ」と一つ吠えると。

 丸太を振り上げて威嚇するサイクロプスに巨大な火球を吐いた。


「ぐっ……!」


「すげェ衝撃だぜ……!」


「おらが、二人とも吹っ飛ばされちまわねぇようにするだべ!」


 三下さんだけにしとけよ。

 俺は身長百八十あるんだから大丈夫なんだが。


 改めて身を乗り出して状況を確認すると。

 サイクロプス陣営にクレーターができていた。

 後ろに控えていた雑魚達がほとんど黒焦げになっている。

 そしてサイクロプスも身体中から煙を上げながら仁王立ちしていた。


「ゴガガッ」


 片膝をついた。

 かなりのダメージをもらっていそうだ。


 それよりもエンゴウ。

 レイドボス強襲イベントの時に戦った手合いだ。

 いやいや、火球にあんな威力なかった気がするんだがな……。


「イベントの時は弱体化されてたってことかァ?」


「かもしれん」


 スペシャルプレイヤー陣でタコ殴りにした時よりも。

 かなりの威力を持っていた。

 そして通常時はぐうたらで動きが鈍いのかと思っていたが……。


「ゴア!」


「ギギギ!」


 岩肌を巨体が軽々しく跳躍しサイクロプスの前に躍り出る。

 それくらい素早い動きをしていた。

 イベントの時は、やる気なかったんかエンゴウ!

 舐めやがって……いや最初から本気なら勝てなかっただろうけどさ。


「ゴアァ……」


 エンゴウは、太く長い尻尾でグレイトコングを抱き寄せていた。

 グレイトコングは安心したようにエンゴウの尻尾に抱きついて、自分の尻尾を絡ませる。


「つがいだったのか」


「……とんでもねェ山じゃねェか」


「あ、憧れるだぁ」


 ……ブリアン?

 今のは聞かなかったことにしておく。


 さて、本物のボス猿が姿を現したことで窮地に立たされてしまったサイクロプス。

 エンゴウの体はサイクロプスに迫る程でかい。

 そして素早い動きと体から溢れる業火を纏っている。


 勝てるわけがない。

 立っているのでやっとのサイクロプスは戦うことを諦めて敗走した。

 ここの縄張り争いはエンゴウ側の勝利みたいだな……。


 もしかして、エンゴウが不在だったのを狙って勝負を仕掛けてきていたのだろうか?

 弱体化されていても俺らでぶっ殺したわけだ。

 復活するまでのクールタイムでサイクロプスが仕掛けてきていた可能性がある。


「終わっちまったなァ……もう二度とこねェよこんなとこ」


「よし、行こう」


「ん? 帰るのか?」


 いや、エンゴウ達が勝利の雄叫びを上げて騒いでいる今がチャンスだ。


「敗走するサイクロプスを仕留める」


「ハァ!?」


 三下さんが驚いていた。


「んなもんできるわけねェだろ!」


「やってみないとわからない」


 でも、三下さんのブロッキングとカウンタースキルなら通用すると思うんだよな。


「勝手にやってろ!」


「じゃ、行ってくる」


 本人にやる気がないなら無理にやらせるつもりはない。

 ローヴォとともに斜面を駆け下りてサイクロプスを追っていると後ろから声が聞こえる。


「っあーもォ! めんどくせェな! 暇だからついてってやるよ!」


 三下さんならそう言うと思っていた。

 ブリアンも気合を入れてドスドス走って後を追ってきている。

 さあ、ジャイアントキリングだ!



ただいま戻りました。

レイドボスに主人公補正かかっています。


こういう演出もゲームには大事ですけど、ぶっちゃけこのゲーム、こういう演出を見れることはあんまりないですから。

そういうシステムですから、ローレントが来てなくても勝手にエンゴウが助けに来ていたかと思いますね。


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