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「軍猿の革集めだぜ」


「ぶっちゃけかなり良い素材ではある」


「そうだか? おらのオーバーオールもそれで作ってもらうっぺよ?」


 馬の革は軽いが少し耐久性に難がある気がする。

 もともとレザーの話で言えば、牛と馬は用途で分かれている。

 固く分厚い牛革は耐久性に優れる。

 柔軟性といい艶を持つ馬の革はファッションアイテムとかだっけ?


 それでは、猿革はいかがでしょう?

 あくまで主観だが、縫い目に無理がないというか。

 霊長類の革だから霊長類が着るとハマるというか。

 激しい動きを十分にカバーできるというか。


 すげぇいい。

 ただその一言に尽きる。

 現時点の装備としてはかなりいい部類に入るらしい。


「レイドボスの後だけんど、良い値で売れだってニシトモさ言ってただよ」


「聞いた話によればよォ、犀革ってのも重戦士装備用に開発されてるッて話だ」


 その話はガストンやらレイラから近状報告としてメッセージをもらっていたりする。

 レイドボスの強襲イベントを受けて、ある程度信用度を獲得したプレイヤーはクランを作れるようになった。


 クランは、ギルドとは違って完全に戦闘を行う傭兵集団のような立ち位置らしい。


 そこでそろそろプレイヤーズギルドを開けそうなガストン、レイラなど、第一拠点生産組が、信頼が置けるプレイヤーたちと共にある意味専属的な契約を結ぶだ結ばないだの話が進んでいるそうだ。


「戦士隊として活躍してた野郎達がお揃いの鎧を開発するッて騒いでたぜェ」


「ブラウさが、クランのリーダーを務めることになってるだでよ?」


 ブラウに話が行くのはもっともである。

 一番信頼性があって真面目にこなせそうなタイプだ。

 エアリルがケツを叩いて横道に逸れないようにしてるし。

 本人も楽しくやれればと快諾したのだろう。


「ローレントは作んねェのか?」


 サイクロックスの攻撃を跳ね返しながら、三下さんがそう言っていた。


「うーん、拘束されるのはちょっとな」


「自由なクランはどうだッぺよ? どっせいばあああ!」


 サイクロックスをくち木倒ししながら、ブリアンが話に混ざってくる。

 馬鹿力ヤバすぎる、さすが農家。

 だが、漁師も負けてないぞ。


「それならありかもな!」


 バランスを崩し、仲良く倒れる二体のサイクロックスの眼球に貫手を突っ込んでダブル・スペル・インパクトを放つ。


「でも誰でも気軽に参加できるのはダメだ」


 少しオーバーキルだったかな。

 眼球に貫手をつっこんだ時点で、脳を破壊させてクリティカルが入ってるように思えた。

 そして眼球と脳の中には魔石の大きいのがある。

 ドロップは上々と言ったところ。


「まあ好きなやつ集めればいいんじァね?」


「三下さんは強制参加だ」


「ああッ!?」


 当然のこと。


「まァ……面白そうだからいいけどよォ」


 三下さん優しすぎる。


「お、おらも入りたいだ!!」


「まてブリアン、まだ作ってないから、作ったらな?」


「約束だっぺよ!」


 ブリアンにはクランというよりギルドが似合ってそうなのでふわっとした話にしておく。

 プレイヤーキラー専門の集団とかもいいかもしれないな。

 多分好き放題やった結果、バックにマフィアとか商会とか色々あるカオスな展開が予測される。

 そうすれば血みどろの血生臭い集団になりかねないのであまり純粋な女性は入れたくないところでもあるのだ。


「ウォン!」


 そんなことを考えているとローヴォが吠えた。

 警戒に当たるようにという意思がある。

 三下さんもブリアンも鳴き声でそれを察したのか警戒態勢を作る。


 ゴガアアアア!!

 霊峰の岩山が崩れ去る音が響いた。


 一体なんだ!?

 月明かりに照らされた、少し開けた場所にて。

 とんでもない光景が目の前に繰り広げられていた。


「んだありァ? エンゴウじゃねェか?」


「おったまげたでねが! エンゴウが二体もおるだべよ!?」


「いや違う」


 すぐ鑑定してみたら似ているけど違う結果が出た。

 エンゴウなら燃えるように赤い毛並みを持っているはず。

 もう一つのデカイ影は、完全に二足歩行したもっと人間に近い体型をしている。

 手には巨体な丸太を持って睨み合いを続けている。




【グレイトコング】Lv???

・系譜最上位種

・イベント進行中???


【サイクロプス】Lv???

・系譜最上位種

・イベント進行中???




 姿形は似ていても、どうやら若干名前が違うのだ。

 だが、レイドボスと同じような気配を感じる。

 当然鑑定でもレベルが見えないということは、はるか格上だという証明だ。


「レイドボスじゃねェのな」


「うん」


 どうやら三下さんも鑑定を使っていたみたい。


「イベント進行中って、これ結構レアな状況じゃねェ?」


「ブリアン、しっかり伏せておいて」


「言われなくでも足が震えで立でないだよぉ」


 周りを鑑定で探ってみる。

 二つの陣営に分かれてコンバットエイプ、サイクロックスとまとまっているが、違うモンスターもいるようだった。




【レッサーサイクロプス】Lv10

魔人の系譜、クラス4。

本物のサイクロプスには数段劣るが、それでも人と比べればはるかに強大な力の持ち主。


【レギオンコング】Lv12

卓越した戦闘技術を兼ね備えた霊長類。クラス4。

ボス種以外の猿の中では最上位クラスに位置する。




 どんだけ猿が好きなの。

 ねぇ、教えてくれよ。

 ここだけ猿に支配された地域になっていた。

 そして、どうやらこの二種の間で縄張り争いが起こっているということだった。


「介入はさすがにしねェよな?」


「殺されて終わるだけだ」


 サイクロプスは、レッサーサイクロプスの集団を従えている。

 同じようにグレイトコングはレギオンコングの軍勢を従えている。

 数はややコング側の優勢であると見た。

 だが、個体値は圧倒的にサイクロプス側のが強そうだ。


「硬直してるのか?」


「いや、じゃっかんグレイトコングが押されている」


 雰囲気を察する限り、最近コンバットエイプとかレギオンコングがうちのサイクロックスとかレッサーサイクロプスにおいたしてるから、お礼参りに来てやったぜ。

 ってな具合に思える。


 レギオンコング達もいきり立っているが、ボスクラスが戦場に加わった時。

 果たして群れを背負って戦えるのだろうか……。


「……という迷いが見える」


「完全に妄想だろォが」


「いやでもグレイトコングもでかいけど、サイクロプスはふた回り大きい」


 自然界で、体格の違いというものは大きな問題だ。

 いくらコング側が技術を持っていたとしても。

 小手先の技で相手を翻弄したとしても。

 力でねじ伏せられたら一撃で盤上はひっくり返るのだ。


「どォすんだよ?」


「観戦する」


 貴重なイベントっぽいから、黙って見るのも一興だと思うのだ。

 酒とツマミがあれば最高なのに。


「怪獣大戦争だっぺ? ひゃぁ〜、とんでもないだべや〜」


「好きにしろよ……」


 ブリアンがお弁当あるっぺよと言って野菜とドレッシングを出してくれた。

 野菜スティックをシャクシャク食べながら、怪獣大戦争の見物と行こう。







バトルバトルしてなくてすいません。






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