-210-
ブリアンの戦い方はどうだ?
スコップの威力が強い。
確か、はるか昔の戦時中。
塹壕を掘るためのスコップが大活躍したんだよな。
生身の人間が鉄の塊をもろに受ければひとたまりもないだろう。
日本空手界に百余年巣喰う裏御紋会、“樋之上会長”の秘技金剛仁王や。
剛体法やら、金剛技法、空手の世界に及ぶ諸々の極意をもってしても。
脳を守ることは不可能なり。
で、あるならば、いかにして身を守る?
脅威を感じ、躱すしかないのだ。
恐怖を従え、五感の一つに加えるのだ。
振りかぶったブリアンのスコップはまさに恐怖。
ああ、バトルゴリラが……。
面白いように吹っ飛んでいく……。
スコップで土を掘って、まさかの土魔法。
農家って魔法戦士だった。
曰く、土魔法の先に植物魔法の派生があるらしい。
それをとってこその農家だという。
農作業は重労働、そのために身体能力強化スキルも欠かさずあげている。
魔法が使えて身体能力もやばい。
そしてなおかつ巨体。
まさに重戦車の名に相違ない戦いぶりだった。
三下さんが全てをはじき返しカウンターダメージを狙う装甲だとすれば。
俺は一体なんだろうな?
「ゴリラ多すぎィ! ゴリラの森かよ!」
正確に言えばゴリラの山だ。
相変わらず南の森の中央を山頂に向かって進めば猿マップが続く。
コンバットエイプ達はまだ湧かないのか。
あんまり楽しくないマップと言える。
「うっだらあああっぺえええ!!」
「どんな掛け声だ?」
「しらねェけど、ゴリラと素手でカチ合える奴なんてお前以外で始めて見たんですけどォ?」
ブリアンの上手投が決まった。
俺の身長百八十超えてるけど、ブリアンさらに大きいから。
どっちがゴリラだろう。
「まるで、飛騨の山奥にいる怪物猿のようだ」
「んだ、漫画の話かァ?」
なに?
怪物猿が漫画になっているんだって?
……まあかなりの伝承を築き上げた幻の存在だから。
絵巻にも載る、漫画にもなるだろうな。
「その反応、……リアルでいんのかよ」
「強かった」
「ああそう、もう驚かないからなァ!」
「ふんぬらば! ローレンドさ! 三下さ! わだすが守っでやっがらよお!」
すごく頼もしいと思った。
同時に、恐ろしかった。
「ッシャ! 山を抜けたぜ! 一体どんだけ遠いんだよォ!」
「ここからコンバットエイプが出る、ちなみに単体だともっと強い奴がいる」
「マジか、上等だぜェ?」
コンバットエイプの持ち味は、その戦闘技術と連携によるものが大きい。
一対一でもなかなかにこの霊峰の入り口にて強者であると思わせるが。
単体だとさらに厄介な手合いがいる。
「んだありャ? でけェよ!」
【サイクロックス】Lv18
一つ目の岩石巨人。クラス3。
粗野で凶暴な性格で悪食。
そう、一つ目の岩石巨人。
サイクロックスだな。
徒党を組んだコンバットエイプにボコボコにされているところは見たことあるが、単体だとコンバットエイプは歯が立たないようだ。
その証拠に、今回のサイクロックスはレベルも高め。
そして片手にコンバットエイプの死骸を持って咀嚼しながらフラフラとこちらに近寄ってきていた。
「グオオオオオオ!!!」
「見つかったぞォ、オイ!!」
「あ、あんな怪物さどうすっぺよ!? ローレンドさ!」
レベル的に言えば三下さんとブリアンはトントン。
俺とローヴォからすればまだサイクロックスは格下扱い。
それでも種族的に強い個体値を持っていそうなモンスターではあるがね、いかようにもできるだろう。
まあ、このインパクトが霊峰の洗礼とでも言っておこう。
「昔は負けたが今は負けんよ」
「冷静にレベル確認したら同じくらいだったわ、騙された気分だぜ」
さすが三下さん。
すぐに平静を取り戻していた。
「なんだかわからんが、イシマルさんとこさ持っていけば良い値段で売れそうだっぺよ? モンスターばいっぱい食べとるから、砕いて轢けばいい肥料になる気がしねぇだか?」
ブリアンも違う意味である意味平常運行だ。
一応相対攻撃力という部分でレベルが並べば即死は免れる。
それでも頭を踏み潰されたら一発なので注意が必要だ。
「重さが脅威かな」
スティーブンはテレポートで自重位置エネルギー攻撃をして潰してたが。
あの頃の俺は歯が立たなかった、そして足を折られた。
うわ、思い出しただけでムカついてきた。
これはやり返さなければ、気が晴れない。
そんな気がする。
「初手は任せろや、どんな質量でもそっくりそのまま返してやんよウラァッ!」
サイクロックスの踏み潰しに三下さんが小盾を振りかぶった。
ガギゴウンッ!!
という音がして、踏みつけようとした片足が大きく持ち上がる。
「ローヴォ!」
「グォン!」
そこそこ巨体になったローヴォが、軸足に体当たりをする。
完全にバランスを崩したサイクロックスはゆっくりとした動きで傾いていく。
坂道ならば容易に登れる。
ロッククライミングさながら、六尺棒を持って巨体を駆け上がっていく。
そして大きく反動をつけて、振りかぶり。
サイクロックスの弱点。
六尺棒を叩きつけ、眼孔の中でスペル・インパクトを発動させる。
「グゴガゲッ!!!」
轟音とともにサイクロックスの頭が爆発する。
即死攻撃になったっぽいな。
「ヒュー! やるじャねェか!」
「ローレンドさ、怪我は無いだか?」
「問題ない」
体は堅そうだが、目は意外と脆かった。
問題は目のある位置、高さだが……。
そんなものどうにでもなる。
さあ、楽しい楽しい霊峰キャンプの始まりだ。
適当補足(読み飛ばしても結構です)
出現する敵のレベル、わき数は、マップにいるプレイヤーの平均レベル、最低レベル、中間レベルの値によって変動します。
あまりにパーティメンバーのレベルの差が激しい場合は最低レベルもしくは中間レベルの適用。
討伐可能レベルの範疇であれば平均レベルの適用。
シークレットエリアに関して設定レベルもしくは平均レベルのみになります。(レベリングおっけー、でも死んだらペナルティも厳しいよってことです、例えばホブゴブリンは武器破壊してきますしね)
あとがき小話(これまた読み飛ばしても結構です)
地の文にてちょくちょくローレントのリアル話を取り入れているのですが。
こいつ、昔何かあったんだなってことでさらっと流すくらいでOKです。
そして、そういう輩がゲームに参戦してくる展開ももちろんありそうな予感がしますよ〜!




