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本日三回更新の三回目です。(白目)
「こうやって薪をたまに焼べて火の管理を行う」
「……ゲーム内で山火事なんか……起こりかねねェ」
パチパチと燃える焚き火を見ながら三下さんがそう呟いた。
レイドイベントでは山火事になった。
トモガラが怒らせたのが原因でもあるけど、その分の賠償は実費で支払ったらしい。
そういうペナルティがあるからこそ、迂闊なことはできないんだよなあ。
山火事になんかなってしまったら、どれだけの借金を背負ってしまうのか。
全くもって怖いゲームである。
ナイトタイムに入ってひと段落ついた俺たち二人は、焚き火から松明とカンテラに火を移した。
俺は軍服のベルトにカンテラをつけておく。
これで両手が自由になる。
「まァ、いけっか?」
三下さんは松明を振り回していた。
それでカウンターするつもりなのか?
できるのだろうか?
できるんだろうな……。
「おおおおおおんおおおおおおおんおおおおおおおおん!!!」
「「!?」」
夜の森、霊峰すぐ手前の山中。
何かの声がけたたましく響いた。
ローヴォが怪訝な表情をするが、悪意や敵意を感じ取ったという反応は見せない。
「ぉぉぉぉおおおおれんどざああああああああああ!!!」
「は?」
「お前、呼ばれてないかァ?」
声がどんどん近くなっていく。
そして、俺はあの女性?プレイヤーと強烈な再会を果たす。
「ろおおおおれんどさあああああああんんんん!!!」
巨体が! 巨大な女が!!
肩にゴリラ、足元にモンキーをくっつけながら怒涛の勢いで走ってきていた。
なんということでしょう。
……もしかして。
バトルゴリラとファイトモンキー達。
あまりの筋肉に噛み付いた牙が抜けなくなったのか?
「ンなわけねーだろ! ニブチン女が気付いてねぇだけだ! 痛覚ねェのかよ!?」
「んだ?」
俺と三下さんでそれぞれ噛み付いたモンスターを蹴散らしていく。
そんな様子にニブチン女と呼ばれたブリアンは「?」と疑問を浮かべていた。
「どうしたんだ、こんな時間に……」
自分の体にモンスターを巻きつけてな。
地味に、トレインっていうんじゃないの?
いや、わからないし実害なかったからいいけど。
「おい女、痛覚設定は?」
「んだ? そんなこといわれでもわかんねがよ?」
「ハァ〜……」
ため息をついた三下さん。
一応三下さんとブリアンは面識がある。
闘技大会後とか、レイドボスイベント後に開拓組やらスペシャルプレイヤー組やらの仲間入りを果たしたからだ。
三下さんはぶっきらぼうな口調を持ってはいるが、その中身はかなり優しい人だったりする。
ニブチン女と呼んでいるのも、彼なりの友好度を示す何かだろう。
「こまかいごたええんだええんだでや!」
「背中叩くなよ、オイ!」
と、いうよりもだ。
ブリアンを女性だと認識している三下さんはまだマシな部類だったりする。
「何しにきた」
「んだ、メッセージ読んだだよ? すっだらとんでもねぇこどさ書いてあるでねぇかだ?」
「何が書いてあッたんだ?」
「ローレンドさが! 畑用のえれぇ機械ば買って送ってくれただってさいうもんだがら!」
「ああ、その事か」
きっちり信用度100。
耳を揃えて払ってもらいましょうか!
って俺は何様のつもりだろうか。
「まだ届いてないんだろ?」
「おらぁローレンドさのこと十分信頼してるから今すぐ会って直接お礼さいいだぐでざ!」
最後の方、興奮しすぎて何言ってるかわかんなかった。
そう、こいつもアンジェリックの同じように。
特殊言語の担い手なのであった。
「もうよくわかんねェけど、スゲェもん買ってやったんだなローレント」
「五千万グロウくらいつかった」
「ハア!? んな金どッから出てくんだよ!?」
ちょっとしたあぶく銭だから気にする必要はない。
悪銭身につかずという言葉があるように。
ああ言った金は早めに処分して他の何かに変えたほうがいいのだ。
「ローレンどさ!? そげな高級な代物さくれてたんだべか!?」
こっちにも驚いている奴がいた。
だからこそ、信用度で支払ってくれればいいだけなのだよ。
「開拓が進めばマップが広がる、そしてお金が手にはいる。そしてブリアン、俺は信用度が欲しい」
「ウワァ、信用度のロンダリングでもやる気かよォ?」
「そんなつもりは毛頭ない」
「ローレンドさ、本当にそれでいいんだべか?」
「構わん」
「すっだら少なすぎておらぁ、この身を売っぱらう事しかできねっぺよぉ!」
思わず三下さんと噴いてしまった。
この身って、どの身だろうか。
その、あふれんばかりの巨体だろうか?
いやいやいや、まあ純粋なブリアンだからこそ。
精一杯農家頑張るって事だろう。
そうだ、もう一つ渡しておくものがあったな。
「種籾いるだろ? ちょっとこれ中心に育ててくれよ」
「「!?」」
米俵と種籾をアイテムボックスから出すと。
二人は大層驚いているようだった。
「こ、米でねか〜〜〜!!!」
「オイ、飯の時に出せよそれ」
サバイバルの基本は食料は山にあるものを使うだ。
もし稲穂が野生にあるんだったらそれを食せばいい。
それがルールだ。
「米は精一杯愛情込めて育てるだ! それよかローレンドさ、信用度は100でいいだか?」
「構わんよ、むしろいいのか?」
「いいだいいだ! ずっとNPCの人たちと畑ばっが見てっからさ! 信用度はレイラさの次くらいに溜まってるだよ!」
それは、かなり溜まっているという事か。
素晴らしいぞブリアン。
巨体についてる巨乳を揺らしながら、ブリアンはそばかすのある顔で笑っていた。
「えッと……? 五千万だから信用度1ポイントにつき五十万か」
「なんだそれ」
「いい商売ができそうだなァおい。とりあえずそれは他言無用にしとけよォ、厄介なことになりかねないから」
三下さんがいうならそれで納得しておこう。
ブリアンも、ゴクリと喉を鳴らしてブンブン頷いていた。
「この後どうするんだ」
「んだ、よければ狩りに混ぜて欲しいだよ、効果を上げるためにボーナスポイントが欲しいだ」
実のところ、ブリアンの戦闘はきになるところである。
一度スコップでぶん殴ってるところを見たが、どんな戦い方をするのだろうか。
うちの生産チームは戦いにある程度の定評を持っている。
スペシャルプレイヤーとか言われてる俺の前のゲームのやつらがおかしいだけで。
普通に強い、そういう評価だ。
「んだ、そげなことより何してるだか?」
「飯の後で休んでただけだぜェ」
その通り。
ご飯を食べた後、暫しの休息の後。
夜の狩りへと向かうのだよ。
「そうだべか、おらは飯は食ってきたから大丈夫だで」
「オッケェ〜」
「ふむ、ならば三人で霊峰を登る」
狩りは道連れなんとやら。
ブリアンもどうやら時間が空いてるようだし。
夜の山狩りとしけ込もう。
ヒ ロ イ ン 登 場 ! !
農家型ヒロインです。
裏設定とかあるつもりで書いてます。
それを想像しながら見てください。




