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「どうした?」
「魔法剣士になった」
「ああ?」
怪訝な表情をする三下さん。
でもでもだって、本当のことなのだ。
ブーストがマジックブーストになった。
もしかすると、上位スキルになるのかな!?
魔法剣士、魔法スキルなんだから!
ってことで称号詳細を見てみると。
武器の攻撃力アップと身体能力強化系スキルを使用可能らしい。
魔闘家はどうなんだと思いながら同じような効果だった気がする。
素手の威力向上か、武器の威力向上かの違いだろうな。
「コピペしろよ」
「わかった」
「……まあ俺もカウンター職人っていう称号持ってるけど、これも壊れてるよな」
「俺的にはそのカウンター職人の方が気になるんだけど」
「俺の生命線だから教えねェよ」
ずるいぞ、三下さん。
そんなこんなでいい時間帯になってきたので、夕食をとることに。
「生だぜェ」
「だから調理するのだ」
魔物が常に沸くからこそ、サバイバルって感じがしてくる。
警戒に当たりながらマップ内で過ごす。
プレイヤーキラーが今きたらどうしよう、とか。
強敵きたらどう対処する? とか。
飯食ってる最中に来たらどう戦う とか。
「そりゃお前だけだろォが」
「飯どうすんの」
「戦いながら食う」
同じ穴のムジナとやらだと思うがね。
まずは火を起こそう。
「キャンプセットとか無いと普通できねェだろォよォ!!」
「あるのか?」
「こっちからすれば木の棒と板だけ持ってお前がなにするのか興味あるんだけどォ?」
「なにをいう、古来から火を起こすとなればキリモミ式だろ」
「原始人だなマジで」
とか言いながら、三下さんも興味津々。
百均に指サックタイプの火起こし器具がある時代だ。
錬金術を扱う古い古いアニメに魅了された研究者が作った着火手袋らしい。
惜しむらくは、それで火事が増えて発禁になったということ。
「ストレージから転移させればカンテラくらいあるし、松明もほら」
「おお。便利すぎるのもあれだってことか。いいぜェいいぜェ全部付き合ってやろうじァねェかヨォ!」
うおおおおおお!!と、きりもみ式で火を起こし始める三下さん。
その隣で俺はゆみぎり式の準備を行う。
簡単にできるからいいよね。
「ハァハァハァ……テメェ! んだよその便利なの!?」
「自然素材だから大丈夫だ、問題ない」
精神的に疲れたのが、地面に大の字になった三下さんが俺の方を見て叫んでいた。
叫ぶ元気があるならば、回せ三下さん!
「……本当に起きんのか?」
「やってみる価値はあるだろう」
ぶっちゃけると、全てが原始的な中世ヨーロッパ風という形になっているわけではない。
松明、ろうそくももちろんあるが、照明類は魔法がどうたらこうたらっていうタイプのデザインになっているらしい。
サイゼが持っていた屋台。
あれは料理人を志すプレイヤーに安く売ってる初級セットのようなものだ。
火起こしは魔石というものを利用するのだと。
それの維持費がかかるとサイゼが言っていた。
あと、使えば汚れるのでちゃんと綺麗に使わないといけないらしい。
なんと面倒な。
そう、面倒なのだ。
「面倒臭いだろ、このゲーム」
「ああ、そういうことか」
わざわざプレイヤーに対して悪評につながりかねない仕組みだってある。
初期に起こったノークタウンのプレイヤーバッシング。
そして一切情報開示のない姿勢。
次のマップに進むためには開拓やら中継地点作りやらをしなければならないという面倒さ。
クエストだって、なんだって、行ったり来たりのお使いはないが、固定されたこれっていうのがあまりないゲームなのだ。
「いずれ、こういうイベントが来る気がする」
「サバイバルイベントか?」
「アイテム制限、スキル制限、なんだっていいが、平気で面倒なイベントを用意しているってね」
「そうだなァ、プレイヤーキラーのチーム、ギルドだっていそうな匂いがしたぜ。なにかしら、裏の下衆に塗れた街とかが作られてそうだ。好きでプレイヤーキラーやってる奴らにもそういう楽しめる土壌が準備されてるとかな」
……マフィアマップかな?
表と裏のバトルはなかなかありそうな雰囲気だ。
その時は三下さんは良いオフェンサーになるだろう。
カウンターは守護神タイプかと思いきや。
三下さんの性格的に言うと。
オフェンシブすぎるのである。
それはなにかしらの武術を心得ているスペシャルプレイヤーとはまた異質。
期待が膨らむのだ。
「オイ! 煙でてんぞォ!」
「木粉の中に蛍火が出た、これに繊維が多く燃えやすい物を着火させればいい」
途中で湧いて出たバトルゴリラは、三下さんが盾でぶっ飛ばしていた。
火種がしっかりと火を形取る。
そして道中拾い集めておいた葉っぱや木屑に移し、枝を並べていく。
ーーパチパチパチ。
「すげぇな、こんなんで早く火が起きちまうなんて」
「ゲームばっかりやっててもダメだぜ」
「ああ? 廃人だろお前ェ」
「まあそうだが、それは置いといて」
無事に火が起こって、次のターンだ。
「豚肉を焼く」
「早くねェ?」
腹が減っては戦はできぬという、古き良き言葉の通り。
火が起きたらまず飯を食らうのだよ。
「なるほど、そういう格言もあるのか。勉強不足だったぜェ……で、どうやんだ?」
「木の棒に肉を刺す。もしくは持ってる武器でいい俺は手頃だから銛を使うが、刀や剣の先に肉を刺して焼くのが流儀だ」
「かっけェなおい、よっしゃこんな感じか?」
俺の動きを見よう見真似しながら三下さんも片手剣にオークの豚肉を刺して焼き始めた。
パチパチと音がする。
豚肉はしっかり焼くのが流儀だ。
それ以外は認められないな。
「硬ェし、あんまり味しねェな」
多少硬くとも、顎の鍛錬になるのだ。
じじいにそう教わった。
「これはゲームだから無理だが、なんか汗かいたらとっといて塩にして食べるときに塗れば一石二鳥だってな?」
「おェェ、マジかよ? そんなんするなら味気ない方がマシだぜ?」
「だよな、まあ死にそうになったら塩分大事かもしれんが、ゲームだから仕方ない」
そして、どんどん太陽はどんどん沈んでいき、ナイトタイムになるのである。
現実世界では、夜明けに相当する。
お互いカロリーはしっかりとってきているのでログアウトしなくても無問題だ。
初期の頃はこういうサバイバル回というか。
のほほんプレイが多かったですね。
でもバトル回が思ったより好評だったりするので、面白いバトル要素を考える日々です。
そして感想辛辣すぎて笑いました。
漁師のことがたまに出ていますが、海といえば海賊ですね。
予告です。海といえば海賊です。
あとがき小話(読み飛ばしましょう)
連続更新中に小話考えるってなかなか難しいですね。
とりあえずもう1話更新できるように頑張って書きます。
今回は、生更新ですねー。
随時書いて投稿してます。




