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ローヴォの唸り声が響く。
プレイヤーキラーたちは面白いように挙動不審になり周りを警戒しだす。
「な、なんだ!?」
「敵MOB出たか!?」
「唸り声だ」
そして草陰からローヴォの奇襲が始まった。
「うわぁっ!?」
顔面に飛びかかられてパニックを起こすプレイヤー。
そしてすぐにスキルの準備を始めた。
一人は魔法の詠唱を始め、一人は剣技スキルを振るう。
ローヴォはそれをうまい具合に躱すと再び森の中に逃れた。
「ワアアア!?!?」
一人をくわえたまま。
これで残り三人。
「俺が追う! お前らはここにいろ!」
まとめ役っぽい男が剣を抜くと、そのまま森の茂みの中へと踏み出して行った。
どうやら仲間意識というものは一応存在しているらしい。
「どうする?」
「とりあえず待つか?」
真下でそんなことをのんきに言い出したプレイヤーたち。
もちろんレッドネームだった。
キルポイントという言葉が出ていたが、一体なんなんだろうな。
(おい、どうする?)
(合図をしたら降りて後ろから拘束する。そして拷問だ)
ニヤリ。三下さんの表情が歪んだ。
そして俺の合図とともに、上から奇襲を行う。
「うわっ!?」
「なっ!?」
ウェストポーチ型のアイテムボックスから取り出しておいたロープを用いる。
頭上から飛びかかり、すぐに首元に巻きつける。
そして相手が驚愕し、もがいたところで膝裏を蹴り後ろに倒す。
「手際良すぎだろ」
「まあな」
三下さんの獲物は、首がへし折れていた。
上から後頭部を小盾で殴ったんだろう。
うまい具合にクリティカルヒットして、キルしてしまったようだ。
「……コッ……ァッ……」
おっと忘れてた。
苦しみもがくプレイヤーの縄を緩めてやる。
ちなみに足と手は縛ってある。
「テメェら……こんなことしてただで済むと思うなよ……!!」
「あぁん? お前立場わかってんのかァ?」
言い返す人がいてくれるとこういう手合いの相手が助かる。
とりあえず吊るそうぜとのご指示なので、芸術的に吊るして見た。
亀甲というやつか?
昔SMクラブを運営するギャングに捕まった時されたことがある。
とりあえず蹂躙してやったけど。
「男とSMプレイしても楽しくねェから殺そうぜもう」
「チッ! お前ら、マジで覚えとけよ? ぜって探し出して殺してやる。デスペナ終わったら絶対見つけ出して殺す。何がなんでも殺してやるからな?」
「こういう手合いってひと思いに殺す方法しか持ってないのが悔やまれんぜ?」
ロープとか縛るものとか持っておけばいいのに。
っていうか爪とか一枚一枚剥がしていけばいいじゃん。
じわじわなぶり殺すっていうか。
普通にいたぶるだけいたぶって、あっさり殺していいと思う。
「じゃ、ローヴォからの報告が来るまでレクチャーしてやる」
「お? 拷問センセェってことかァ?」
「そう」
「ちょ、やめろ! くっ!! こうなったら自害スキルをーー」
自害スキルってなんだ。
とりあえず舌を思いっきり噛もうとしていたので、ロープを噛ませておいた。
もがもがするプレイヤーキラー。
「まずは目を見る」
そこに宿る恐怖をしっかり確認する。
こういう手合いは痛覚設定を遮断レベルに引き上げていることが多い。
自分がやられるのが嫌だから。
だから、危機意識にかける部分がある分弱い。
「髪毟ったり、指の爪剥がしたりして確認すればわかる」
あまり答えてない。
だから、視覚的、聴覚的に恐怖を植え付けてやる。
つまるところ、指を切り落とすところを見せてやる。
ゲームとはいえど、ショッキングだからな。
「もが! もがもが!!!」
「鼻の穴を引き裂くとかどうですかァ! センセェ!? ヒャッハッハ!」
八十点です……ってあれ、三下さんキャラ変わってない?
でもまあ、割と楽しんでいるようで何よりです。
「脳の取り出しかたって熱した鉄の棒を鼻の穴から突っ込んでグリグリすることだったらしい」
「あ、それ聞いたことあるわ」
「いろいろ実践して見たら? 今後のために」
「よっしゃ、やって見るわ」
三下さんが適当にへし折った木の棒を鼻に突っ込んだ。
デリケートモーションってスキル持ってるはずなのに、えらく乱雑に。
「フゴアアアア!?」
痛みは感じないだろうが、異物感はあるのだろうか?
突っ込み過ぎたら眼球落ちないっけ?
大丈夫かな。
でも思い切りの良さは功を奏してプレイヤーキラーは拘束の中ギッチギッチと体を揺さぶる。
「あ、いっけね。やり過ぎたか?」
木の棒がかなり深くまで刺さって、プレイヤーキラーのHPが大きく減少していく。
まだデスはしてないけど、何かしらのダメージペナルティが入ってるみたいだった。
白目を向いている。
「後は、毒とかもあり。あと、股座を狙い撃ったりとかも有効だったかな」
「目を潰すのはどうだ?」
「まあ、一番それが利くから一番最後か、一番最初に持ってきた方がいい」
山場みたいなものだからな。
どっちにしろ、想像しうる痛みではなく。
生きてて絶対味わうことのない痛みが予想される部分を攻撃するのが大事だ。
「おっと、一旦隠れよう」
「もう帰ってきちまったのか?」
ローヴォから戻ったっぽい情報が送られてきた。
ちなみに一人はほぼ半殺し状態で留めてあるそうだ。
そういう訳で吊るしてある木とは別の木に登って様子を確認する。
「な、なんだ……これは」
ボロボロになった仲間を抱えたプレイヤーキラーが、目の前の惨状にそんな言葉を漏らした。
亀甲縛りでつるされて、鼻から棒を奥深くまで突っ込まれて瀕死状態。
(ちなみに相手が慄いてる時もチャンスだ)
(ん?)
敵にはファーストコンタクトの印象が大事。
手加減、容赦は一切するな。
と、いうことで木から悪鬼之刀を抜いて飛び降りる。
そしてギロチンのように刀を振り下ろし、つるされていた一人の首をはねた。
「おま!? ……ローレんっ!?」
すぐに首を抑える。
ちなみにスキルは何一つ発動してない。
生身でここまでできてこそ、なのだよ!
「狙いは聞いている、どこの組織だ?」
一時期下火になっていたプレイヤーキラーがまた増えつつあって。
さらにターゲットが目立ったプレイヤーにもなっている。
殺したいから殺すわけではなく、誰かに殺すように依頼されている。
俺にはそうとしか思えない。
「キルポイントとはなんだ? 喋れ」
「手際良過ぎ、この一瞬で倒して締めてそして拷問スタートするとか、喋る暇すら与えないのかよ」
奥から三下さんが歩いて来る。
その隣にはローヴォが無傷で佇んでいた。
ちなみに既にこいつの手と足は無い。
戦士プレイヤーの耐久力は知っている。
ガンストを達磨にした時と同じような形だ。
「絶対口はわらねぇ……!」
「そうか」
ならすぐに殺してしまっていいだろう。
むしろここで完膚なきまでに叩きのめすより、少し余力を残した状態で殺し、恨みを持ってくれる方が楽しそうだ。
そのまま首をはねてやる。
「おいおい、早いんじャねェの?」
「よく考えてみ」
「ん? おお、そういうことか。プレイヤーキラーの楽しみ方ってこんなのもあんだなァ」
しみじみとした表情をする三下さん。
中途半端に恨みを買い残しておくと、暴力はその数を増して帰って来る。
マフィアの時は楽しかった。
どうにもレッドネームを率いるギルドやチームなどの組織がある匂いがする。
楽しくなってきやがったぜ!
山籠りしてる最中に他にも襲って来る人いるかな?
可能性は低いが、期待しておこう。
あとがき小話はまたあとで!




