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「ゴルドーの地は一つの大陸になっている、未だ開拓されてない地域も多い」


 ここは……、

 とスティーブンは荒野にそびえる巨大な一枚岩の上で呟いた。


「わしの昔の修行の場じゃった」


 何も無いこの荒野がか。

 ぶっちゃけ広域マップの半分くらい埋まってる一枚岩だ。

 修行するって言ったって、一体どうするんだ。

 そんなことを思っていると、スティーブンの指が再び鳴る。


「一度実力を見せてみるがいい、一人と一匹で羆を倒したんじゃろ」


 魔法陣が展開される。

 そしてその中から姿を表したの魔物だった。



【ワイルドベイグランド】Lv10

荒野を徘徊する人型の魔物。

荒野の砂埃や石が、長い年月をかけて動き出した。



 石や砂で出来た操り人形と言ったら良いのか。

 顔とおぼしき所には、一応眼孔や鼻の凹凸がある。

 吊られているかのようにフラフラと近付いてくる姿は異様な雰囲気があった。


「ローヴォは後ろにまわれ!」


 レベルもそうだが、かなりの強敵に見えた。

 相手の得物は無い、素手だ。

 対する俺は、レイピアと銛と魚鉤くらいしか無い。

 多少の攻撃力を持っているがレイピア以外は使い物になるかどうか。

 第一斬り結ぶことを念頭に置いてる剣ではない。

 あんな奴突いたら刃先が潰れかねんぞ。


「師匠! と呼んで良いのかわかりませんが、私の本来の武器は大剣をアポートして使います!」


「……なるほど、重さか。まっとれ」


 魔法陣が現れて、ガチャガチャと武器が現れる。

 太刀、小太刀、薙刀、長剣、レイピア、大剣、ハンマー、仕込み刀、杖、棍、様々な武器が乱雑に。


 ワイルドベイグランドが迫ってくる。

 しがみつくように、何かに縋るように。

 動きに合わせてカウンターを取る。


「ブースト! アポート! スラッシュ!」


 身体を強化して、大剣を頭上に転位。

 そしてスキルの力を借りて思いっきり振り下ろす。

 ゴガンと硬い音が響いて、腕に痺れが伝わって来た。

 思わず大剣を手放してしまう。

 硬過ぎるだろ!

 怯んだ所に、大振りのフックが。


「アポート!」


 スターブグリズリーと同じ様なパターンだ。

 だが、痺れのお陰か、五点半身受けに失敗した。

 出来るだけ衝撃は受け流したが、大きく弾き飛ばされる。

 石で出来てるだけあって、攻撃は重たい。


「安物じゃ意味なかろうて」


 スティーブンは笑って見ていた。

 ちくしょう、ローヴォは役に立たない。

 人型であることが唯一の救いとも言える。

 一番取り回しがし易く、打撃で有効なのは。


「アポート!」


 棍だな。長さ的に六尺棒。

 素早く手元に引き寄せると軽く振り回して感覚を確認する。

 いける。


「ローヴォ下がってろ!」


 俺の一言で引き下がってスティーブンの隣へ行くローヴォ。

 万が一にも無いが、攻撃が当たらないように。

 基本の型に持ち、下段に構える。

 狙いは足下、フラフラしている二足歩行なら、容易に崩れる。


「エエエエエィィ!!!」


 気合いと共に一閃。

 またしても大振りのフックを前に右足を出して開脚し避けると共に。

 その足の動きに合わせるように六尺棒を滑らせて敵の軸足を掬う。

 かなり重たかったが、音を立てて転がすことに成功する。

 柔術か?

 アホか、あんなん無理だろ。

 六尺棒に腕を絡めて地面に縫い付ける。

 そのままテコの原理で棒を倒し、敵の右肩を外しにかかる。


 大相撲に河津掛けという技がある、足を絡めて投げる技。

 柔道では禁じ手扱い。

 程よく曲がる六尺棒だと絡めた相手の腕がそんな感じになる。

 ウチの流派では河津殺しと呼ばれている。

 まず、腕を棒に絡めること自体、難しいんだけど。

 とりあえずこれで一本。

 石で出来た関節部はプレモデルのように取れた。

 蹴って遠くにおいやっておく。

 後はもう片方の腕を足で踏みつけ身体をおさえながら、喉、眉間を狙って地獄突きするだけだ。

 相手のHPはガンガン減って行く。

 俺のHPも暴れているからそこそこ減って行く。


「……なんと」


 ワイルドベイグランドは光の粒子になって消えて行った。

 なんとか勝てたぜ、必死過ぎて息が上がってしまった。

 ドロップを確認しよう。



【黒鉄鉱石】素材

重たいが頑丈な黒鉄を含む鉱石。

一般的な鉄に比べて精製が少し難しい。


【パンドラストーン】素材

石系モンスターの体内で蓄積された塊。

真珠のように異物の周りを石素材で覆うように精製される。

慎重に砕いて行けば何かいいことあるかも。



 黒鉄鉱石が二つも!

 パンドラストーンなんじゃそりゃ?

 とにかく、実入りはデカいと言える。


「元々、何かやっておったんか?」


「まぁ、多少は」


 ゲームの中ですら、棒術を使うとは思わなかった。

 もっとこう、魔法も打ちつつ、打撃技で攻めるとか。

 そういうのがやりたいのに。

 魔法スキルは未だ二つだけってのが何とも言えない。


「名は、ローレントでよかったのか?」


「はい」


 鑑定でも使われたのだろうか。

 レベルと職業と名前が筒抜けになるが、別に困ることは無い。


「お主はどこを目指す」


 スティーブンは雲一つない荒野の遠くを見ながら言う。

 一枚岩の上、風を遮るものが無いから白髪、髭、ローブが豪快に棚引いている。

 どこを目指すのか、それは……。


「まだ決まっていません」


 元々誘われて始めたゲーム。

 でも町の周りでも冒険が楽しくなっていたのは事実。

 何をするか、何を目指すのかと言われても。

 まだ歩き始めたばかりだということだ。


「しばらくはプレイヤー陣の信用回復と、第一の町の東の川辺の復興に携わる予定です」


「うむ」


「師匠、東の川の先には何があるんですか?」


 気になることは他にもある。

 第二の町からその先へ、そして未だ閉ざされた南の森。

 西の草原の先は農地が広がっているのがわかっている。


「お主はもうちょっと色々周りのことを気にかけた方が良い」


「はあ」


 わかっちゃ居るけど面倒くさい部分がある。

 まず第一の町にもちゃんと名前があるんだろうな。


「弱い魔物を転位したが、本来ならここはゴルドー大陸中央。東西南北全ての境目に当たる場所じゃ、まぁいずれは地力で辿り着けるようになってみろ」


 どうやら選り好みしてくれていたようで。

 本来ならもっと凶悪な魔物が潜んでいそうな気配がありそうだ。

 インフォメーションが頭に聞こえる。



[称号”とある魔法使いの弟子”を獲得しました]



 仮が取れていた。

 これで子弟だと認められたことになるのか。

 スティーブンが指を鳴らすと、近場に魔法陣が浮かび上がる。


「もう、帰るか?」


 どうしようか、せっかく連れて来てもらったんだし。

 もう少し狩ってから行くことにしたい。

 地味に、黒鉄が手に入るのが良いから。


「ふむ、良い心意気じゃ。少し強めにしてやろう、レベル帯は一緒じゃ」


 魔物が現れる。

 少しは手加減してくれても良いと思うんだけど。



【ワイルドベイグランド】Lv12

荒野を徘徊する人型の魔物。

荒野の砂埃や石が、長い年月をかけて動き出した。



 フラフラと近寄ってくるワイルドベイグランドに改めて六尺棒を構えなおす。


「ブースト!」


 ついでに身体能力も向上させておく。

 さっきよりレベルが高い、油断は出来ない。

 牽制でひとつき、相変わらずびくともしない。

 というか、固さが増しているように思えた。


 HPは?

 全く減ってない。

 むしろ俺の方が痺れて減ってる気がする。


「物理で硬い相手には魔法も撃て」


 スティーブンから指示が入る。

 確かに、ここはファンタジー世界。

 魔法スキルで使えるもんなんて【エナジーボール】しか無いんだが。

 どうする?

 とりあえず銛なんぞ投げても意味無いだろう。

 一度後ろに下がると初めてのちゃんとした魔法スキルを放つ。


「…………エナジーボール!」


 強制詠唱なんて聞いてない!

 相手が薄のろで助かった。

 というか隙が多過ぎてどうにもこうにも。

 スキルレベルが低いからかな。


 青色の光の玉が俺の魔力を凝縮したものなのだろうか。

 ポンッと情けない音を立てて真っ直ぐ飛んで行き。

 ワイルドベイグランドの胸元に当たって弾けた。


「まぁ、当たり前じゃのう」


 一瞬動きが止まったくらいで、HPもミリで減っただけだった。


 スティーブン!

 騙したな!

 絶対にわかっていた顔をしている。


 だが、手数が増えたことは一つのアドバンテージ。

 そしてワイルドベイグランドは魔法が当たる時に一度止まる。

 六尺棒の牽制攻撃を意に介さなかった時とは違う。

 六尺棒を地面に突き立て、棒高跳びの要領で大きく後ろへ下がる。

 こういう時に便利、相手との間合いを容易に取れるからね。

 詠唱する。


「エナジーボール!」


 の、発動と共に走れ。

 着弾と同時に相手の動きが止まる。

 その隙を見逃すことはない。

 大きく棒に遠心力を蓄えて、右から首筋に横打する。

 硬い音が響いて棒が弾かれるが、相手の身体も傾倒しそうになっていた。

 堪えてる所悪いが、そのまま弾かれた勢いを使わせてもらう。

 流れに逆らわず、逆回転して左から足を狙え。

 次は短く持って力ですくい上げろ。


 転がすことに成功する。

 正直重たいからしんどい。

 どうしようか。

 後は振り下ろすだけだったら丁度良い得物があるじゃないか。


「アポート!」


 引き寄せたのは、大槌。

 ハンマーです。

 相性はバッチリでしょ。


「スラッシュ!」


 ハンマーを持って【スラッシュ】なんて聞いたこと無い。

 でもスキルを撃ててしまうのがこのゲーム。

 殴打武器専門のスキルがあるならそっち使った方が倍率良さそうだよね。

 迷わず頭に振り下ろすと、粉々に割れてしまった。

 そして光の粒子になって消えて行く。



[プレイヤーのレベルが上がりました]



 一々インフォメーション来なくても、ステータスを見ればわかる。

 だから聞き流してたんだが、今度から耳を傾けた方がいいかな。

 迷わず【アポート】に振れ!

 それ以外は見えない、見えないんだ。



プレイヤーネーム:ローレント

職業:無属性魔法使いLv13

信用度:75

残存スキルポイント:0

生産スキルポイント:1


◇スキルツリー

【アポート】

・精度Lv10/10

・距離Lv8/10

・重量Lv10/10

・詠唱Lv1/1



 この調子だと、次のレベルでスキルマックスになる。

 スキルマックスボーナスってどうなるんだ。

 楽しみが増えましたな。


「応用力はあるな。じゃが無属性魔法の一次スキルの取得可能スキルは見たのか?」


「……」


 当然ながら見てない。

 スティーブンが大きく溜息をついた。

 しょうがないじゃん、スキルなんて誰かに貰うかスキルブック買うかしか知らないんだから。

 そう言えば、スティングってどうやって取ったっけ?

 忘れたわ。


「確認します」


 無属性スキルは、属性強化は無いが僅かばかり基礎的な能力を上げることに繋がるスキルが多かった。

 主に自分の魔力を微上昇させる【メディテーション・ナート】とか、武器に無属性魔力を帯びさせる【エンチャント・ナート】とか。

 一応取って置くが、上げるのは迷う。

 魔法職だから攻撃力に魔法攻撃力がプラスされるエンチャント系は良さそうだね。

 そう考えると元の魔力が上がるメディテーション系も良いのか。



【メディテーション・ナート】

・向上Lv1/10

・熟練Lv1/15

・消費Lv1/10

・詠唱Lv1/5


【エンチャント・ナート】

・向上Lv1/10

・熟練Lv1/15

・消費Lv1/10

・詠唱Lv1/5



 向上と熟練まとめとけや!!!

 と思ったが、能力の幅は向上レベルで上がり、実際は熟練を上げておかないとフルで発揮できないと言う、面倒くさい使用だった。

 向上と熟練にポイント使うウザい奴だなこれ。


「それを選んだか」


「遠距離系は投げ物がありますんで」


 【エナジーボール】のパラメーターのどれか一つをマックスにしないと無理なんですが。

 【エナジーショット】や【エナジースプレッド】とか、詠唱時間長そうだから興味ない。


 機会があれば考慮して行こう。

 このゲームはスキル取得が無限にできるけど、それを育てるのがしんどいのだよ。

 現に、スキル一つもマックスに出来ていないレベル13のプレイヤーだっているんだ。


 忘れてた、ドロップは?



【黒鉄鉱石】素材

重たいが頑丈な黒鉄を含む鉱石。

一般的な鉄に比べて精製が少し難しい。



 黒鉄鉱石オンリーでした。

 でも三つだって、これは嬉しい。

 頑張って戦った甲斐があったもんだ。


「そろそろ戻るかのう……、一つローレント」


「はい」


「お主だけに言うことでもないが、NPCもこの世界で生きておるし、生き残って来ておる。その事を努々(ゆめゆめ)忘れる出ないぞ」


「わかりました」


 NPCから教えられる技術も多い。

 スキルの派生に従ってあげて行く独りよがりよりも。

 誰かを師事し、先にこの世界を知る事の用が重要な気がする。


 そう思いながら、荒野に敷かれた魔法陣へと。

 出て来た場所は魔法使いギルドでも無ければ、裏路地でもない。

 一つの屋敷の中だった。



ーーー

プレイヤーネーム:ローレント

職業:無属性魔法使いLv13

信用度:75

残存スキルポイント:0

生産スキルポイント:1


◇スキルツリー

【スラッシュ】

・威力Lv10/10

・消費Lv1/10

・熟練Lv1/10

・速度Lv1/10


【スティング】

・威力Lv1/10

・消費Lv1/10

・熟練Lv1/10

・速度Lv1/10


【ブースト(最適化・黒帯)】

・効果Lv3/10

・消費Lv3/5

・熟練Lv3/5


【エナジーボール】

・威力Lv1/5

・消費Lv1/5

・熟練Lv1/5

・速度Lv1/5


【メディテーション・ナート】

・向上Lv1/10

・熟練Lv1/15

・消費Lv1/10

・詠唱Lv1/5


【エンチャント・ナート】

・向上Lv1/10

・熟練Lv1/15

・消費Lv1/10

・詠唱Lv1/5


【アポート】

・精度Lv10/10

・距離Lv8/10

・重量Lv10/10

・詠唱Lv1/1


【投擲】

・精度Lv1/3

・距離Lv1/3


【掴み】

・威力Lv1/3

・持続Lv1/3


【調教】

・熟練Lv1/6


【鑑定】

・見識Lv1/6


◇生産スキルツリー

【漁師】

・操船Lv1/20

・熟練Lv3/20

・漁具Lv3/20

・水泳Lv1/1


【採取】

・熟練Lv1/3

・眼力Lv1/3


【工作】

・熟練Lv2/6


【解体】

・熟練Lv1/3

・速度Lv1/3


◇装備アイテム

武器

【凡庸の大剣】

【鋭い黒鉄のレイピア】

【???】new

装備

【革レザーシャツ】※補修中

【革レザーパンツ】※補修中

【軽兎のローブ】※補修中

【初心者用のローブ】※代用中

【初心者用の服(全身)】※代用中

【黒帯】

称号

【とある魔法使いの弟子】


◇テイムモンスター

テイムネーム:ローヴォ

【リトルグレイウルフ】灰色狼(幼体):Lv5

人なつこい犬種の狼の子供。

魔物にしては珍しく、人と同じ物を食べ、同じ様な生活を営む。

群れというより社会に溶け込む能力を持っている。狩りが得意。

[噛みつき]

[引っ掻き]

[追跡]

[誘導]

[夜目]

[嗅覚]

※躾けるには【調教】スキルが必要。

ーーー


スキル構成がえらいこっちゃになってます。

複雑じゃなくて、なげぇ。


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