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 ゲーム内時間で早朝ログイン。

 昼夜逆転しているのか、コンビニ飯が味気なく感じるこの頃。

 まず立ち寄るのはサイゼさんの屋台なのだが。

 ……まだログインしてないようである。


「いらっしゃい、……プレイヤーかい、帰んな」


 適当な小料理屋に入るとおじさんにすぐに怪しい目で見られた。

 バッシング、大いに広がっている。

 早いうちに何とかしないと。


「一日経っていますが、加工費は払います」


「おおこれ、フィッシャーガーじゃないか!」


 大きな切り身を持って感嘆の声を漏らすおじさん。



【オットー】NPC:Lv7

職業:調理師



 ガタイは良さそうだけど、そこまでレベルが高いわけじゃないのか。


「川の周りにはモンスターが一杯だしな、かといって川まで出てもフィッシャーガーが居る。釣るのも一苦労なんだ、久しぶりの魚だから腕によりをかけてやる。なに、少々痛んじゃ居るが、たまに入ってくる塩漬けはもっと質が悪い時もある」


 オットーはそう言いながら切り分け始めた。

 朝の店にまだ客は居ない、閑古鳥みたいな状況でプレイヤーを拒んでいいのだろうか。


「なんだ? 閑古鳥って言いたいのか?」


「いえ」


「まぁ見ての通りだ、最近冒険者が町人に手を出した。物騒だからな、だから町の皆が関わらないようにしてるんだ」


 オットーの話を説明すると。

 冒険家と呼ばれるプレイヤー達の中で、NPCを殺してしまった愚か者が居るらしい。

 物資が少ないし、わけのわからん奴らには売れないと断った矢先きのことだったんだと。

 ヘジーとザーク……、彼等はNPCキラーってついてたな。

 あいつらのせいか。

 一概にはそうも言えないが、どうやら信用が足りてないプレイヤーはまとめて関わらないようにとのお達しなんだと。


「お前は、ある程度信用があるみたいだ」


「わかるんですか?」


「ふむ、嫌悪感がまるで無い」



[ステータスに信用度が追加されてます]



 なんだと?

 ってか過去形?

 ステータスを確認してみる。



プレイヤーネーム:ローレント

職業:魔法使い見習いLv12

信用度:70

残存スキルポイント:0

生産スキルポイント:1



 新しい項目が追加されていた。

 NPCとある程度取引して絡むと追加される項目らしい。

 こういうメッセージ系って自分のレベルアップ以外聞いちゃいなかったからわからなかった。

 情報をピックアップする。



【信用度】

0から100まである。

特殊条件かで臨界突破。

プラスにもマイナスにも作用。



 簡単な説明だが、ゼロという数字は初対面を表すのかな。

 で、NPCと話したり取引、お手伝いなどをすることで上がって行くと。

 そういうことだろう。

 信用度:70が高いのか低いのかわからんが。

 とりあえず上限100だとしたらそこそこ高い数字じゃないか。

 嬉しい限りである。


「そら、出来たぜ。代金はいらねぇ、俺も食べるからな」


「ありがとうございます」


「犬っころにはこいつだ」


「わふわふ!」


 俺とオットーはテーブルに座ってそれぞれ舌鼓を打った。

 ふむ、ムニエルか。

 簡単な料理だとは思うが、かなり美味かった。

 駄犬には切れっ端と野菜を炒めたもの。

 犬に同じ食べ物を大丈夫かと思ったら。

 このグレイウルフ人間と同じものを好むと説明書きしてあったのを思い出した。


「っかー! 久しぶりの魚だぜ」


「川がありますよ……?」


「この町にもう漁師はいねぇ、フィッシャーガーが居るからな」


「そんなにですか」


「でけぇし、船は壊すし、人はかみ殺すしで無理だぜ、まったくいつから増えちまったんだか」


 オットーにもフィッシャーガーがいつから増えたのかわからないらしい。

 自然にポップアップするモンスターなんだと思っていたが、以外と背景があるんだな。

 まるで外来種に犯される日本の川のようだ。


「川の桟橋ですが」


「おう、ボロボロだろう? もう何年も誰も使ってねぇからよ」


「私達冒険家の中の生産プレイヤーが、そちらの復興に乗り出してるのはしってますか?」


「一応は聞いてるぜ、でも人数が少ないから町の皆はあんまし信じてねぇけどな。日々食いつなぐので精一杯だ」


 NPCも日夜大変な思いをしている。

 さて、腹も膨れたことだし適当な小話がすんだら漁へ出かけよう。

 すっかり思考が漁師になってる。


「まぁ何かあったらまた来いよ、魚持参でな」


 何にせよ失った信用を取り戻すのは難しいこと。

 よかった、下手に攻略進めてなくて。

 怪我の巧妙とでも言えるのだろうか。


 さて、川へ向かうよりも先に。

 お伺いを立てねばいけないところがある。

 テレポート爺さんの所だ。

 図書館までの裏路地に、あの爺さんは立っている。

 NPCだって生活してるんだったら、相当物好き爺さんだ。

 ずっとそこに立って帰れコールしてるわけでしょ。


「……一人か?」


「いえ一人と一匹です」


 閑散とした住宅街の隙間には、相変わらず誰も居ない。

 誰かが居たら困るんだが、治安が悪いのは一部プレイヤーくらいなものだ。



【スティーブン】NPC:???

職業:町人



 レベルが見えない。

 一体どういうことだ。


「鑑定を使うのは良いことじゃが、無闇矢鱈に使って礼に欠かんことじゃな」


 鑑定を使っているのがバレている様だった。

 スティーブンに窘められる。

 ジロっとシワシワの眼差しが俺を見定める。

 そして再び口を開いた。


「ふむ、ここへ来たということは、北の羆を倒したのじゃな? スキルツリーを見せてみろ」


「はい」


 言われるがままに開示する。

 【アポート】は未だマックスにはなって居ないがそれでもいい線行ってると思う。

 何だかんだレベルだって10を越えているからな。


「……レベル10から見習いを卒業できるのを知らんのか。いや、この調子じゃ魔法使いギルドにすら行っとらんのじゃろうて」


 スティーブンは大きく溜息を着いていた。

 え、どういうことですか。

 公式メッセージを無視して来た弊害がここにも現れていた様だった。


「どのスキルを伸ばすかは本人の自由じゃが、就いた職業でもスキルの伸びは変わって行く」


 ま、実際に転職すれば早いじゃろ。とスティーブンは指を鳴らす。

 すると視界がガラッと変わってしまった。


「あらスティーブンさん、魔法使いギルドへ何の御用でしょうか?」


 薄暗く、狭い路地から景色は一転。

 不思議な灯りを放つ草が天井から伸びている木造の大部屋。

 受付のお姉さんはやや扇情的な恰好をしている。

 魔法使いギルドと言っていた、初めてきた。

 ここが魔法使いギルドなのか。

 ログイン時は建物の入り口からスタートだったので、入ったことは無かったんだった。

 なんという今更感である。


「こいつの転職じゃ」


「お弟子さんですか?」


「……まぁそんな所じゃの」


 スティーブンは一度黙り込むと、受付のお姉さんにそう言い返した。

 なんだろう、認められて少し嬉しい自分が居る。



[称号”とある魔法使いの弟子・仮”を獲得]



 え?

 またわけのわからんものが……。


 考え込む暇もなく、受付に奥の部屋へ案内される。

 スティーブンは着いて来なかった。

 目は一人で行けと物語っている。


「ええと、初めてよね。まずはこの石盤に手を当てて」


「はい」


 言われるがままに手を当てると、石盤が光りだして情報を映し出す。

 プレイヤネーム、レベル、職業、スキルポイント、信用度、スキルツリーのスキル全て。

 テイムモンスターまで。

 そして俺のスキル構成を見ながら受付のお姉さんが呟いた。


「……魔法使いに、なりたいのよね? 見習いだったし」


「ええまあ」


 何かおかしい所でもあるんか。

 いや、自分でもわかってますよお姉さん。

 このスキル構成がどれだけ馬鹿やらかしたかって。

 ずーん。


「そ、そう落ち込まないで! ほら、石盤に表示されている職業から選んじゃって! ちなみに光ってるのが選べる職業で、光ってないのがスキル構成が足りずに選べないものよ!」


 励ますように急かされて。

 とりあえず石盤に表示されている職業を見て行く。



◇現在職業:魔法使い見習い(初期職業)

☆次の職業を選択してください。

[魔法使い(火)]※選択できません。

[魔法使い(水)]※選択できません。

[魔法使い(土)]※選択できません。

[魔法使い(風)]※選択できません。

[魔法使い(光)]※選択できません。

[魔法使い(闇)]※選択できません。

[魔法使い(無)]※選択できません。



 各種属性魔法使いが選択できる様だった。

 そして俺は案の定どれも選べない。


「えっと、今からだったらエナジーボールのスキル覚えれば、……無属性魔法使いにはなれそうよ?」


 すごく申し訳無さそうに、転職のサポートをしてくれる受付のお姉さんが助言してくれた。


「無属性……」


「苦手な属性は無いけれど、かといって強い属性も無いのよ」


「もうそれでいいです」


 そう言う訳で【エナジーボール】をすぐに取得させてもらった。

 ちなみにお金はかからない。

 だって初期スキルだもん。



【エナジーボール】

・威力Lv1/5

・消費Lv1/5

・熟練Lv1/5

・速度Lv1/5



 スキルツリーにようやく【アポート】以外の魔法スキルが刻まれた。

 どれだけ時間かかってんの。

 育てるつもりは毛頭ないけど。

 そして改めて石盤に手をかざすと、[魔法使い(無)]が選択できるようになっていた。



[無属性魔法使いに転職しますか?]

[yes/no]



 もちろんイエスで。



[職業が魔法使い見習いから無属性魔法使いになりました]

[スキルポイントボーナス5ポイント獲得]

[一次スキルが解放されました]



 色々とメッセージが頭に流れ込んでくる。

 なんか鬱陶しいからいつも聞き流してたんだけど、これからは注視して行かないとかな。

 それじゃ、ステータスを確認してみよう。



プレイヤーネーム:ローレント

職業:無属性魔法使いLv12

信用度:70

残存スキルポイント:5

生産スキルポイント:1



 ちゃんと変わっていた。

 レベル10で転職しておけば良かったのかもしれん。

 だがスキルポイントボーナスが貰えるだけなら別に損は無い気がして来た。

 うん、結果オーライってことで。

 スキル振りはどうする?

 もちろん【アポート】で。

 これで精度がマックスになった。



【アポート】

・精度Lv10/10

・距離Lv6/10

・重量Lv10/10

・詠唱Lv1/1



 残りは距離に振っておこう。

 60m圏内なら、思うがままに500キロまで手元に引き寄せることが可能に。

 スキルマックスボーナスってどうなるんでしょう?

 気になる所です。


 部屋から出ると、スティーブンはパイプを吹かしていた。

 荘厳に棚引く長いウェーブがかった白髪に、たっぷり蓄えられた髭。

 かなり様になっていると言える。


「何にしたんじゃ?」


「無属性魔法使いです」


「ま、選択肢がそれしか無いのはわかっとったわい」


 なら聞くなと言いたい所だが。

 【エナジーボール】を取得しろと言った意味が身を持ってわかった。

 魔法使い見習いの初期スキルは全てに通じると言った所か。


「では、いくかの」


「あ、ちょっと」


 指が鳴る。

 はい、また視界が変わりました。

 次はどこだ。

 辺りを見渡してみるが……。


「どこですか……」


「遠方の地じゃ、マップを確認してみろ」


 マップ?

 …あ、これか。

 ヤバいヤバイ、活動域とか基本第一の町周辺のフィールドだったから。

 完全にシステム的なものを忘れてしまっている俺が居た。

 マップを意識すると広域マップが表示される。

 はい、完全に知らない場所でした。



ーーー

プレイヤーネーム:ローレント

職業:無属性魔法使いLv12

信用度:75

残存スキルポイント:0

生産スキルポイント:1


◇スキルツリー

【スラッシュ】

・威力Lv10/10

・消費Lv1/10

・熟練Lv1/10

・速度Lv1/10


【スティング】

・威力Lv1/10

・消費Lv1/10

・熟練Lv1/10

・速度Lv1/10


【ブースト(最適化・黒帯)】

・効果Lv3/10

・消費Lv3/5

・熟練Lv3/5


【エナジーボール】

・威力Lv1/5

・消費Lv1/5

・熟練Lv1/5

・速度Lv1/5


【アポート】

・精度Lv10/10

・距離Lv6/10

・重量Lv10/10

・詠唱Lv1/1


【投擲】

・精度Lv1/3

・距離Lv1/3


【掴み】

・威力Lv1/3

・持続Lv1/3


【調教】

・熟練Lv1/6


【鑑定】

・見識Lv1/6


◇生産スキルツリー

【漁師】

・操船Lv1/20

・熟練Lv3/20

・漁具Lv3/20

・水泳Lv1/1


【採取】

・熟練Lv1/3

・眼力Lv1/3


【工作】

・熟練Lv2/6


【解体】

・熟練Lv1/3

・速度Lv1/3


◇装備アイテム

武器

【凡庸の大剣】

【鋭い黒鉄のレイピア】

装備

【革レザーシャツ】※補修中

【革レザーパンツ】※補修中

【軽兎のローブ】※補修中

【初心者用のローブ】※代用中

【初心者用の服(全身)】※代用中

【黒帯】

称号

【とある魔法使いの弟子・仮】


◇テイムモンスター

テイムネーム:ローヴォ

【リトルグレイウルフ】灰色狼(幼体):Lv5

人なつこい犬種の狼の子供。

魔物にしては珍しく、人と同じ物を食べ、同じ様な生活を営む。

群れというより社会に溶け込む能力を持っている。狩りが得意。

[噛みつき]

[引っ掻き]

[追跡]

[誘導]

[夜目]

[嗅覚]

※躾けるには【調教】スキルが必要。

ーーー



ついに転職しました。


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