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-177-幕間・三下さんの徹底抵抗(イジデモカウンター)その一

初めてのローレント以外の話しです。おはようございます!アクセス数がかなり増えててびびってます。


 グローイング・スキル・オンラインの第二陣プレイヤーとして参加した俺のプレイヤーネームは三下。

 何となく、一から初めて見ましょーってことでそんな名前にしてみた。

 正直ダサかったかもしれんが、キャラクターデリートする事の方がもっとダセェ。

 ダセェったらダセェ。

 それが俺のゲーム美学である。


「そんじゃま、スキルは何をとるかなー」


 割りかし人が多いテンバータウンには既に第一陣の有名プレイヤー達がそろっていた。

 双大剣とか言われているトモガラ。

 屈強な鍛冶屋と呼ばれているガストン。

 最前線攻略勢のケンドリック。

 既に薬師として軍を抜いているレイラに。

 巷で話題の上手い屋台を開くサイゼとレイラ。


「おい、あのアポートのこと知ってるか?」


「ああ、掲示板で言われてたチート野郎の事か?」


「すげーよ、魔法職の癖に剣を持ってPK達を返り討ちにまったんだって」


「まじかよ、やっべっぞそれ?」


 アポート?

 チート?

 魔法職なのに剣?


 ゲームのセオリーを覆したとんでもないプレイヤーが居るんだなあ。

 確かに、スキル取得して伸ばして行くこのゲームだったらそんな育て方もありだろう。

 自由な環境を謳ってるゲームはあるが、制限が合ったり、戦闘職も生産職も全部こなせたり。

 それぞれの幅が逆に狭くなってる本末転倒がゲームが多い中だ。


 グローイング・スキル・オンラインは全くゲーム情報を公開せず、プレイヤーに好き放題やらせてるって噂だ。

 上等じゃねェか……。

 そのアポートとか言う謎スキルを運良く獲得して、魔法職なのに剣を持つプレイヤーは、恐らく初心者かなにかだろう。


「ビギナーズラックってやつかぁ?」


 これで俺のキャラメイクの方針は決まった。

 他ゲーでは、今まで攻撃特化に育てて来たから、今回はタンクでもやろうかと思ってたけどな。

 魔法職なのに剣を持つ……ねぇ……。


 いいじゃんいいじゃんそういうのカッコイイじゃん。

 よし、俺は一見普通の片手剣の前衛職に見せて、その内実は防御オンリー。

 オーソドックスな片手剣プレイヤーに見せて実は防御全振りでしたプレイヤーになるぜ。

 そっちのプレイングの方が面白そうだからなあ。




 って事で、片手剣と小盾を狩って装備した。

 攻撃用のスキルを取っておこうかと思ったが、初志貫徹。

 先に防御スキルを取るぜ?


「はい、ご用件は?」


 さっそくギルドのねぇちゃんに片手剣と小盾の使い方を聞いて行く。


「修練場がございますから、そちらで初歩スキルのご指導を受けてください」


 教官っていうプレイヤーが居るのか?

 一応片手剣と小盾のスキルは獲得してるが、動き方は教わっとかないとな。


「偉いぞ。大体の奴が修練場を使わず命を落とす!」


 暑苦しい男が居た。

 苦手だぜぇ、こういう奴。


「君は何を教わりたい!」


「ぼうぎょ」


「よし、ならこの攻撃を受けてみろ!」


「ぐはっ!」


 痛ぇ!!!!

 ちくしょう、やりやがったな!?


 まさかNPCがいきなりぶん殴ってくるとは思わなかったぜ。


「ハハハッ! どうした! それではダメージを受けてしまうぞ!」


「もう一度だ」


「その意気良し!」


 再び教官が消えて、その拳が顔面に来る。

 動きは見えていた。

 これでも動体視力には自信がある。

 だが、身体が反応しなかった。


「ぐはっ!!!」


 再び俺は修練場の土に顔面をこすりつけていた。

 くそ、圧倒的にレベルが足りねぇのか?


「疑問を感じていると思うが、これでも私はチュートリアル専門でね。防御を選ぶのは素晴らしいが、攻撃できないと成長しないぞ! だからある程度相手を倒す事に慣れたプレイヤーにしか防御術を教えない様にしているのだ!」


「……ご高説どォも」


 ムカつくぜ。

 意地でも防御習ってやる。

 俺はそんな意志を込めてこの教官NPCを睨んだ。


「ほう、わりと良い根性してるみたいだな。いくぞ!」


「ぐあっ!」


 それでも、それでも俺は立ち上がって防御する。

 舐めやがって、最大の攻撃は防御とか言う奴に、最大の防御は防御に決まってんだろバーカって言ってやりてぇよ。


 そして殴られ続けて百回目だった。

 くそ、こいつの拳はいてぇ癖にHPは一ずつ減って行きやがる。


「どうした!」


「く、そ……おらッ!」


 ムカついたから教官が殴ってくる起動に小盾を振りかぶった。

 ――キンッという音がして、教官の拳が弾かれた。


「む!?」


「お?」


 なんだ、今の……?

 ただ防いだだけではなかった。

 大きく拳を弾いていた。


「ハハハ! 偶然にしては、なかなか面白いじゃないか。いいだろう、教えてやる。今のがブロッキングだ!」


 ブロッキングって、タイミング良くガードする事で相手の攻撃を弾いちまう奴か?


「魔法も物理も関係無いぞ! 盾によるブロッキングはその盾の大きさで成功率が変わる! 小盾を腐らせるなよ君!」


「上等だ! 小さくても大きくても関係ねェよ! 全部弾き返してやらァ!!」


 そして、俺はHPが一になるまでいたぶられ続けた。

 ちくしょう、こんなになるまでやりやがって……。

 転けたら死ぬんじゃねーか?


「中々いい反射神経と勘だったぞ。君は将来有望だ。だがまだ身体が出来ちゃいない」


「レベルを、上げろって事かよ……」


「違う、身体を鍛えて来い。目に見えないステータスは君の手助けになってくれる筈だ」


 そういって去って行く教官。

 初心者セットの体力回復ポーションをガブ飲みして、俺はさっきの言葉を考えた。

 まずは情報収集だ。


「すいませーん」


「あら、手ひどくやられちゃったのね?」


 ギルドのねぇちゃんの苦笑いは無視する。


「いいから身体を鍛える場所を教えてくれ」


「なら道場へ向かうと良いわよ? 私の知り合いもムキムキになったの」


「ありがとうございまーす」


 教えてもらった相手には、しっかり礼を持って返す。

 これが俺の美学。

 そして、ゲーム内の事は、出来るだけゲーム内で調べ上げる。

 これもまた、俺の美学だ。


「すいませーん」


「なんだ!? 入門か!?」


 道場へ行くとまた暑苦しい奴だった。

 うぜぇ。

 だが、身体を鍛えろの言葉に従って、何かを習う事にする。


「君は身体が細いな! ちゃんと確り食べてるか!?」


「関係ねェだろ」


「それだと最近荒い奴が入って来たからな! ちょっと待っていろ! 俺が君に丁度良いメニューを考えてやる! そうだな、まずは健康に良いこのメニューからだ!」


「いや、普通にスキルを」


「おーい! ちょっと八百屋のじいちゃん。こいつをそっちに混ぜくれないか!?」


「いいんじゃよー」


「いや、話を……」


 あれよあれよと言う間に、俺はじいちゃん達の格闘健康法みたいな運動に混ぜられた。

 ゆっくりとした動きで、身体の隅々まで動かして行く。

 これ、腰とかの関節が曲がっちまわない様にする奴だよな?

 不満溜まりまくりなんだが、何度話しても道場の師範みたいな奴は受け答えしてくれねぇ。

 って事はレベルが低いと強制的にこっちに混ぜられちまうんだな。


 とりあえず今日は道場クエスト終わらせて明日レベル上げしてまた来よう。

 そんな事を思った俺にインフォメーションメッセージが届いた。




[スキル・デリケートモーションの獲得条件を満たしました]




 なんじゃこりゃ?

 そしてその内容を見て、思わず俺はにやついちまった。

 良いスキルじゃねーかよ。




さんした「なんで健康ランドみてェなことしてんの俺」


しはん「レベル1はまず動きに慣れるべし!」


さんした「自然なチュートリアルはやめろよォ……わかるかボケ」





デリケートモーションはブーストとはまた違ったスキルですね。

まあ基本的にカウンターオンリーなんてプレイヤーは居ません。

チュートリアルとして道場を利用するプレイヤーもいませんので、隠されたスキルみたいになってます。

その実は単純に戦闘に慣れる為のスキルみたいなものです。

動きを補正してくれます。そんな効果です。

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