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お早うございます〜。
魔物達が進行し、そしてバリスタ、カタパルトでめちゃめちゃにされた所へ、プレイヤーが鋼鉄で作られた手押し車を押して行く。
すごく重そうだが、風魔法が後ろから追い風サポートしている様だった。
光魔法による補正もあいまって、かなりの速度で突っ込んで行く。
馬車の様なデザインだが、当然ながら馬は居ない。
前面にはトゲトゲが付いていてとても攻撃的なデザインだ。
客席みたいな所を削ってもっと軽くすれば良いんじゃないかと思ったが、この手押し戦車にはある秘密があった。
鋼鉄で守られた中に、闇属性魔法スキルを持つプレイヤーが居る。
ダークサークルを使うようだ。
ツクヨイの時同様、黒一色で塗りつぶされた戦車。
「詠唱待機! 合図を!」
「衝突まで大体あと十秒だ! 遅れんなよお前ら!」
「戦士で石工のイシマルに負けんじゃねー!」
「純粋な戦士極振り舐めんなあああ!! ハイブースト! ハイマッシブ! フルポテンシャル!」
戦車を押しているのは恐らく身体強化勢だろう。
パワーの桁が違う。
トモガラと同じ様に膂力に全てのスキルポイントをかけていたんだろうな。
「すぐに混乱が押し寄せるわよ! 前線組はそのままキープ!」
「おうよ! 強化勢に負けんなよ! 剣技スキルの強さ、見せてやるよ!」
「闘技大会じゃ日の目を見なかったからな!」
「軽装剣技スキル部隊だああ!! ヒャッハー!!」
長剣、片手剣の他にも様々な武器を持ったプレイヤーが駆け込んで行く。
ゾンビプレイヤーとは違って乱雑に好き放題動かない。
要所要所に作られた決戦ポイントに流れて行くようだ。
「空は、風魔法隊がんばっ!」
「もっと的確に指示しろやー!」
「うっさいわねー! こっちは第二防壁で疲れてんのよ!!」
エアリルが叫んでいた。
空に溜まった魔物は問題無さそうだ。
元々南のフィールドは空を飛ぶ厄介な奴らはいない訳だし。
二足歩行型の魔物に注意が必要だ。
全てがかち合い、闇魔法のブラックカーテンが戦車の全面に広がって行く。
集団運用はかなりの広範囲を埋め尽くし、やがて魔物達に恐慌が訪れる。
身体強化勢はそのままの勢いで雑魚達をひき殺した。
そこへ攻撃スキルメインの軽装兵士達が、驚くべき火力で斬り込んで行く。
「ゴギャアアアアアアア!!!!!」
「咆哮注意! 予兆を感じ取ったら盾隊の後ろに控えろ!」
「咆哮キャンセルできずに立ち止まった者を優先して引き返せ! 深入りするな!」
「火柱が!」
「火炎がくるぞ! 下がれ! 下がれえええええ!!!」
炎剛も甘くは無い。
手下モンスターを失った事で段階が上昇したのか、火炎放射と火球を無差別にはなってくる。
プレイヤーを優勢にするべく、順調に作られた戦線がいとも容易く崩壊する。
「ねばれ! 盾隊粘れ!」
「うああああ!! 押し切られる!! 加勢をっ」
「闇魔法はどうした!?」
「戦車が幾つか炎の餌食だ! やばい、中で蒸し焼きにされてる!」
「痛覚切って耐えろよ!」
「操作不可にされてるんだってよ!」
「根性見せろ!」
「無理だああああ! 地獄だぜこれは!!」
様々な状況がひしめき合う。
一部は打ち崩されて、一部は何とか保っている様な状況だ。
バリスタとカタパルトで炎剛を押さえ込もうにも、動きを察知して避けられてしまうようだ。
魔物の軍勢は巻き返しを図るべく、一番強いコンバットエイプを前線に戦術を組み立て始めた。
「やっかいよねぇ、コンバットエイプ」
戦場をどう立ち回るか考えていた時、レイラがそう呟きながら隣に並ぶ。
「野良で居る時も、他の魔物を集団で狩ってたぞ。ってかいたぶってたかな」
そんな返答をすると、顔を歪ませていた。
「AIはどうなってんのかしら」
「RIO社もついにそこまで来たってこったなァ」
「事故を起こして健全運営に切り替えたんじゃないの……」
「薬師さんよォ、まァそう頭を抱えんなって。RIO社のゲームはそこが一番面白い所だろォが?」
三下さんはケタケタと笑っていた。
事故が起こったシリーズって、確かRIO社の名前の元になったリアル・インフィニティだっけ?
詳しい話はよくわからんが、体感時間を約七倍近くに引き延ばした完全ダイブ型。
セカンドライフだと言われていたリアルスキンモードは、是非ともやってみたい物だ。
そんな半端なぁいスペックを作れるからこそ。
こうして、戦いの真似事を純粋に楽しめるんだろうな、俺も。
「危ないっ!」
壁の上に備えられたバリスタ、カタパルトを狙って、炎剛が火球を飛ばす。
溜モーションがやや少なかったので、大きさは小さい。
それでも一撃で壁を破壊できそうな威力を持ってそうだ。
「チッ」
三下さんが構えるが、彼の横を水弾がぶち抜いて行く。
「お?」
ドッパァンと水弾と火球がぶつかって弾けた。
火球によって水弾は蒸発するが、水弾も火球を消し切った様だった。
相殺したってことかな。
「ひゃ〜! やっと出番が来たって所か! それより十八豪! そのスキル超つえーな! 結婚してくれ」
「はいはい」
「多対一の戦い方がなってないな」
「おい、なんで俺の回復時間かかったくせにこいつらはすぐに回復してんだよ」
久利林、十八豪、一閃天、トモガラが姿を現した。
ついにスペシャルプレイヤー参戦だ。
「とりあえず貴方達は最前線まで一直線で行ってもらうわよ」
レイドボス攻略の為に待機を命じられていた彼等は、みんなそろって首を傾げた。
「どうやって?」
「こうするのですよー!」
十六夜の声が聞こえて来た。
どこからだ?
上空からである。
「ひええええ、ぶらっくぷれいやぁは高い所が苦手なんですぅ!」
「ウォン!」
ローヴォも居る。
ツクヨイに抱きつかれてすごく鬱陶しそうにしていた。
ヤンヤンは既に虫の息?
ともあれ、姿を現したのは飛行船だった。
……いつの間に作ったんだ?
多分俺以外の全員が思っている事だろう。
次回、最強、最凶、厄介で我の強い奴らがレイドボス炎剛に降り注ぎます。(物理)
ここまでお読み頂けまして実にありがとうございます。
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本当にありがとうございます。




