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正月ですね〜。


 徐々にプレイヤーが集まってくる。

 生産プレイヤーは攻撃よりも補給に回るそうだ。

 数の多い祭り陣を少しでも上手く機能させるために支援に回る。

 これぞ生産プレイヤーの鏡である。


「無視したらいいのに」


「セレク、そうも行かないの。エドワルドさんからは町一つ消し飛ばせる程の敵だと聞いているのよ」


「そうね、一次生産職が原産地を潰されちゃ、元も子もないわよね」


「セレク……」


 昨日から有志で集まったプレイヤーはこれだけ頑張っていると言うのに。

 そういう不満を抱える生産職も多かった。


「落ち着けよセレク」


「うん落ち着く」


 従順過ぎる。

 レイラが額を抑えて溜息をついていた。

 さり気なく腕を抱いてくるセレクを躱すと、とりあえず第一陣に集まったプレイヤーを見てみる。


「やっほー! 昨日はログインできなくてごめんね! そのかわり専守防衛は任せて!」


「僕はちゃんとお堀を手伝ったよ」


「……支援頑張る」


 エアリル、ブラウ、アルジャーノの三人が来た。

 そう言えば堀を製作していたメンバーにブラウっぽいのを見かけた気がする。

 影が薄くなってないか、こいつ。


「貴方達は出来るだけ後方に回ってほしいのだけれど」


「なんでよ?」


 レイラの言葉に、エアリルが少し不満げにした。

 だが、次の言葉で納得する。


「ここは半ば捨てるのよ。お祭りプレイヤーは精々レイドボスのHPを削る役目か、デコイになってもらうわ」


「うわ、なんかイライラしていないかい?」


 ブラウの言葉に頷いておく。

 めっちゃイライラしてるじゃんレイラ。


「主力陣はこっちに大勢そろってるのよ、失う訳にはいかないわ」


「なるほどね、なら遊撃に回って手頃な範囲で削ったら引き返すわよ」


「そうして頂戴」


 ブラウ達三人は、そろって遊撃に回る様だ。


「ローレントはどうするんだい?」


「うーん」


 一人でも別に良い。

 遊撃も最高だ。

 ただ、後ろに下がるのは出来るだけ最後が良い。


「遊撃としんがりで」


「ダメよ」


「え?」


 セレクが急に口を出す。

 皆の視線がそっちに向く。


「え、あ、いや。その装備新しいから、あんまり傷つけないでよ! もう!」


 それだけ言って、セレクはテンバータウンの方へと戻って行ってしまった。

 なんというか、微妙な空気が流れる。


「どうするの?」


「特攻としんがりで」


「危なくなってるわよ!」


 流石エアリル。

 つっこんでくれた。


 ともあれ、経験値はめちゃめちゃ欲しい。

 ストレージにも武具は充実させてあるから、レイドボスのHPをいっぱい削りたい。

 そんな思いなのだ。

 新しいスキルと言うか、そろそろアスポートがいい具合になって来たんじゃないか?

 目視20メートル重量200キロくらいまで転送できるぞ!

 精度はまあ、そこそこって所だ。


「なら私も一緒に特攻に」


「あ、ちょっと! ならわたしも特攻!!」


「ダメよツクヨイ。貴方は本陣防衛の要なんだから? さーさ、そろそろ始まる時間が近付いて来たから戻る準備しましょうね」


「むぐぐぐもがー!」


 レイラにほっぺたをモニモニされながら、ツクヨイは強引に連れ去られて行った。

 まあ、ツクヨイのスキルでどうやって特攻を仕掛けると言うのだろうか。

 疑問が尽きないが、放っておきましょう。

 十六夜だが、櫓から見てなくていいのだろうか?


「あれ十六夜? 見張りは変わってもらったの?」


「うーん、それが祭りプレイヤーで高い所が好きな人がいらっしゃいまして……」


 久々に、困った顔の十六夜を見た。

 彼女は俺らの視線を物見櫓に誘導する。

 上にはプレイヤーが所狭しと上っていた。


「おらー! 狭い!!」


「俺も物見櫓に上らせろよ!!」


「順番!! 順番だろー!!」


「落ちるー!!!」


 十人くらいひしめき合っている。

 それも全部幼い顔つきした高校生プレイヤーかな?

 なんちゃらは高い所が好きだというが、平和なもん――。




 ゴウッ!!!!!

 視界が真っ赤に染まり、物見櫓が炎に包まれた。


「何が起きたのよ!?」


 皆が声を失っている中で、その雄叫びが木霊する。


「ゴギャアアアアア!!!!!!」


 そして森から、猿の軍勢がどっと押し寄せて来た。

 今の火柱は何なんだ?

 天まで届くビームの様な炎だった。


「ふふ、ざまあですね」


「んなこと言ってる場合じゃないわよ!!」


 エアリルが慌てて杖を取り出して行く。

 ブラウも剣を身につけて、アルジャーノが支援魔法スキルを掛ける。


「パーティは組んでおくかい?」


 この際だからローヴォと俺と十六夜で彼等とパーティを組んでおいた。

 ノーチェは今回はお預けだ。

 俺へのパーティ配分経験値がノーチェにも分割される形になるのか?

 それならまだ良いな。


「……それよりも火柱の正体」


「あれがレイドボスなのか?」


「……わからない」


 うん?

 そんな事を言いながら何故俺の馬に乗ろうとする?


「ダメですよアルジャーノさん、そこは私の席なんですから」


「……誰が決めたの」


 誰もきめてねーよ。

 勝手に決めつけんなよ。


「アルジャーノはこっち!」


「……あーれー」


 おふざけに痺れを切らしたエアリルが、アルジャーノを引っ張って行ってしまった。

 戦闘プレイヤー勢が、今猿公軍団とかち合った。

 すまないねーと謝るブラウを見送ると、後ろに既に十六夜が騎乗した状態で、俺もノーチェに乗った。


「どうしますか?」


「出来るだけ強いのを倒す」


「ファイトモンキーにも殺されているプレイヤーが居ますね。まあゴリラは無理でしょうね」


 そう言う事だ。

 ノーチェを駆け出した。

 隣をローヴォが追走する。


「お前ら! 勝手に前に出るなー!」


「仕切ってんじゃねー!」


「うおおおお俺の剣をくらえーーー!!」


 さっきの火柱見てなかったのか。

 戦争と言うより混戦紛争の泥試合。

 乱闘の延長線上でしかない感じだ。


「まだレイドボスは見えませんね?」


「これからだろ」


 ファイトモンキーを引き連れたバトルゴリラを蹴散らして行く。

 何だろう、たまに足を引きずったゴリラの個体が有る。

 このまま行くと、出て来るのはコンバットエイプなのだが、果たしてこのプレイヤーの中にコンバットエイプを倒せる者が何人居るだろうか。


「うわあああ!!!!」


「炎が来たぞ!!!!」


 攻撃の途中で、森の後方から大きな炎が戦場にぶち抜かれる。

 プレイヤー陣はどうしようもなく蒸発していく。


「森が……っ!!」


 十六夜が燃えて穿たれた森の様子を見てそんな言葉を漏らした。

 最中に掛かる圧力が増す。

 まあこの森を狩場として使って来た十六夜だ。

 台無しにされるのが癪に障るのだろう。

 それは俺も同じだった。


「話が分かる連中は勝手に纏まりつつあるみたいだな、やられそうな所優先で戦況の切り崩しに入る」


 ケガ人にポーションをぶちまけながら、バトルゴリラを優先して狩る。

 獲物は鬼魔の長剣である。

 今回、戦況が長引く事を想定し、MPを温存した。


「っていうか、他の連中は?」


 他の連中とは、シード権を獲得していたスペシャルプレイヤー達である。

 あの連中が意気揚揚としてこの戦場に出て来ない訳が無い。

 トモガラも、アレから戻って来ないからな


「森の中に潜っているのはトモガラさんだけですね。他はわかりません。久利林さんと一閃天さんも森の中でしょうか? 十八豪さんはレイラさんに言われて二層目の堀で待機しています」


 温存作戦に使っているって訳ね。

 一閃天も久利林も、どこに行ったのやら。

 ログインはしているみたいだからなあ。


「大きい猿だぞ!!!」


「おい、なんか二足歩行してねえか?」


「コンバットエイプって何だ!?」


 初見のプレイヤー達の中でも、運良く生き残っている者達は、コンバットエイプを見ておののく。

 ドラミングするバトルゴリラはまだ動物モンスターのようだが、このコンバットエイプは技を使う。

 そして、集団戦での連携も得意とする。


「うわあああ!!」


「お、おい、首の骨折られてるぞ!?」


「ローレントだあああ!!」


「ゴリラ型、ローレントだああああ!!」


 顔、覚えたからな。

 あ、前身の関節外されて死に戻りして行った。

 っていうかコンバットエイプ全体的に強くなってないか!?


 平均レベルが上がっていた。

 そして炎牙獣の眷属とかそんな感じの補正を受けている様だった。


「ん? ローレントさん。素手で立ち向かってる人が居ますよ?」


「え、ホントだ」


 道着を身につけたプレイヤーは、身に覚えのある装備を身につけていた。

 ただし、ゲームの世界ではなく現実世界のだ。









まだまだ前哨戦といったところでしょうか。

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