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今年から連載を始めたこちらを読んで頂いて誠にありがとうございました。来年もヨロシクお願い致します。


 テージシティからの帰り道で、とりあえず試してみた新しいスキル。

 何と言うか、倍率が上がっている?

 よくわからんが、スキル使用時のMP消費が少なくなっている?

 そんな気がした。


 魔法攻撃力上昇倍率が上がって。

 そして武器の攻撃力にプラスして相乗効果が乗っかる。

 パッシブとしてMPが増えて、更に道具にも魔法相乗効果がって書かれてあるが、これは一体どういう事なんだろうか?


 取り合えず全て身に付けた状態で魔樫の六尺棒を鑑定してみた。




【魔樫の六尺棒】製作者:ローレント

魔樫で作られたただの六尺棒。

魔力を込めると粘りと強度が増す。

・攻撃99

・耐久Lv9

・耐久100/100




 クエッションマークが全て数字で埋まった結果。

 最高値の99を出す事に成功したのである。

 これは俺の木工スキルレベルが上がれば上がる程、とんでもない武器が見えてくるんじゃなかろうか?

 やるしかない、と確信した。


 材料もまだまだあるしな。

 魔樫の木が南の霊峰で取れる事を知った。

 それを知った今、テージシティで狩り続けるのは少しバッド。


 でも、引き返す理由は関係無いのである。

 何故引き返すのか?


 それは、トイレへ行っていた途中に起こった出来事だった。

 戻ってログインしなおすと、大量のメッセージが入っていた。

 今ここで読み上げるのは面倒だが、その前に、インフォメーションメッセージも。




[私の名前はエドワルド。テンバータウンの町長という役職に就いている。みんな聞いてくれ。南の霊峰にてレイドボスの炎剛の癇癪を観測した。これは知っている。百年以上も昔、この地を大きく破壊し揺るがせた怒り狂う炎獅子。怒号と共に、奴の眷属が森を下ってくるのは約一日後。山を下る猿達の軍勢を退けなければ資源が失われるどころか、この町まで消えかねない。力を貸してくれプレイヤー達。緊急で王都に騎士団の派遣も要請しているが、どちらにしろ見返りの報償で南の資源を全て持って行かれるだろう。彼等が来るのは三日後、早く、早く奴らを何とかしてくれ頼む]




 という何やら訝しげなメッセージが入っていたからだった。

 当然、エドワルドと師弟関係を結ぶレイラは全ての知り合いに緊急召集を行ったらしい。

 無論俺にもメッセージは届いている。


『ローレントどこにいるの!? 最近見ないけど、緊急事態よ早く戻って来て頂戴!』


『テージシティで遊んでた』


『ちょっと、遠いわね! どれくらいかかるの!?』


『すぐ来れると思う』


 レイラはまだ知らない。

 俺が馬の契約モンスターを持った事をな。


 ノーチェを駆る。

 テージシティからノークタウンまでの道のりはデンジャーシープという目の赤い危険な羊のモンスターだった。

 ラム肉が欲しかったのだが、敢え無く先を急ぐ事にした。


『戦況報告! 南の森の生態系が大きくずれ込んで、オーク、コボルト達が逃げる様に森の入り口まで来ているわ。土建屋チームと建築プレイヤー勢はそれぞれの町にバリケードを作っている途中で、残っていた足の速いプレイヤー陣が南東、南西の方へ魔物の同行を窺いに出ている状況よ!』


 ノークタウンについた辺りでメッセージが届いた。

 正直話を聞く限り漁師プレイヤーが何か出来るとは思わない。

 単純に兵士として、戦力として呼ばれているのだろう。


 ただ思う。

 コンバットエイプと一対一でやり合う事は出来ても。

 多対一ではそこそこ苦戦すると思う。

 モンスター相手になるとトモガラみたいな超人ビルディングこそ至高。

 俺も最近そう思った。


 テージシティの裏社会が楽しいのも、人間相手だからかもしれない。

 いつだかのプレイヤーキラー、来いよ。

 もう一回来てみせろよ。


「休憩は無しだ、もうひと頑張りだぞ」


 休み無く走り続けるノーチェを撫でる。

 うむ、まだまだ行けそうだな。

 まだ余裕そうなローヴォが並走してペースキープをしてくれている。

 武器は軽い六尺棒以外しまっている。

 これなら何とか昼過ぎまでに辿り着きそうだ。


 ちなみに、コーサー達には軍資金を与えてテージシティに残して来た。

 コーサーは無理が利くが、下の二人には利かないと説明した上で。




「待たせた」


「遅いわよ!!」


「いや、テージシティからだったら、かなり早い到着ですってお姉様」


 集合場所はテンバータウンの公園。

 エドワルドに代わり、レイラも来るレイドボスの為の準備に奔走していた。


「馬? いつゲットしたのよ?」


「恵んでもらった物ですよねー? べー!」


 ツクヨイが舌を出しながら顔を顰めていた。

 何だか扱いが辛辣だな。


「レイラ、馬よりも先にローレントを最前線にじゃないの?」


「そうだったわ」


 恐る恐るノーチェを撫でようとするレイラ。

 ダース単位で中身の詰まったポーション箱を抱えたセレクがレイラを窘める。

 ログインしている生産職はみんな手を組んでいる。


「残念ながらこんな大事なイベントだと言うのにケンドリック陣営からは一人も応援が来ないのよ。今は猫の手も借りたいくらい人手不足ね」


 理由は、炎剛と呼ばれるレイドボスがどのくらいの強さなのかわからないから。


「こんな事なら、エリアボスを倒してすぐに湿地帯の攻略に当たれば良かったわよ、ってかそのクエストが第一拠点のホームモニュメントから受けれるって知ってる人は少ないのよね」


 レイラはそう嘆いている。


「その割にノークタウンからは人が入って来ているけど?」


「それはミーハープレイヤー達よ。祭りに便乗してるようなものでしょ?」


 ケンドリック陣営は、南の資源が壊し尽くされればその分自分の陣地に人が集まるとでも考えているのだろうか。

 そうだとすれば、極悪だな。

 縦ロールに取り次いでもらって懲らしめてやらなければならない。


「そうだ、縦ロール」


「ん?」


「縦ロールがどうしたんですかー!!」


「ツクヨイうるさい」


「ぇぅぇぅ」


 しょんぼりするツクヨイをヤンヤンが慰めている。

 ローヴォとローチェも傍に寄っているし、これじゃ俺が悪者じゃないか?

 しょんぼり。


 さて、冗談はさておいてだな。


「ケンドリックの妹なら派遣をよこせるんじゃないか?」


「ニシトモでも無理だったのよ?」


「試しに送ってみるね、メッセージ」


 あ、ヤバイ。

 フレンド登録してなかった。

 すると、公園の向こう側から声が響いて来た。


「あらあら、妾の力が必要でして?」


「げっ」


 くすくすと笑いながら、黒いローブを身に纏ったプレイヤーをゾロゾロと引き連れている。

 正直悪趣味だなと思う。

 ツクヨイは言葉と表情に思いっきり内情が現れている。


「丁度良い、フレンド登録してなかったな」


「あらそうですこと? まあ妾に掛かればローレント様が困っていたとして、直に駆けつける事ができますわ? だって心から通じ合っているんですものね」


「じゃあ、フレンドはいいか」


「それとこれとは違いますわ」


 キリッとした表情で、フレンド登録が即行送られて来た。

 とりあえず目力が強い、申請しておこう。


「あーはいはい。とりあえずアンジェリックさんだっけ? 来てくれてありがとう。それでどういった支援をしてくれるのかしら?」


「兄様には内緒で妾の私兵を連れて来ましたの、ローレント様のためにね」


「えっと、うん、ありがとう」


「まあまあ殿方は口がうまいのですね」


「いや、上手いこと何も言ってないんですけど」


 ツクヨイ、ボソッと言ってるの聞こえてるから。

 俺に聞こえてたらアンジェリックにも聞こえている筈なのだが、相変わらず身体をくねくねさせていた。

 うーんキャラが濃い。


「なるほど、戦闘私兵?」


「戦闘なんか好き好んでやる奴が巨万といましてよ」


「だったら?」


「生産私兵三十人。町の建築に携わるプレイヤー達ですわ」


「やるじゃないあなた」


「貴方も本質がわかっている口ですのね?」


 勝手に話が進んで行ってしまった。

 何だろう、アンジェリックとレイラの間によくわからない絆が出来ているような気がした。


「そのお兄様って人は、町の運営をしているの?」


「ふふふ、それは秘密ですわ。まあお察しの通りとだけ」


 なるほど、ケンドリック陣営にもこういう人間達はいるのだな。

 そしてレイラから俺の仕事を告げられた。


 現在、資材の運搬に手間取っている。

 倒せばいいじゃん派のプレイヤーが大勢居るという訳で。

 第一拠点を作った人や、彼女達生産チームのフォロワーが何往復もピストンしてバリケード用の資材を搬入していると言う訳だ。


「エドワルドさんから借り受けた倉庫に重たい素材は全ておかせてもらってる訳。小道具、木材系は皆で手分けしてるけど、流石に炎ってつく名前のレイドボスでしょ? 出来る限り石が良いのよね」


 俺の役目はストレージからアポートにて資材の大量運搬だった。

 まあ任されようと思う。


「石工組は現地にイシマル主導で集まっているわ。倉庫に担ぎ入れてくれたのは石工NPCの皆さんよ」


「なに、町長のお弟子さんならお易い御用さ!」


 かなりの信頼を勝ち得ているよう見えるレイラ。

 自治を任される位、彼女の信用度は高いんだろうな。


「信用度いくつ?」


「なによいきなりそんな事聞いて、開拓組なら平均して200は越えているわよ」


「マジか」


「私は564だけど」


 思ったよりヤバかった。

 信用度、俺80くらいしか無いんだけど?


「クエスト評価が変わったりNPCの受け答えが変わるからかなり重要よ?」


「……クエスト報酬は信用度で」


「……そうね、貴方にしか出来ない仕事だから弾むわよ? ちなみに今いくつ?」


 俺は無言のままノーチェを繰り出した。

 はいよーノーチェ、飛ばしてくれ!


 ローヴォもノーチェもやや呆れた様に溜息をつく。

 少しのタイムラグがあって、南門からバリケードの場所まで駆け出すのだった。







前々から予定してあった災害イベントです。

レイドボスの強襲という形ですね。


ちなみにエリアボスの解放が終わったらレイドボスのクエストを受けれる様になります。

東の川なんか、解放終わってんのに皆交易とかノークタウンのテイムモンスターとかあと闘技大会ですっかり忘れ去られてそうですね。


そのタイミングで、って事なんですがね!

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