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本日更新十一回目です!


「オルトウィル・レジテーラと申します」


 ニシトモが何故か過去形だった理由が判明した。

 領主館の敷居をくぐり、そのまま調度品によって飾り付けられた誇り一つない部屋に通された。

 テーブルを挟んでソファが二つ。

 ソファもまた、かなり上質な肌触りがして、持って帰りたくなる代物だ。


「この度は父の形見を取り戻し頂き誠にありがとうございます」


 青年が頭を下げた。

 テーブルの上には、盗賊団のアジトにあった剣と盾が置かれている。

 この武具の持ち主は、レジテーラ家の元当主。

 そして持ち主はとうの昔にこの世を去っていた。


「南の産業資源が復活していると聞いて、父が自ら確認しに行ったのが、最後となりました」


 俺が貰った魔樫の丸太も、ツクヨイの光蘚も。

 彼が言うには南の霊峰にてとれた代物だと言う。

 そんなの、見た事無いんだけどね俺。


「本当に……本当に……、父上,父上ぇ!!」


「オルト様!!!」


 武具を見て口を詰まらせ涙を流すオルトウィル。

 慌てて駆け寄る執事と侍女のNPC。

 隣を見ると、ツクヨイがもらい泣きしていた。


「暗黙の了解があるのに、こうして回収で来ただけでも奇跡です。ありがとうございますニシトモさん」


「いえいえ、私はなにも」


 といって俺に目配せするニシトモ。

 それに反応して俺を見たオルトウィル。


「最近都市で噂されていた盗賊団を倒したのは、貴方だと聞いています。お名前をお窺いしても良いですか?」


「ローレントです」


「ローレントさんですか、この度は本当にありがとうございます」


 そして次はツクヨイを見る。


「ツクヨイでずぅ、ぇぅぇぅ……」


「もらい泣きさせてしまい申し訳ない。ツクヨイさん」


 そして、オルトウィルは武具を執事に言って下げさせる。

 改めて、テーブルには紅茶と茶菓子が持って来られた。


「僕からささやかなお礼なのですが、幾分こういう出来事は初めてな物なので、どういった物をお渡しすれば良いのやら」


「既に貴重な物資を頂いておりますので」


 ニシトモが遠回しに断る。

 だが、オルトウィルは納得してなさそうだった。

 褒美に悩んでいると言うならば、単純に今一番知りたい情報を聞いておこうかな。

 知識は何事にも勝る財産だっつってね。


「私から、知り合いがミスリルについて後一歩と言う所まで来ているのですが、その情報、もしくは腕の良い錬金術師がいらっしゃればご紹介して頂きたい」


 ニシトモに目を向ける。

 ガストンから話は聞いているようだな。

 彼は本当に何も受け取らないつもりらしい。

 でもただ聞くだけならば容認してくれている様だった。


「え、ここにも錬金術師居ますけどっ!?」


 こちとら真剣に聞いてるんだ。

 ツクヨイの突っ込みは流しておく。


「魔法銀ですか? ちょっと待っていてください。セバスチャン!」


「ハッ、ただいま取って参ります」


 オルトは執事に何やら指示し、一度部屋から出て行った執事はすぐに戻ってくる。

 その手には布に包まれた何かを持って。


「申し訳ない。本来ならば腕の立つ錬金術師を派遣したい所なのですが、あいにく僕の知る人物の中でそれを知ってそうな人物がここずっとどこかへ出かけている様なのです」


 申し訳無さそうにそう言ったオルトウィルは、布を開いて行く。

 中には小さなナイフがあった。

 刃も柄も、全て銀で作られたナイフだった。


「生前の父は武具集めが趣味でした。これは私が誕生日に護身用に頂いた邪を祓うミスリルのナイフです」


「綺麗なナイフです! 本当にミスリルなんでしょうか?」


「鑑定してみろ」


 馬鹿者め、というか口調が失礼過ぎるだろう。

 鑑定したツクヨイは、「ぴっ」と驚いた声を上げていた。




【破邪のミスリルナイフ】製作者:???

魔力を宿す銀鉱石。ミスリルで作られたナイフ。

持っているだけで全ての異常状態を無効化する。




 とんでもないナイフでした。

 所有者ではなく製作者の名持ちナイフ。

 その製作者は誰だかわからない。

 かなりの技物であると同時にレアなアイテムだと言う事が想像つく。


「私もミスリルに詳しい訳ではなく、申し訳ありません。ですがこれを調べれば、秘密が解けるかもしれません」


「オルト様!!」


 思わず執事が声を張り上げていた。


「良いんですセバス。私には父の形見の武具があります」


 流石にこれは受け取れないよな。

 ニシトモも首を横に振っているし、諦めよう。


「流石に受け取れません」


「……何故ですか」


 そんなに受け取ってほしいのか?

 なんだ、こいつの何がそんなに掻き立てるのか?

 もしかして強運の瞳のせいか?

 それが、このミスリルナイフを受け取れと言うのか?


「ツクヨイ、俺の目、光ってない?」


「は? え? 別に光ってませんけど」


 なるほどな。

 今のはギャグだ。


 さて、話を戻す。

 結果的にミスリルナイフは受け取れないが、男爵家の力を使ってセバスの方からミスリルを取り寄せて送ってくれる手筈になった。

 都市の人材をテンバーへ派遣するのはセバスとしても無理な相談で。

 受け取ったミスリルに関しては、ニシトモ経由でガストンの元へ行く。


 とりあえずこんな所かな。

 お偉いさんとご縁が出来た。

 それだけでも重要な人脈資源だ。




 さて、ニシトモとツクヨイは帰って行った。

 俺は宿屋を借りているので、せっかくだからテージシティでしばらく過ごす事に。

 とりあえず再びレジテーラ男爵家の元へ向かう。


 門番に停められる。

 とりあえず話がしたいと告げる。

 数刻後、執事のセバスチャンが姿を現した。


「先ほどの件、お断り頂きありがとうございました」


 セバスは改めて礼をする。

 ちなみに、中に入れては貰えなかった。

 全然ご縁出来てない。

 それもこれも全てこの執事が警戒していたからだろう。


「中には入れてくれないのか?」


「申し訳ございません。ご理解頂けていると思いますが、当主様は心労がたたり休んでおられます故」


 鉄柵を挟んで行われる会話。

 何とも不思議な距離感だ。


「それで、ご用件は?」


 さっさと帰ってほしそうな物の言い草。

 そういう雰囲気をびしばし感じる。

 どちらにせよ、入れてくれないなら大人しく去るのみだ。


 貴族の館に入るのも何か条件が居るのだろう。

 今回は特殊条件だったとか?

 まあ、正攻法でもう来る事も無い。


「復讐するなら、墓は最低二つ用意しておけ」


「な……」


 今までそう言う目はいくつも見て来た。

 そして向けられて来た。

 言葉は楔、NPCに効くかわからんが、どうとでも受け取れば良い。


「お待ちください」


 踵を返した俺は、さっそくセバスに呼び止められるのである。









ローレント「本当は欲しいけど空気を読んでミスリルナイフは要りません!!」(目、ピカァッーー!)


オルトウィル「いいんですいいんです受け取ってください!!」(怖えええええええ!!)







ってか、主人公思いっきり怪しい奴とかしてますね。

そりゃ敷居跨げない筈だ。

信用度は一応86くらいあるんですけどねえ。

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