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本日更新三回目です。


「馬を購入しに来た」


「あら、奇遇ですわね? 妾も馬車を引かせる馬を見に来たんでしてよ? って今縦ロールって呼びませんでしたこと?」


「言ってない言ってない」


 縦ロールであるアンジェリックは、後ろから頭をへこへこさせた商人NPCを引き連れていた。

 何とも、ありがちな光景だろうか。

 お嬢様風プレイヤーとそれに対する商人の態度。

 ひょっとしてお金持ち?


「それで、どれに決めたんでしてよ?」


「お、おう。実は決めかねてる」


 喋りかける前に、その口調を何とかしろよ。

 鬱陶しくてたまらん。


「丁度良い、なら妾が見立ててさしあげてございますよ?」


「いや、今日持ち合わせてないから帰る所だよもう」


 未だにケンドリック陣営とは相成れない空気が続いている。

 事実、闘技大会ではガンストにハメ殺されそうになってた訳だ。

 ガンスト程度があれだけの人を動かせるわけない。

 裏で誰かが糸を引いているのが見え見えだ。


 まず、依頼した奴が金払ったって宣っていたからな。

 どいつもこいつも馬鹿ばっかりで、俺じゃなかったら嫌になるさ。


「じゃーな」


「ちょっとお待ちなさい」


「やだよ、縦ロール。言葉遣いもなんかやだし、とりあえず嫌だ」


「ガーン……!!!」


 ノークタウンの西の森にある彼等のプレイヤーズエリア。

 まあまだまだその先にもマップが広がっていそうだが、大量の毒蛇相手にしばらく開拓されないだろう。

 他にも価値を見出した事だし用無しだ。

 それではこれからはまた再び敵同士、と言う訳で納得してくれたら良い。


「う、うら若き乙女に向かってその言い草……。しかも妾に向かって縦ロール……。なんとまあ不躾な……。ちゃんと教育を受けていますのかしら……? でも、ちょっとキュンと来てしまいました、なにかしらこの胸の高鳴り」


 は?


「ちょっと待ちなさい、妾が買って差し上げましてよ?」


 事情が変わった。

 踵を返した足を止めると、アンジェリックが俺に畳み掛ける様に喋りかける。


「元々馬車を引く馬と人は持っていますの、行商プレイヤーの方から頂いた物がね。ただ妾の好みにあわない模様ですから、改めて白い馬を買いにきたんでしてよ? でも残念白馬なんてどこにもおりませんのね」


「あの、血統書付きのでしたら向こうに……」


「お黙りなさい。誰が口を開いていいと言いました?」


「すいませんすいません!」


 へこへこしてた商会の人。

 もしかしてケンドリック陣営を担当している商人か?

 よくよく見れば、顔も老けて、髪も薄く、すごく疲労してる。


 こいつらの相手疲れるんだろうな?

 だってキャラ濃いし。


「達人は常識破りなのが世の常。ローレント様もそのようなアグレッシブさが際立っておりましてよ? ですから妾が買って差し上げますわ?」


「……条件は?」


 一応、聞いておく。

 後から無理難題を押し付けられても困るからな。


「いえ、特にありませんわ。ただここから拠点までの足が欲しかったものですから……、ローレント様乗せて行ってくださる?」


「オッケーオッケー!」


 実は気になっている馬が居た。

 契約魔法を使ってからずっとこっちに意識を向けている馬。

 警戒して近付かないのか?

 いや、俺を値踏みしている様な視線がずっとある。


 でも、そいつがいる場所が問題なんだよな。

 名馬コーナーで大事に扱われている。

 言わばブランド馬とも言う。

 絶対高い。

 食べてる餌も専用っぽいし……。


「ブルルッ」


 一瞬目が合った。

 俺を買えと、訴えている様だった。


「あの黒い馬を頼む!」


「……あら、実にお似合いの黒馬ですことね? そこの人、アレはおいくらかしら?」


「ええと、確か五百七十万グロウですね。でも、余りお勧めできません。あの馬は我々飼育員でも手を焼いている馬なのです」


 そんな飼育員の説明に、アンジェリックは上品に扇子で口元を隠すと鼻を鳴らす。


「ふん。まあ見てなさい。その様な事は、あの殿方の前ではまるで意味の無い事でしてよ?」


 おい、そこの黒い馬買ってくれるってよ!

 この縦ロールのお嬢ちゃんがね。

 ってかむしろ、縦ロールって言ってごめんなさい。

 心の中で謝っておこう。




[このブラックホースと契約結びますか?]

[yes]

[商会NPCから購入し、名前を付けてください]




 どうやら購入しなければいけないようだ。

 所有権はまだ向こうにあると言う事ね。


「レタツカ! 融通を利かせなさい」


「アンジェリック様、流石に名馬は無理でございます。ブラックホースはホワイトホースに並んで貴重な馬でございます故……」


「貴方が伸し上がったのは誰のお陰だこと?」


「それはケンドリック様とアンジェリック様方が色々便宜をはかってくれました故……」


「五百丁度になさい。請求先はお兄様につけておいてくれるかしら?」


「それくらいなら、お任せください」


 媚び諂いながら、レタツカと呼ばれる商人はブリーダーに言う。


「私から取りはからっておきます。黒馬をそこの殿方に譲って差し上げてください」


「レタツカさんがそれでいいのなら……」


 ややブリーダー側もこの無理矢理じみた値下げ交渉を訝しげに思っている様だった。

 っていうか権力なのか?

 アンジェリック、恐ろしい奴。

 でも俺はただプレゼントされただけだから、関係無いもんねー。

 それでしらを切り通せば良いや。


「双方ご納得なら了解しました。では、連れて来ますね」


 血統の高い馬コーナー。

 名馬コーナーへと向かったブリーダーが、手綱に繋がれた黒馬を引き連れてくる。

 こちらの敷地へ入った黒馬は、首を大きく振って二本立ちすると、俺の方まで一直線に突進してきた。


「危ない!!」


 それがこの馬の全力か?

 中々速い突進だな。

 人を乗せた状態でもそのスピードを保てるならば名馬だ。


「よしよし」


 黒馬は俺を試しているかの如く突進。

 そして股の下からすくい上げる様に頭突き。

 軌道から楽々予想ができるので、手を構えて股間をガード。

 そのまま突き上げられる勢いで俺も飛び上がって馬の背中に乗った。


「ブルルッ!」


 撫でてやる。

 毛並みも上質で、漆黒の鬣はサラサラだった。

 乗ってからも更に気に入った!


「だ、大丈夫ですか?」


 ブリーダーが顔を真っ青にして駆け寄ってくる。

 どうやら彼女の目には派手にぶっ飛ばされたかの様に見えたようだ。


「大丈夫です」


「すごいですね、この子が自分から人を乗せに行くなんて見た事無いです。今まで振り落とされる人は大勢見て来ましたが」


 なるほど、あの動きは早く背中に乗れと言う意志だったのか。

 わかり辛い。

 攻撃して試しているのかと思った。


「ね? 理解したかしら?」


 そして何故お前がドヤ顔しているんだ縦ロール。

 まあ買ってもらった身分で何も言えないけど。









縦ロール来ました。

とりあえず皆さん、聖なる夜をお楽しみください。

私は予約投稿を済ませたら、夢の世界でイチャイチャしてきます。

枕の下には既にいち○100%の単行本を仕込んでいますので抜かりはありませんからね。



そう言えば、いつの間にやら2万5千ポイントを越えていました。

皆様の応援が力に変わってここまできました。

ブクマ、評価、本当にありがとうございますむにゃむにゃ



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