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 一度町へ戻る。

 いつもの道具屋へ向かって適当に便利スキルをあさる。


 魚を一網打尽にするにはどうする。

 釣り竿、網、仕掛けだ。

 町で話しを聞く所によるとフィッシャーガーが川に巣くってからというもの。

 誰も手出しが出来ずに生態系は狂ってしまったとか。

 桟橋の朽ち果てた状況を見れば自ずとわかる。


 サイゼの店に魚料理が並ぶ日を想像しながら、今からスキルを選びましょう。

 漁師と聞くと、昔爺さんと外海そとめに伊勢海老を取りに行った時を思い出す。

 内海うちみに比べてうねりが一メートルくらい高く感じた。

 それで小さな船外機を使って網を引くもんだから、いつ転覆してもおかしくない状況だった。

 生きてることが奇跡だと思える。


「漁師はいないんですか、この町」


「もう随分漁に出てる人は見てないな、みんな畑ばっかりよ」


 すっかり顔なじみとなった道具屋のおっちゃんが答えてくれる。

 そういうスキルは無いのか。

 だったら手作業で色々作るのみなんだが……。


「釣り竿くらいだったら工作で作れるさ」


「なら買います」


「毎度」


 ってことで【工作】スキルを購入した。

 1000グロウは安いのか判断つかないな。

 まぁ実入りがそれ以上になればいいや。


 ついでに木の棒と糸も購入しておく。

 実際に作ってみよう。

 未だに生産ポイントは出ない。



◇スキルツリー

【工作】

・熟練Lv1/6



 スキルツリーでもサブスキルっぽいカテゴリに入るみたいだった。

 工作だったら器用Lvとかつけときゃそれっぽいのに。

 こういう所の手抜きが目立つ。


「あ、こんにちは。お昼ご飯ですか?」


「はい、ちなみに駄犬にも名前がつきました、ローヴォです」


「わぉん!」


 サイゼは「首輪に名前がかいてありますね!」と抱っこしてかわいがっていた。

 昼は軽食以外にもしっかりした物があった。

 ローヴォは相変わらずグリーンラビットのサンドイッチに首ったけ。

 だが俺は兎肉の唐揚げを頂く。



【兎肉の唐揚げ】調理者:サイゼ

カラッと揚げられた兎肉は癖が無く食べやすい。

鶏の唐揚げに近い。



 鶏の唐揚げももちろんあるが、ここは食べてない物を食べる。

 それがファンタジーだ。

 ちなみに狩られまくって鶏より安くなる兎達。


 じゃ、駄犬には唐揚げを食べさせながら俺は作業に集中しよう。

 とりあえず【工作】スキルを使用して作ってみる。


 熟練Lv1でも器用補正が聞くんだとか。

 説明にそうかいてあった。


 どっちにしろ、木の棒に糸を括り付けるだけ。

 針は?

 餌は?


 そんなもんないわ。

 竿を作った経験は一度だけある。

 竹竿だった、現在みたいなカーボン素材とかない。


 必要素材は?

 手頃な竹、鯨の髭、麻ひもがあれば竿くらいでっち上げられる。

 あと鉛と針の仕掛けの部類。

 ガストンに話してみればなんとかなりそうだ。


 とりあえず狙いはフィッシャーガーなわけで、食らい付いたら中々離さないと予想できる。

 あんなギザギザの歯だぞ、どっかひっかかるだろう。

 ってことで出来たもの。



【釣り竿のようなもの】製作者:ローレント

棒に糸を付けただけの物。

一応釣り竿のようなもの。



 うるさいわ!

 何が一応だよ、完全に釣り竿だから。

 ってことで強度的に糸は紐レベルげ強化しても良いだろう。

 フィッシャーガーを狙うだけだから。


「魚釣りですか? ……釣り竿ですよね」


「一応」


「生産スキルはあるんですか?」


「いえ、工作だけでやってみてます」


「ああ、漁師がいないんですね。この町、魚釣れたらぜひ持って来て頂ければ!」


「頑張ります」


 そう言ってサイゼとは別れた。

 駄犬は名残惜しそうに彼女の屋台を見つめていたが、釣り竿のヒモの先に兎肉を括り付けると、それにぴょんぴょんと群がっていた。

 本当に駄犬過ぎる。


「……釣り竿、それ?」


「ええまあ」


 ミツバシも俺の持っている棒を見てそんなことをのたまっていた。

 フィッシャーガーの口だったら一度食らい付いた餌は離さないはず。


「見ててください」


 水辺に近付くとゆっくりこちらへよって来るので、まずヒモを付けない兎肉を投げてみる。

 水面に浮上したフィッシャーガーは、兎肉の着水と同時にドボンと音を立てて肉に食らい付いていた。

 大型淡水魚とかの挙動と似てる。


「こんな簡単な仕掛けでもつれそうだ」


 ミツバシが魚の動きを見てほぉ〜と関心していた。

 じゃ、改めて竿に括り付けた兎肉を投げる。


「うお!」


「危ない!」


 フィッシャーガーの力は思ったより強かった。

 そりゃ人も襲うくらいの大きさだからな。


「ブースト!」


「俺もブースト!」


 ミツバシに支えられながらもお互い【ブースト】を掛けてフィッシャーガーに対抗する。

 紐が切れないか心配だったが、そこは釣り師の腕の見せ所。

 数十分の格闘の末、何とか紐を切られずに川岸に近づけることに成功した。



【フィッシャーガー】Lv5

水を飲みに来た動物を襲う淡水のハンター。魚類。

びっしりと硬い鱗を持つ。

大きな牙には注意。



 最初見た奴よりレベルが高い。

 引きの強さもなっとくである。


 つーか思ったよりデカい。

 漁具の魚鉤うおかぎとか考えてなかったことを後悔した。

 水際まで引き寄せると、とりあえずレイピアで魚の急所である延髄の部分を突き刺した。

 フィッシャーガーがビクビクと締められた魚の挙動をする。


 そして動かなくなった。

 おかしいぞ、光になって消えないんだけど。


「あ、これ獲れてるよ。生産職なら丸のままでドロップできる、鑑定してみて」


 ミツバシに言われるままに鑑定する。



【フィッシャーガー(素材)】110cm

水を飲みに来た動物を襲う淡水のハンター。魚類。

びっしりと硬い鱗をとるにはそれなりの技術がいる。

品質は捌いてみないとわからない。

※時間経過で品質が落ちる。



 内容が変わっていた。

 ミツバシが言う。


「生産職は素材を余すことなく使えるから、解体スキルの真価が発揮されるんだ」


「そうなんですか」


 【解体】スキルを使うと、解体部位が表示された。



【フィッシャーガー(素材)】110cm

・身(食材)

・鱗(各種素材)

・骨(各種素材)

・牙(各種素材)

・内臓(食材)



 いつもは聞き流していたゲーム内メッセージが沢山なる。



[この戦闘でレベルが上がりました]

[生産スキル、漁師を得ました]

[生産スキルツリーの追加、並び替え]

[生産ポイントボーナスを5ポイント獲得]



【漁師】

・操船Lv1/20

・熟練Lv1/20

・漁具Lv1/20

・水泳Lv1/1



 生産スキルのレベル上限高過ぎる。

 操船は船を操ることで、熟練は一本釣りや投網、その他ポイントの見極めと魚の解体作業に補正が効くみたいだった。


 サービスで【水泳】がレベルマックスになって登場した。

 これは美味しい。


 漁具は?



【漁具】

漁に使うあらゆる道具の製作なら、【工作】スキルに一定の補正効果が生まれる。

※衣類、造船などは対象外。



 ほう、生産ポイントは熟練2ポイント。

 漁具に3ポイント振っておこうか……。

 そう思ったが、生産スキルならどれでも振れることを思い出して一度スキルツリーを開くことにした。

 生産スキルツリーの追加と並び替えが行われたみたいだからな。



プレイヤーネーム:ローレント

職業:魔法使い見習いLv11

信用度:60

残存スキルポイント:2

生産スキルポイント:5


◇スキルツリー

【スラッシュ】

・威力Lv10/10

・消費Lv1/10

・熟練Lv1/10

・速度Lv1/10


【ブースト(最適化・黒帯)】

・効果Lv3/10

・消費Lv3/5

・熟練Lv3/5


【アポート】

・精度Lv5/10

・距離Lv2/10

・重量Lv10/10

・詠唱Lv1/1


【スティング】

・威力Lv1/10

・消費Lv1/10

・熟練Lv1/10

・速度Lv1/10


【投擲】

・精度Lv1/3

・距離Lv1/3


【掴み】

・威力Lv1/3

・持続Lv1/3


【調教】

・熟練Lv1/6


【鑑定】

・見識Lv1/6


◇生産スキルツリー

【漁師】

・操船Lv1/20

・熟練Lv1/20

・漁具Lv1/20

・水泳Lv1/1


【採取】

・熟練Lv1/3

・眼力Lv1/3


【工作】

・熟練Lv1/6


【解体】

・熟練Lv1/3

・速度Lv1/3



 【採取】【工作】【解体】の三つが生産スキルに分類されたみたいだった。

 これはキテる。



◇生産スキルツリー

【漁師】

・操船Lv1/20

・熟練Lv3/20

・漁具Lv3/20

・水泳Lv1/1


【採取】

・熟練Lv1/3

・眼力Lv1/3


【工作】

・熟練Lv2/6


【解体】

・熟練Lv1/3

・速度Lv1/3



 熟練、漁具に2ポイントずつ。

 そして工作に1ポイント。

 これでオッケーかな。

 工作は何かと使いそうな気がするのだ。


「お、漁師スキルだ」


 ミツバシも便乗して漁師スキルをゲットできたみたいだった。


「操船は使えそうだ」


 掲示板でも水運の下りが話題になっていたみたいだし。

 造船に詳しい人が生産職で来てくれたら、今回の桟橋計画は大いに進むだろう。

 船は俺も欲しい。


 スキルポイントは当然【アポート】に振っておく。

 なにかあるまで精度上げでいこう。



【アポート】

・精度Lv7/10

・距離Lv2/10

・重量Lv10/10

・詠唱Lv1/1



 フィッシャーガーの素材はさっさと解体しておくか。

 素体が大きいので、ミツバシにナイフを借りて二人で行う。


「解体方法はかかれてるが、一体どうナイフをいれていいのかわからん」


「頭を落とすのが難しそうですね、アポート!」


 有無を言わさずフィッシャーガーの頭に大剣を転位して落とす。

 スッパリと落ちた頭といきなりの大剣を見てミツバシが腰を抜かしていた。


「かねがね掲示板は見ていたし、生産職の噂は聞いていたが……」


「では、おろしましょう」


 身が重たいので【ブースト】は掛けておく。

 魚の捌き方なんて背骨にそって身と内臓と骨にわければそれで良いよ。

 店に出す物は調理師がしっかり捌くんだから。

 皮引きはどうしようか迷ったが、流石に安全が確保されてないこの場でガシガシするのは良くない。

 というかアイテムボックスなら何とか入ったんじゃないかこれ。

 今更ながら後悔する。


「白くて美味しそうだ」


「淡水魚ですから」


 食材部位を確認する。



【フィッシャーガーの兜】

牙などまだ使える部位が残っている。

兜焼きにしても良い。


【フィッシャーガーの切り身】

新鮮で淡白な切り身は刺身でもいける。

だが、味が馴染みやすいのでムニエルにすると美味。


【フィッシャーガーの骨】

巨体を支える骨は硬い。

大きく鉤場になった腹骨は色々な用途に使える。

農業素材としても優秀。


【フィッシャーガーの内臓】

肉食のため独特の風味がする。

食べられないことも無いが、畑の肥料にした方がマシである。



 なら食材カテゴリーに置くな。

 ふむ、身が淡白なくせに内臓はくさいとかどんな高機能内蔵だ。

 新鮮だから今の所身は生臭くないが、時間が経つと内臓並みの匂いを発するのだろうか。


「胆は捨てましょうか」


「犬、食ってるけど?」


「わふわふ!」


 駄犬が顔中汚して、獲物の自己主張をした。

 何ともない所を毒は無さそうだった。


「皆さん、休憩にしませんか? ってええええ!」


 作業場にサイゼがやってきて、卸していたフィッシャーガーを見て仰天していた。

 まぁかなりデカいから仕方ないかな。


「これ、値段付けれます?」


「私には無理です〜! レイラさん案件です! 薬師で商人もやってるみたいなので!」


 そうだったんだ。

 つくづくお世話になってると思う。


 リアルでも連絡先を交換しているのだろうか、サイゼが何やらウィンドウを見ながら操作した後、すぐレイラがログインしましたと通知が来た。


 そして、ガストンを引き連れてやって来るのであった。

 もちろんセレクも便乗している。


「周りもあらかた狩り尽くされてるし、意外と良い立地なのかもね」


 辺りを見渡しながらレイラが呟いた。


「こんなもので釣れたであるか?」


 俺の作った釣り竿を見たガストンがそう言う。


「ねぇ! バーベキューにしましょ!」


 大きな魚を見てセレクのテンションがあがっているようだった。

 子供かと思っていたが、生産職の方々はわりかし乗り気だった。


「一応フィールドですが」


「ああ、ローレントは知らないわよね。文化の痕跡とかが残されるとそこに弱い魔物は寄り付かなくなるのよ。生産スキルを持つ人が数人集まって家でも立てて、村長を選任すると村として扱われるわ……多分! でもそれを可能にするアイテムがあれば一発なんだけど」


「程度によっては強い魔物や、良くない物を誘き寄せてしまう事があるのであるが、東のフィールドなら問題無さそうである」


 テントでも張って、バーベキュー会場にしちゃえば良いのか。

 資材を運び込むだけだと魔物はポップするらしい。


「元々廃れる前は漁師とかが居たみたいだしね、元人の手が加えられていた場所だから、復興するのは早めに出来そうね」


 そして、人が居なくなった場所にはモンスターが迷い込み。

 いずれはポップするようになったりするらしい。


「網は鍛冶スキルですぐ出来るのである」


「調理は任せてください!」


「石材加工くらいならやっとくぜ、手持ちの煉瓦もあるしな」


 適当な広場で、イシマルという名前のプレイヤーがアイテムボックスから石を出して煉瓦に加工して、石窯の様な物を積み上げ始めた。

 なんで持ってるんだ。


「食材ありますか?」


 サイゼが聞いてくる。

 もちろんあるけどさ。


 そうしてあっという間にバーベキューが始まるのだった。

 こういう時って生産職は頼もしいものだ。


「フィッシャーガーをもっと釣るのである」


 そう言ってガストンから渡された物は、金属で少し補強された釣り竿だった。


「鉤が欲しいですね」


「似たようなものならあるのである」


 誰がかぎ爪武器わたせっていった。

 まぁ引っ張れれば良いから使うけど。


「ねぇレイラ、復興掲示板に書いて人呼びましょうよ?」


「そうねセレク、たまにはそう言うのも良いわよね。ローレント、もう数人呼ぶから魚どんどん釣っちゃって!」


 無理を仰る。

 レベルも生産ポイントも貰えるから釣っても良いが、フィッシャーガー釣るのって割とテクニックが居るんだよな。

 見えてるし食らい付くけど、紐切れないようにコントロールするのはそこそこ難しい。


「俺も手伝うよ、出来るだけレベル低いの狙おう」


「そうですね」


 最終的に生産プレイヤーに交じって祭り好きのプレイヤーやNPCも参加して、かなりの盛り上がりになった。

 俺はフィッシャーガーを三体追加で釣った後、夜の狩りに向けて桟橋前のバーベキュー会場を後にした。


 あのドンチャン騒ぎなら流石にモンスターは湧かなそうだ。

 さて、夜はある程度アイテム整理したら補給して夜の狩りへと向かおうかな。


ーーー

プレイヤーネーム:ローレント

職業:魔法使い見習いLv11

信用度:60

残存スキルポイント:0

生産スキルポイント:0


◇スキルツリー

【スラッシュ】

・威力Lv10/10

・消費Lv1/10

・熟練Lv1/10

・速度Lv1/10


【ブースト(最適化・黒帯)】

・効果Lv3/10

・消費Lv3/5

・熟練Lv3/5


【アポート】

・精度Lv7/10

・距離Lv2/10

・重量Lv10/10

・詠唱Lv1/1


【スティング】

・威力Lv1/10

・消費Lv1/10

・熟練Lv1/10

・速度Lv1/10


【投擲】

・精度Lv1/3

・距離Lv1/3


【掴み】

・威力Lv1/3

・持続Lv1/3


【調教】

・熟練Lv1/6


【鑑定】

・見識Lv1/6


◇生産スキルツリー

【漁師】

・操船Lv1/20

・熟練Lv3/20

・漁具Lv3/20

・水泳Lv1/1


【採取】

・熟練Lv1/3

・眼力Lv1/3


【工作】

・熟練Lv2/6


【解体】

・熟練Lv1/3

・速度Lv1/3


◇装備アイテム

武器

【凡庸の大剣】

【鋭い黒鉄のレイピア】

装備

【革レザーシャツ】

【革レザーパンツ】

【軽兎のローブ】

【黒帯】



◇テイムモンスター

テイムネーム:ローヴォ

【リトルグレイウルフ】灰色狼(幼体):Lv2

人なつこい犬種の狼の子供。

魔物にしては珍しく、人と同じ物を食べ、同じ様な生活を営む。

群れというより社会に溶け込む能力を持っている。狩りが得意。

[噛みつき]

[引っ掻き]

※躾けるには【調教】スキルが必要。

ーーー

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