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本日更新ラストでした。
「はえー」
「おお」
テージシティは、テンバーやノークタウンとは比べ物にならない程、大きな都市だった。
高い建物がある。
そして数多くのNPCが闊歩している。
中にはプレイヤーも混じっている様だった。
「意外と多いんですねぇ」
「行商プレイヤーでここまで来ている人はちらほら居ます。気心の知れる仲間に護衛を頼んで来ているプレイヤーですね」
今の俺達の状況と一緒だ。
うーん、テンバーとノークで完結していると思っていたが。
中にはひたすら町の先を夢見て先行していたプレイヤーも居るのだろうか。
ちらほら見えるプレイヤーのレベル帯は?
大体レベル35前後。
「テージシティは町の規模が大きいので、よりハイレベルな装備を扱っているそうです」
NPCの道具屋、料理屋、鍛冶屋、呉服屋。
テンバータウンで見ていた物よりも品物が充実しているのが見受けられた。
そう言う娯楽環境が発達しているのか、ウィンドウショッピングを楽しむNPCも居た。
「どちらにせよ、行商プレイヤーがいれば物資はテンバーまで必ず供給されるので、来る必要はなきにしもあらず。と言った所ですね。観光目的でも楽しめますし、何より新しい狩場が町の外にはございますから」
それだけ行ってニシトモは馬車を走らせた。
俺達を置いて。
「狩りに行くのでしょう? 今日は時間がありますから、十分楽しむと良いですよ。三時間後、再びこの場所に来て頂ければお待ちしています!」
「わかってるじゃん」
「え、もしかして観光じゃなくて狩りですか?」
当たり前よ。
ツクヨイは何故か一緒にNPCに混ざってショッピングを楽しむつもりであったようだが……。
馬鹿野郎、ここまできてフィールドに出ないなんて、何しに来たんだ!
セカンドライフかこの野郎!
まあ俺も、なんだかんだ成長して行くもう一人の自分って感じで。
十分に楽しんでいるのでな。
セカンドライフみたいなもんか?
「王都にいったら好きなだけ買い物に行けば?」
「そうでした、スティーブンさんの転移門がありました。テージシティよりももっと色々なお店があるんですかね? 俄然やる気がわいて来ましたよー!」
フィールドは?
とりあえず農耕地帯を進んでみると、草原マップに出た。
馬が居る。
鷲も居る。
「こっち来ましたよ!!! お馬さんです!!!」
【ミドルステップホース】Lv8
草原を走る野生の馬。クラス3。
ステップホースのクラスチェンジ。
【ステップイーグル】Lv14
草原を飛ぶ野生の鷲。クラス2。
ステップカイトのクラスチェンジ。
「格下だから、迎撃準備」
「はい!」
上空から狙うステップイーグルは、ツクヨイが出待ちの姿勢を取る。
なら、俺は突進してくるこの馬のどうにかしよう。
馬相手に戦った事は?
正直言って無い。
訓練された馬に乗る人とは戦った事ある。
まず馬を殺してって感じなのだが、現実世界みたいに。
首元を抜き手で突き刺してほふることは出来るのか?
「ヒヒン!!!」
鬼魔の長剣で試しに斬り込んでみた。
首を振られて馬の頭で弾き飛ばされそうだった。
ダメージは食らっているみたいだがね?
HPは減っているが、一撃必殺とまではいかないようだ。
そりゃクラスチェンジしてる馬だから。
現実世界のと比べれば耐久性を段違いなのだろう。
なら魔術師らしく魔法で対抗しよう。
「ステップイーグル仕留めました!」
「こっちはまだ!」
突進する馬を躱して、首元にスペル・インパクトをぶち込んだ。
重たい音がして馬の足が振らついた。
横に大きく振らついているので、畳み掛ける。
そして試しに契約魔法を使用してみた。
[契約可能なモンスターが存在しません]
なんだこれ、もしかして使えないの?
問答無用で契約できるのかと思ってたんだけど。
「ブフーー!!」
倒れ込んだ馬がこちらを見ている。
目を合わせてみるが、敵意しか感じない。
もういいや、仕留めよう。
【馬肉】食材
生食可能。
臭みは無い。
【中草馬の皮】素材
軽く柔軟で、そこそこ丈夫。
「馬肉です」
「残念だが、醤油が無い」
「……たしか、マルタさんとミツバシさんとサイゼさんとミアンさんで、魚醤を作ってました」
朗報じゃないか。
というか、奇跡の大発明だろあいつら。
生食を用いるには少し癖が強いが、キビヤック食べさせられるよりマシだ。
信じているぞ、彼等ならきっと。
醤油を造ってくれるってな。
【草原鷲の羽】素材
命中率と飛距離に補正が効く。
【鉤爪】素材
暗器に用いられる事のある小さく鋭い鉤爪。
ステップイーグルの方からは特にぱっとしない。
大体予測できるドロップ品でした。
強運の瞳があるんだが、それがあってもこれってどうなの?
馬肉はやっぱりレアアイテムなのかな?
【中草馬の尻尾】素材
ブラシや飾り、画筆、弦楽器等に利用される。
割と高値がつく。
【中草馬の鬣肉】食材
貴重な部位。
【中草馬の鬣】素材
ブラシや飾り、画筆、弦楽器等に利用される。
割と高値がつく。
うむ、強運絶好調。
尻尾と鬣と鬣肉だった。
「なんでローレントさんばっかり、くやしいです!」
「なんでだろうなあ?」
強運の瞳からのフィードバック。
契約魔法、強過ぎる!
それでもツクヨイがぶつくさ文句を言っているので、大量にある尻尾をくれてやった。
「これでブラシでも作ればいいと思う」
「ぁ……、ありがとう、ございます」
よきかなよきかな。
まだまだ大量に馬は湧いているみたいだ。
どんどん狩るぞ。
お昼は馬の肉でも食べましょう?
「わわわ私が調理しますって! 色々とお世話になっていますので!!」
そんな事を言い出す物だから、やらせてみた。
別に俺が調理したって良いだろうが?
ん、ローヴォ。
何故ツクヨイの傍に居る。
俺が作る時はそれとなく遠くに居るくせに。
何故ツクヨイの傍に居るのだ。
「パンと焼いた馬肉とブリアンさんから貰っていた野菜を挟んでみました」
味付けは塩こしょうだが、まあ良いだろう。
ホットサンドみたいな感じで、ローヴォとヤンヤンが仲良く並んで食べている。
む、ヤンヤン、転がりながら遊び食べしてるぞ。
だめじゃん、ちゃんと躾けてないと。
「そろそろ時間ですね。戻りますか?」
「うむ」
名残惜しいが、ニシトモからツクヨイに遠出しているならそろそろ戻って来てくださいとメッセージが入っていた。
夜の狩りはお預けで、テンバータウンに戻る時が来たようだな。
「一日にこんなにレベルが上がるなんて、ローレントさんは一体どんな狩りをしているんです? ああいえ、大体想像はつくんですけど……」
ツクヨイのレベルは一つ上がっていた。
対する俺は?
スペル・インパクトと補助魔法が幾つか育っていた。
アスポートは?
上がってないよ。
使いどころ無さ過ぎて、使えてないってのがね。
さて、戻ろうか。
メモ
プレイヤーネーム:ローレント
レベル:41
プレイヤーネーム:ツクヨイ
レベル:35
【スペル・インパクト(P)】Lv1→2
【マジックアンプ・ナート】Lv6→7
【マジックウェポン・ナート】Lv6→7
何が悲しくて、クリスマス前に主人公と女キャラのイチャラブを書かなきゃならんのか?
と、心の中で自意識をかみ殺しています。
書きながら。
馬の尻尾もらって。
「ぁ……」
ってなんやねんとか思っています笑
イチャラブの書き方がわからなくなって来た。
クリスマスが近付くにつれて、ゲシュタルト崩壊が巻き起こって来ました。
さて、契約魔法のあーだこーだがある前に。
次は、ローレントの装備アップグレード回です。