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本日更新三回目
一閃天が、攻め方に変化をもたらして状況がやや劣勢になった。
魔法職だから近接相手にHPは削れて行く。
だが、未だ有効打をなし得てない事に違和感を感じた方が良い。
「くっ! はあっ!!」
虚を作った攻撃、八極拳の肘に見せかけて。
遠心力を利用した腕撃への変化。
その逆も然り。
大振りの鞭の様な腕は、打ち付ける瞬間に肘打ちに変わる。
……当たらない。
さて、どうしてだ?
[ローレント選手すごい! すごいぞ! フェイントを織り交ぜ、烈火の如く押し寄せる攻撃にまるで動じてない!!]
[っていうかなんで受けきれるんですか? もう見えないですよほとんど]
[AIから久々に上がって来た! アレは観の目と言って、攻撃を見て受けるのではなく、えーと、敵全体の動きを見て、予測し、受けている。ななななんとー! そんな事がー!]
[流石ハゲですね]
「ざけんなー!!!」
久利林の叫び声が聞こえる。
そろそろネタバレも始まる頃かな?
動の者である久利林は、相手の動きに呼応して迎撃するという事に長けている。
最も、遊びで十六夜のリズムを読み取ったりする様に、そこそこ使えるみたいだが。
今回はそれを上を行ってみた。
「……陣を見ていたのか」
一閃天の動きが止まる。
そう言う事だ。
全体の動きを見て対処する観の目で、一閃天の動きを予測する。
そして彼の踏み込みの前に自分の足を滑り込ませる。
すると、行き場を無くした一閃天の足は、無意識に他の場所へ踏み込む事になり攻撃も浅くなれば、攻撃の方向も絞られて来るので受けやすい。
「この違和感の正体、そう言う事だったのか」
「何だか最近色々と思い出してな、こうして身体を動かすのが楽し過ぎて」
「だったら本気を出せ」
一閃天は構える。
「まだ本気を出してないだろ。大陸にその名を轟かせた貴様の神髄を見せてみろ」
「おお」
その目はどこまでも真っ直ぐに輝いていた。
トモガラに食らわしてやった武の絶招。
それを更に上回る神髄を見せるには、良い相手かもしれん。
龍嶮のじーちゃんをボコボコにした俺の秘技。
ゲームではやった事無いが、このゲームならばやれるかもしれん。
「受けてた――ッッ!?!?」
一閃天が後ろに飛び退いた。
ほう、避けるのね。
じゃあもう一発?
「――ッァ!?!?」
[な、何が起きているんだああああ!? ゆっくり動くローレント選手に対して、一閃天選手が飛び退いている!!]
[不気味ですね、正直]
[ハゲ選手、早く解説お願いします!]
「なら特等席用意しろてめー!!!」
[なら、私の隣でどうでしょうか?]
「え、いいの!? 行く行く!!!!」
[あれ、GMデルタ? そう言うの良いんだっけ?]
[まあ、仕方ないと思いますよ]
[うおお! ここがGM席ね! うっひょー! 良い見晴らし]
[解説ハーゲ、早く解説をお願いします]
[隣座るよん? まあ強いて言えば俺がやったリズム読みを突き詰めた物……、とでも言えば良いのかなぁ?]
何と言うか、目がいいと言うか。
久利林だけあって、色んな物事に精通している。
元々が格闘ヲタクでBCoEを始め、リアルでものめり込んでいった。
そんな奴だったからな。
[本来であれば――]
虚をつく、隙をつく。
それが勝つために最重要な要素だ。
構えと言う物は、その隙を無くし反撃へ移りやすくするための物。
そして、練度が増せば増す程、その構えは自然体と呼ばれる物になって行く。
素人目にただ突っ立っているだけ。
なのが、実力をある程度持つ者からすれば、一切隙のない、必殺の構えに見えるのである。
[んでもってそれの更に上ってのがあるんだよなあ、傑作だあ]
何が来るのかわからない。
そんな自然体を基盤に、俺は一閃天の全ての動きから間合いを読む。
瞬き、筋の動き。
そして観客席の呼吸、空気の流れ。
息を吐いた、吸った。
その刹那の中にも隙は生じる。
一瞬の瞬きなんか、ただの隙としか思えないくらい。
ほんの刹那と言う物だ。
いくら全神経を集中させていようと、その隙の間に動かれれば何の反応も出来ない。
それが動物だな。
[瞬きした瞬間なんか、瞬間移動に見えるだろうな]
「ぐあああああ!!!!!」
俺の人差し指が、一閃天の左目に突き刺さった。
残念、完全に潰す筈が、僅かに後ろに下がられて不発に終わった。
でも視界はこれで一つのみ。
交互に瞬きする技もあるが、それは使えないと見た。
それでも、避けるんだなあ。
ぞくぞくした。
[うーん、一閃天選手が固まっていて、ローレント選手は普通に近寄っている様にしか見えませんけど?]
[動画サイトでも、これ本当に達人か? って思う奴あるじゃん? まさにアレだよ、体感してみないとわからない奴]
達人相手でも、この技は有効だ。
死角に入り込む事で、消えた様に見せる事も出来るし。
そしてゆっくりと一閃天に近付くと。
彼の胸に手を当てて。
「スペル・バイブレイト」
まともに食らった彼は派手に吹っ飛び、そしてHPも全損した。
いつも通り、秘宗という急所を抉る攻撃でも良いが……。
ぶっちゃけかなり危険な人物だと思われかねないので、あえて派手な技をチョイスしてみた。
さて、一閃天。
楽しかったよ。
[闘技大会優勝者、ローレント選手!!!!!]
歓声が鳴り止まないってのも、また乙な物だね。
そんな事より優勝報酬はなんじゃろかい!!
勝ちましたローレント、優勝です。
さて、皆さん、クリスマスはお暇みたいですね?
うふふ、沢山更新しますよ?
読みに来てくれれば幸いです。
次の更新で、報酬回です。
そしてアップデートが入りますので、グローイングスキルオンラインの仕様がややかわります!
平日に三回も読んで頂きましてありがとうございます!
そしてブクマ・評価もちょくちょく頂けてまして、ありがたいです!