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本日更新二回目。

***観客席サイド***


「あら、戻って来てたのかい?」


「あ、うん」


 久利林が生産チームの集まる観客席へと戻って来ていた。

 場所はちゃっかり十八豪の隣。

 それとなく口笛を吹きながら腰を抱こうとするが、顔面に一撃貰っていた。


「GMベータに頼まれたよ、解説お願いしまーすって」


「……運営、ちゃんとしなさいよね」


 それを聞いていたレイラがため息をついた。


「むしろ、本来の道筋ではもっとスキル合戦を想像していたのである」


「ぜーんぶ、貴方達がBCoEから移住して来たせいねー?」


「ははは、まあ他ゲーから来てる奴は沢山居るから、別に俺達だけじゃねーよー? な、十八豪?」


「良いからもっと離れてくれるかい?」


「つれねーなー!」


「あ、ちょっと! 始まるわよ!」


 試合を今か今かと待っていたセレクが、声を上げた。

 それに従ってみんな言葉を一度止めると、決勝の舞台を見入る。

 ゲームマスターの合図と共にスタートし、二人が動く。


[出た! いつのまにか手に長剣を握っているあの居合い術だ!!]


[お、AIが拾いました。もしかしてスティーブンさんの転移魔法クエストを受けているんでしょうかね? テンバータウンのお助けキャラの筈ですが……、なるほど、超確立のクエストを成功した。そんな感じでしょうか?]


 ローレントの居合い斬りを肘鉄でうち返す一閃天。

 そしてあっさり剣を手放したローレントに、大きく構えを取る一閃天。


「剣を素手で弾けるもんなんですか?」


「剣の腹には刃がついてないからな」


「いや、そんなにあっさり言われましても」


 ツクヨイは久利林の返しに空いた口が塞がらなかった。

 そして一閃天に合わせる様にローレントも構えを取る。


「ふむ、化物だな」


「……化物?」


 今度はセレクが反応した。

 ローレントが化物って、彼女からすれば彼はミステリアスな高身長で顔も悪く無いし、いや、とにかく何かがビンビン来てしまうタイプだったのだから聞き捨てならなかった。


「状況に応じて戦い方を変えるのは常識だよなー?」


「確かにそうですね。あと兄弟子であるローレントさんは自分に戦いやすい状況を作るべきだって教えてくれました」


 闇魔法は、専守防衛と搦め手を得意とする。

 それをローレントに教えてもらってから、ツクヨイも実践を行いプレイヤースキルを磨いて来た。


「中国拳法は実践での真価を発揮する。目つぶし、急所、何でもありだからな。そして長い歴史の中でかなりの形態に別れて、本当にありとあらゆる戦い方があるんだよ」


 でも、と久利林は言葉を一度置く。


「形態化されるが故に、この技は何々っていう風に凝り固まった意識が内部にある。特に一閃天は八極拳が至高の武だっつって、ガチで地獄の特訓をして来たからな。要するに中国拳法マンセー?」


「はあ?」


 よくわかりませんでしたというツクヨイの表情に、久利林は乾いた笑いが出た。

 だが、それも直に戦いを見ればわかるだろうと、丁度歓声が巻き起こったステージを見やる。


[な、何が起こったのかわからない! わからないけどローレント選手の拳が確かに一閃天選手の胸に突き刺さりました!]


[実況解説AIが機能してますよー、久利林選手による解説が上がって来ていますね。あれ、でもこの解説余り関係無い様な……?]


[おいハゲー!! 早く解説しろー!! みんな、ハゲコールだ!! ハーゲ! ハーゲ! ハーゲ!]


「うるせえええええええ!!!!! 好き勝手言いやがって、ハゲてねぇよ剃ってるだけだ!!」


 涙を流し叫ぶ久利林。

 それでも怒号と歓声は止まぬ。


「久利林さん! どうなったんですか!?」


 一部始終を見ていたツクヨイも、戦いの熱にほだされた様に回答を求める。


「構えは詠春拳のそれと同じなんだよ。でも空手の構えに少し似てる構えがあって、一体どんな技で来るのかわからない。そんな中で一閃天は自分に一番信頼のある中国武術に山を張る。それなら対応できるかな?」


 中国拳法以外は糞だと言う一閃天の驕りも無かった訳じゃない。

 ローレントは真っ当に中国拳法で戦うと見せて、一閃天の攻撃に対して空手の受け技である前羽の構えを用いた。


 交差する一瞬。

 前に伸ばした手を使い、直線的な肘と膝の攻撃を受け流し、無理矢理道を造る。


「で、次は空手技じゃなくて。中国拳法の形意拳っつーのにある半歩崩拳で攻撃した。いやありゃどっちともとれない、色んな武術が混ざった技だな。流れから組み取って、半歩正拳だな」


[中国拳法と空手のミックス技! 半歩正拳だあああああ!!!]


[まあ、良くありがちな名前ですね]


「うおおおおおおおおおお!!」


「なんか知らんがカッコいいぞおおおおおお!!」


「くっそ! こんな事ならミラクル半歩アタックって言っときゃ良かったぜ!!!」


 嘆く久利林。

 そんな事どうでも良いとばかりにツクヨイは聞き返す。


「ゲームですよ、これ。一歩とか半歩とかそう言う制限とかどうなんですか? 普通にスキルの方が強いと思うんですが……」


「RIO社のゲームは無限大だっていうだろ? 昔、リアルインフェニティってゲームでAIの暴走事件があっただろう? それを沈静化させるためにアカシックレコードっていう超性能高度並列演算処理器ってのが作られた」


「風、空気、水、土。動植物の活動によって変質する空間の完全再現でしたっけ?」


「そーそー、売りはもう一つの世界って感じだしね。このゲーム。だから、こういうリアルでもちゃんと強い奴が台頭する。マジで、戦いが好きな奴とかリアルチャンピオンとかプレイヤーとして混じってんじゃないの?」


 冗談みたいな話だが、あながち間違って居ないのかもしれない。

 ツクヨイは、久利林の話に得体の知れない説得力を感じていた。

 事実、体現者として決勝の舞台に立つ彼等が居るんだから。




***本編***



「くっ、おかしい! 職業的優位は勝ち得ている筈!」


 ああ、そうだろうな。

 俺は魔法使いで、お前は戦士。

 遠距離職と近距離職。

 それが接近戦となると、絶対的優位は向こうに軍配が上がる。


「カアッ!!!!」


 一閃天は気合い一発。

 後ろに大きく跳躍して俺から距離を取った。

 彼程の拳の腕を持つ者なら、この違和感に気付くだろう。

 そう思っていた。


「劈掛掌!」


 動きが変わる、直線的な動きから大きく曲線を動く腕。

 腰を起点に上体を振り、そして大振りの鞭の様な攻撃。


 劈掛掌。

 それは腕を風車の様に振り回し、曲線的な歩法により敵の側面や後ろに回り込み、反撃の隙を与えない様な連続的な攻撃の拳。

 遠心力を利用したその打撃は鞭の様に鋭く、遠距離からの攻撃に優れる。

 接近戦を得意とする八極拳との相性は抜群で……。


「八極と劈掛を共に学べば、神さえ恐れる!」


 と言う言葉さへも産まれている。

 他にも八極拳と相性がいいのは螳螂拳と言われているが、習熟のし易さ的に劈掛掌を推す。

 打ち付けると言う意味で、掌は拳に勝るからな。


 楽しくなって来た。

 兼ねてから、こうも動きが馴染むゲームって体感した事が無い。

 動きを視認してから回避までに、取れる手数が違う。





二回目でした。



なんか別ゲーでのゴタゴタが少しふれられてるみたいですねー。

RIO社ってなんなんですかねー。

怖いですねー。

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