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クリスマス前なんで、クリスマスが暇な事をアピールするために聖なる更新をします。今日は五回更新です。追い込み漁です。こんちきしょー。まず一回目。
「勝てる通りが無い。お前と乳繰り合ってたハゲが、ローレントにな」
「アンタの馬鹿にする言い方は、前々からうざかったんだよね」
「それが?」
「軽々しく馬鹿にするんじゃないよ!」
魔法職である十八豪は、早々に戦い方を変えた。
近接職で、八極拳を扱う一閃天。
そう、久利林とトモガラと一閃天はまさに王道タイプ。
故に強い。
まあそれの上を行くのが、既に強くて更に強い俺。
という、図式になる。
いや、事ゲームにおいて、俺は常に敗者だったのだが。
RIO社のゲームはほとんどセカンドライフだ。
より現実に近いならば、俺が強いのは物の道理。
さて、自惚れるのはやめておこう。
っていうか、十八豪。
あんだけ熱烈そうな感じを出しときながら、やっぱり久利林の事を馬鹿にされると怒っている。
女と言う物はそんなもんか?
はあ、クリスマスは山ごもり。
昔ジジイに言われた言葉。
如何に聖なる夜に憧れようとも。
俗世から隔離されていた俺には無関係だ。
フィンランドに言ったらサンタを蹂躙してやるんだ。
「くっ」
「早く降参する事だな」
「いやだね」
「なら良い、場外だ」
追いつめられた十八豪は、一閃天によってあっさり場外へ投げ捨てられた。
準決勝勝者は、スペシャルプレイヤーの一閃天。
他の予選勝者は?
ぶっちゃけ勝ち上がって来る事は無いと確信していたから、見る価値すら感じなかった。
◇
「ローレント」
「ローレントさん」
レイラとツクヨイが親指を立てる。
十八豪を倒した一閃天をぶちのめして来いとでも言うのだろうか?
いやぶっちゃけ、場外で倒してる分。
めっちゃ優しい奴だと思うけどな……?
「ねえ、これはい」
「ん?」
「ちょっとミサンガ編んでみたの、対決前に渡すなんてロマンチックじゃない?」
「おお、効果はいかほど」
「着眼点そこ? ……台無しね」
なに?
重要な所だろうが。
【兎のミサンガ】製作者:セレク
色んな思いの募ったミサンガ。
クリティカル判定を一度だけ無くす。
「そんなにすごい効果とかは無いわよ? ……ただあげたかっただけなの」
「いや、十分だ」
クリティカル判定を一度だけ無くす。
ぶっちゃけかなり期待できる効果じゃないか。
急所攻撃を多用する俺だからこそ、その有用性がわかる。
「ありがとう」
「ぁ」
さて、そろそろ休憩時間も終わり、決勝戦がスタートする。
観客席は?
満員ですな。
カメラが特設観客席も映し出しているが、NPCもプレイヤーと一緒に座ってモニターを見ている。
いつだかの屋台、繁盛してそうだな。
[出たぞ、優勝候補の一角、ローレント選手!! トモガラ、久利林、スペシャルプレイヤーを打ち倒した真のスペシャルプレイヤー! 先週のタイアップイベントでは、まるで悪鬼羅刹の様な戦いっぷり! そしてレベルも一人だけ40だあああああああ!!!!]
「うおおおおおお!!!!」
「廃人の中の廃人だ!!!」
「最初の頃はローレント、ただのヤバい奴かと思ってたけど!!! もっとヤバくて逝かれた野郎だぜ!!! でも最高だ!! 今回もやりやがれ!!!!」
[そして相手はスペシャルプレイヤーの一人。中国拳法で伸し上がって来た無手の達人とでも言えば良いのでしょうか? 全く、これは格ゲーじゃないんですよ? 一閃天選手です]
「キャアアアアアアア!!!」
「クール過ぎるうううううう!!!」
「カッコいいいいいいいいい!!!」
「ローレント? も、良いけれど。一閃天よねーーーー!」
一閃天殺す。
歓声にこうも違いが出るとはな。
何だか良くわからないイケメンオーラと言う奴か?
それともカリスマ性か?
一閃天の黙然で、それでいて少し優しくも、敵対した相手にはあえて塩を送って鼓舞する姿。
そこが良いと申すのか?
良くも悪くも、こいつは俺と同じ穴のむじなだぞ。
クレイジーサイコバトラーだぞ?
「手加減はするなよ?」
そう言って開始の合図と共に、一閃天は駆け出した。
手加減?
するわけないだろ、そんな事。
見た所、ガチで八極拳と鍛えているようだし、その姿勢に敬意を払って殺してやろう。
[出た! いつのまにか手に長剣を握っているあの居合い術だ!!]
[お、AIが拾いました。もしかしてスティーブンさんの転移魔法クエストを受けているんでしょうかね? テンバータウンのお助けキャラの筈ですが……、なるほど、超低確立のクエストを成功した。そんな感じでしょうか?]
俺でもずっと黙ってたのにバラしてんじゃねーよ。
おっと、やっかみを言っている場合ではない。
トモガラ、久利林同様、確りと対峙せねば勝てる相手ではない。
「厄介だが、近接相手に八極拳は最高の武!」
闘気を纏った一閃天の肘が、剣の腹にぶつかる。
ここで対抗すると、HPを削られるので、大人しく受け流しておく。
まあ元々素手で相手するつもりだったしな。
中国武術には?
中国武術でお返ししてやろう?
いつだかステファン相手にやっていた空手の前羽の構え。
それに近いが、今回は詠春拳だ。
無駄な動きを一切排除した、地味な拳法だが……。
「詠春拳か……? いや、なんだ? まあ良い!!!」
一閃天の様に、戦況を見極めそれに応じた技を繰り出してくる。
いわゆる静の気を持つ者に対しては、相手の陣地を奪い去って行くこの拳は有効である。
山中の修行にて、まず攻撃と防御を同時に行う事が比較的やり易いタイプのこの拳は、そう言った癖を付けるのに非情に有効。
一閃天の膝と肘が同時に襲い来る。
ご丁寧に俺の戦法が詠春拳だと思っているな。
「若干違う、ニュアンスが」
対抗する様に肘と膝をそらし、合わせる様に半歩踏み込んで拳を伸ばす。
「こ、これは形意拳ッ!? いや違う、何だこの拳は!?」
ニヤリ。
真剣勝負なのに、こう上手く作戦が行くと笑いが止まらん。
色々な拳法をこれでもかってくらい登場させました。
そりゃ、決勝に上がって来ているのは別ゲーやってたメンバーですからね。
BCoEっていうバトルゲーでの猛者達です。
感想は確り読んでいます。
そして、感謝のタイピング一万回を行います。
聖なる夜にもやるつもりです。
くそが。