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 さて、控室から闘技場へ向かう。

 決勝トーナメント決めの時はワープ使ってたくせに、今回は歩きだ。

 この歩いてる間も精神を研ぎすませる。

 正直嫌いじゃないよ。


 見据えるはトモガラ。

 毎回毎回、やってくれるぜ。

 こうやってちゃんとした決戦を行うのは、久々なんじゃなかろうか。

 バトルコミュニケーションオブエンカウントの時はひたすら付き合わされた。


 VRゲームと言うのにどっぷり浸かるのはこいつのお陰かもしれんな。

 そこは、感謝しておこう。


「マジになってんの?」


「当たり前だ」


「……なるほどな、容赦はしねーぞ?」


「望む所」


[二人には因縁でもあるのかーーー!! 両者共に睨み合っている!!]


[トモガラ選手はローレント選手に継ぐレベルのプレイヤーですね。裏情報によりますと、このゲームに誘ったのは彼だそうで]


[全ての発端はトモガラ選手かーーー!!]


[そろそろうざいですよテンション]


 戦いのゴングは既になっている。

 得物は?

 三節棍と鬼魔の長剣で行きましょう。


 対するトモガラは?

 戦斧を両手に二つ持っている。

 身体能力スキル優先のこいつは、明らかに超重量の武器を片手で軽く振るう。

 スキルがなくとも、十分な質量と破壊力を証明する存在。

 それがトモガラだった。


 半端なスキルは、叩き潰されるだろう。

 身体能力優先だと言う事は、重量級だからトロイ。

 そんな事は一切無い。


 このゲームの仕様上、スキル系統が違えば重複してかけれる。

 ハイブースト、マッシブ、ハイポテンシャル。

 つくづく、身体能力強化スキルゲーだって事をこいつはいち早く感じ取った。

 えっと、確認出来るだけでこいつはどれだけスキル持ってた?


 ブースト、ハイブースト、マッシブ。

 ポテンシャル、ハイポテンシャル、フルポテンシャル。


 いや、こいつ頭おかしいだろ。

 思い出した限り、これだけの身体能力強化のスキルを持っていた気がする。


「ハイブースト」「ストリング」「フルポテンシャル」


 そして開幕早々、本気だと言うことだった。


「ブースト」「マジックアンプ・ナート」「マジックウェポン・ナート」


 お互いが詠唱を終えて再び視線を躱す。

 トモガラが言った。


「全ての力は、発展する技の礎となる」


「ん?」


「昔てめーが言った言葉だよ」


「…………」


「覚えてないなら良い。蹴散らしてやるよ!!」


 二本の戦斧が同時に振り下ろされた。

 間合いは?

 大きな戦斧ならば、届く。

 野郎、柄の端を持って遠心力を欠けてやがる。

 ……ぐっ!!




***観客席サイド***

[ステージが割れたあああああ!!]


[GMベータ、落ち着いて。設定上迫力を出す為に一定以上の威力を持った攻撃には壊れる設定にしていたでしょう?]


[あ、そうだったね]


[現時点でそんな攻撃力を持ってる事自体ヤバイって設計のGMゼータが言ってましたけどね]


[おわわ! ならヤバいんじゃないの!? ローレント選手どうなっているーーー!?!?]




「だ、大丈夫なんですか?」


「ほら、よく見てみな。紙一重で避けてるから」


「……運の良い奴だ」


 ローレントが一撃でやられたんじゃないかと焦るツクヨイ。

 隣に座っていた十八豪が安心する様に、と顎を動かして示した。

 一閃天も後ろからジッと見つめている。


 その視線の先には転がって避けるローレントが居た。

 バキバキに崩されたのは、ローレントが愛用していた武器である三節棍。


「でも、ステージが割れるなんてヤバいわよね?」


「レイラお姉様!」


 ツクヨイは、不安を煽るレイラの言葉に、思わず声を上げた。

 彼等は身内が勝つならとっちでも良い、戦いが面白ければ良い派のようだが……。

 ツクヨイは兄弟子が負けてしまわないかとても心配だった。


 この人達は特殊だ。

 と心の中で思う。


 ツクヨイ自身もゲームにどっぷり浸かる廃人である事は確かなのだが、第一陣である、ゲームの初期から活動しているレイラ達はその上を行く廃人だった。


 まず、そこそこ野良パーティを組んで狩りを頑張ってるのに、ソロで気ままにやってるローレントにレベルで勝てないのがおかしい。

 というか、ログイン画面見ても大体いつもいる。

 どう見てもツクヨイより年上なのに。


 ……とツクヨイは改めて自分の理想のローレントと現実にありそうなローレントを想像してみてため息をつくのだった。

 その印象は、十八豪の気軽な一言で大きく崩れさる。


「ああして戦ってる姿は、憧れるねえ?」


「え、は? い、いえいえそんな!! だってどうせ、ゲームやってる廃人ですし」


 一応自分も顔面少し弄ってる身だから、と声にならない声で思った。

 それでも誇れる所は、少し鼻を高くしてるだけだということ。

 VRゲームの世界でキャラメイクをガッツリやってる人間なんてごまんといる。

 不自然さが表に出るので余りやらない方が良いとされているが、それでもやる人は多い。


 ガッツリやって姫プレイしようとしている友人も居た。

 流石にパンパンに膨れて潰れた顔をスッキリさせると違和感がバリバリだった。

 案の定ナチュラル系キャラメイクの人達には見向きもされないが、同じ様に違和感バリバリの顔面を持ったプレイヤー陣にはモテて、楽しそうに姫プレイしていたのを思い出す。


「はは、リアルの事まで考えてんだね。あいつはリアルもあんな感じだったよ」


「え、あった事あるんですか?」


「俺がオフ会に誘ったんだよ! よ、十八豪~~!」


「ちょっと! こっちくんじゃないよ!」


 現れたのは二日目初戦を戦っていた久利林。

 十八豪の隣に無理矢理座ろうとして殴られていた。

 そして「邪魔よ!」というレイラに何やら怪しい薬品をぶつけられて。


「はれほれ」


「もう、しゃんとしなよ」


「すまん~~~あらあ~~~」


 十八豪に一閃天の横に座らせられた。

 ツクヨイは、正直周りの観客さんごめん、と心の中で謝った。


「っていうか私も気になるわね。アンタ達一体なんなの?」


「いや、そりゃこっちのセリフだよ限りなく上級に近い中級薬師ちゃん?」


「まあ、院卒製薬会社だからその辺の知識はね?」


「うわあ! エリートだ! レイラお姉様! じゃあ、旦那のガストンさんは……?」


「ニートである」


「え?」


「こら、嘘つかない。っていうか誰が旦那な訳?」


「えええー! びっくりしました!」


 結局レイラとガストンはそれ以上を言わなかった。

 ネトゲの世界で、個人情報を聞くのはモラルに反する。

 だからツクヨイもそれ以上に聞こうとはしなかった。

 後ろで一閃天がボソっと呟く。


「……あいつはホントにニートだがな」









今日は二本更新でした。

戦い、長くなりそうでした。

まあ、良いでしょう。

決着自体はパッと決まる感じで。



あとがき、また追加します。



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