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試合が着々と消化されて行った。
だが結局シード権をもったプレイヤーと戦えるのは翌日に持ち越しになった。
俺と三下さんの戦いは、公式サイトのホットランキングに載っていた。
公式動画としてピックアップされるのは良いけど。
プレイヤーが有志で上げた予選動画がトップになるってどういう事。
コメントが荒れている。
ガンストが負け犬だとか、仕方が無いとか。
俺に対するディスは?
思ったよりも少なかった。
それよりも、ケンドリック陣営に対する色んな疑惑が問題視されていた。
ゲーム内通貨を払って集団戦を持ちかけて勝ちを拾うのは、どうなんだろうか。
っていう話題だ。
何でもありだろ派や、流石にモラルは考えろ派が居た。
どっちでも良いぞ、俺が蹴散らす。
何でもありは何でもありで納得出来て、そう言う一派を蹴散らす事で、反対派はスッキリする。
そういう寸法ね。
「おぃぃ、フレンドリスト。何いきなり送ってくれてんの」
「よろしく」
なんと、三下さんにフレンド送っちゃいました。
いやはや、快諾してくれて何よりです。
「で、なにここぉ……」
気怠そうにしているが、バトルフェイズはまた続いていると言う事だな。
誘った理由は楽しかったから?
十分すぎる程の理由付けだと思うけど?
「水上闘技」
「みりゃわかる」
足場を思いっきり減らしてみた。
川の上に固定された浮き梯子の上で戦うのだよ。
「今日の死合いは楽しかったから、今後ともね」
「御免被りたい所だが、俺も強くなりてぇ、そっちのプレイヤースキルが欲しいからな」
さて本題、教えてほしいのはカウンタースキルだったりする。
目を見張る物があった、彼の防御技術にはね。
もちろん、こちとら受けは極めてるつもりだが……ね?
スキルを織り交ぜる、ありだと思います。
っていうか推奨すべき、この先モンスター相手にソロ特攻しかけるには必要不可欠だ!
「なら、アポートは教えてくれんのか?」
「それは無理」
「はあ? ならカウンタースキルも俺の専売特許だな」
専売特許と言うか、単純に扱える奴が余り居ないからでは?
まあさておいて、お互い木刀を片手に水上闘技のスタートだ。
「やっぱりリアルでなんかやってんなぁ!!」
「もち」
なんとまあ、水上闘技では踏ん張り等がオートで効くスキルが一枚上手でした。
接近戦を持ちかけて、ブロッキングのクリティカル判定を受けて叩き落とされてます。
俺も禁じ手とスキル使用は無しで、真っ向から勝負を仕掛けている。
いつのまにかお互い木刀を投げ捨てて、三下さんも我武者らながら拳を振るってくる。
そこからは俺の勝ち越しになった。
「中国拳法かよ!」
「ま、色々だ」
「で、俺はこんな事しててお前に付き合う価値はあんの?」
「じゃ、守りの型から」
三下さんがニヤリと笑う、そして俺も。
いつしか友情が産まれているみたいだな、この調子で遊べるメンツを増やして行こう。
何を教えてみた?
それは秘密だ、カウンターに活かせる物としては……。
踏み込みの力を利用した二の打要らずの拳か?
それとも更に防御に力を入れた歩法か?
彼は明日練習すると行っていた。
決勝トーナメントを見ずにな。
好敵手が増えるよ、ラッキー。
ラスト、三下さんを川に叩き落として。
その後ローヴォと共に向かったのは、セレクの店だったりする。
「ひ、久しぶりじゃない」
なんだか、よそよそしかった。
せっかく来たってのに……。
「な、なんの用なの? 私忙しいんだけど」
「え、それなら仕方が無い。出直すよ」
踵を返すと腕を掴まれた。
「待って、やっぱり暇」
「はあ」
「ちっとも上手く行かないじゃない! 全く! で、ローレント、何の用?」
カウンターに革を並べ立てて行く。
バトルゴリラの皮、ゲッコー達の革。
後は、虫の素材の中でもとりわけ有用であるとされるマジックビートル。
そしてハントスパイダーの糸。
虎の皮に梟の羽も多い。
「た、大量ね……」
「そろそろ耐久度も落ちて来た」
耐久値の減った装備を回復させる度に。
耐久ゲージの母数が減って行く。
いずれ、武器にも導入されるとかされないとか?
そうなってくると、お気に入りの武器を多数所持しなければならなくなる。
何とも世知辛い物だった。
「流石に明日までには無理よ、この量」
「いや、納期の指定は遅くて大丈夫」
「そう、なら飛び切り良いもの作ってあげるわね! 久々に持ち込んでくれたし……、そうだお茶でも」
「あー兄弟子こんな所にいました! ちょっと師匠様が探してましたよ!!」
「え、本当?」
ツクヨイとパンダのヤンヤンがセレクの店に入ってくる。
おっと、何故露骨に舌打ちをした二人とも。
なんらかの因縁があるのだろうか?
「さ、早く来てください! 待ってますよ!」
「ちょっと、試合で疲れてるんだから。一息くらいつかせなさいよ?」
「だめですー。ぶらっくぷれいやぁとくれいじぃさいこばとらぁには休息要りません! さ、早く行きますよー馬鹿兄弟子ー」
手を引かれる様にしてツクヨイに連れ出されて行く。
セレクのこらーという声が遠くなって行き……。
「最近、見とらんが、調子はどうかのう?」
明らかに機嫌が悪く、部屋を閉め切って煙まみれになるスティーブンが居た。
「まあ、そこそこですけど」
「さて、今回はサボった分ハードにいくからの?」
「へ?」