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ログインしたら朝でした。
はい、現実では夕方ですかね。
夕飯食べたけど、一応ゲームの中でも満腹度が減っていたので何か食べることにする。
サンドイッチは昨日狼にあげたんだっけ。
噴水公園には人だかりが出来ている。
今日も露店市場は賑わっています。
奥の屋台コーナーにサイゼを見つけた。
とりあえず何か食べる物が無いか聞いてみた。
「おはようございます」
「あ、ローレントさんおはようございます! 夜の狩りはどうでした?」
「そこそこの成果でしたよ」
うん、実入りはある意味デカい。
懐は賞金やら彼等の装備やらで賑わっているのだ、後は全部売りさばいてしまえ。
「朝の腹ごなしというわけでして」
「あ、そうなんですね。エッグサンドが200グロウ、お肉も挟むと300グロウです。あとは具材などは立て札に書いてありますので、お好きなカスタマイズも出来ますよ!」
素晴らしいお店だ。
サンドイッチ専門店なのがちょっとなぁ、朝からガッツリ食べたいのだ。
「サンドイッチだけなんですか?」
「朝は狩りに行く人向けに包めるものばっかりなんです」
そういうことね。
なら仕方ないな、ラビットソテーソースサンドにしてみようかな。
「これとこれで、あと野菜マシマシにしていただけますか?」
「は〜いかしこまりました! 少々お待ちください!」
朝から素敵な笑顔を見れて今日も頑張れる。
朝からガッツリ、たがバランスも大事なのだ。
「あら? どうしたんですかその子」
「ワォン!」
足下を引っ張られる様な感覚。
サイゼが俺の足下に目配せをしていた。
視線を送ってみると、小さな犬が初心者の服をはむはむしていた。
なんだこいつ、ってかさらにボロボロになるから辞めてほしい。
「……か、かわいい!」
料理そっちのけで、サイゼは子犬を抱き寄せる。
ちょっと、その手でサンドイッチ触らないだろうな。
「この子、ハスキーでしょうか? それともアラスカンマラミュート?」
「…………さぁ?」
犬なんて柴犬とかそのくらいの知識しか無いしな。
どっちかというと犬じゃなくて狼に似ている。
……狼だと?
「サンドイッチ食べる?」
「ワォン!」
店にあったサンドイッチを指差すと、子犬は更に元気に吠えた。
これは、面白いことになったかもしれん。
とりあえず鑑定する。
【リトルグレイウルフ】灰色狼(幼体):Lv1
人なつこい犬種の狼の子供。
魔物にしては珍しく、人と同じ物を食べ、同じ様な生活を営む。
群れというより社会に溶け込む能力を持っている。
狩りが得意。
※躾けるには【調教】スキルが必要。
鑑定レベル上げようかな。
それだけじゃわからないんだけど、昨日の夜狩りの関連性とかなんか書いておいてほしい。
「たぶん、昨日プレイヤーキラーを二人倒したんですけど、その時狩られていたフォレストオオカミに初級ポーションとサンドイッチを上げて助けてあげたんです。それのせいなんですかね」
サイゼは絶句していた。
何かおかしいことを言ったのか。
「これはちょっとレイラさん呼ばないと、事案です、一旦店閉めてそれでガストンさんがいる鍛冶屋の一室を借りて」
ちょっと、落ち着いて。
それから彼女を宥めるのに数分を要した。
その間、俺はこの犬にサンドイッチをあげて戯れていた。
改めて食事を終えて、たまたまインしたレイラに連絡して、ガストンの居る鍛冶屋に向かうのである。
「ヘジーとザークって最近有名になってたプレイヤーキラーじゃない。良く狩れたわね」
レイラが呆れた顔をする。
「ふむ、いろいろあって魔物を助けたら、その子犬がやってきたであるか?」
事態を理解した安定のガストンが犬を睨みながら言った。
犬が怖がっているからやめてほしいが、わざとやってないんだよなこの人も。
「あ、どうせなら手に入れた武器とかここで卸しても良いですか?」
長剣なんてどうせ使わないので、持ってても無意味なんで。
二人の財産なんぞ市場の海に放流してしまった方が良い。
二度と手に入らないくらい遠くに渡ってしまえ。
そう思っていると、心を呼んだのか、レイラがポツリと呟いた。
「……鬼ね……」
失礼な。
改めて戦利品を確認する。
【丈夫な両手斧(+3)】
使いやすいし丈夫な両手斧。
取り回しし易い、突き攻撃はよわいが、斬り下し攻撃に補正がつく。
・攻撃15(+3)
・斬撃Lv1
・耐久Lv1
・耐久100/100
強くないこれ?
「うむ、攻撃補正3というのはそこそこの腕の持ち主である、これを作った鍛治師を知りたいである」
ガストンがそう言っていたが、一度盗られると製作者の名前は消えてしまうらしい。
ハイ次ぃ。
【黒鉄の長剣】
重たいが丈夫な黒鉄で作られている。
・攻撃20
・耐久Lv2
・耐久100/100
大剣と同じ攻撃力もってるんですがこれ。
「黒鉄は鉄インゴットの上位に位置するのである。一応我が輩もあつかえるのであるが、黒鉄を持ってる人なんて攻略組くらいしかいないのである」
そこから盗ったのか。
さすが高レベ帯だっただけあるな。
両手斧はいらないから売っぱらうが、黒鉄で出来ている長剣はレイピアに作りなおすことは出来るのだろうか。
もっと鋭さが追求できる気がする。
「可能である、まかせるのである」
ガストンは二つ返事で意を汲み取ってくれた。
流石です、ガストンさん、痺れます。
「残りは凡庸な革鎧みたいね、フォレストウルフの歯形で一杯だけど」
「ちょっと! 私を仲間はずれにしないでよ!」
放していると、セレクが小部屋に割り込んで来た。
一体どこで嗅ぎ付けて来たんだろうか。
「服は私に任せなさい!」
「えっと……」
「超絶カスタムしてあげるんだから!」
正直、こうグイグイ来る系は苦手なのだが。
そう言う思ってるうちに、テーブルに置いてある装備をかっさらって行くセレク。
たまらずレイラの怒鳴り声が響く。
「セレク! あんたちょっと落ち着きが無いわよ!」
「……ごめんなさい」
力関係が大分わかって来た気がする。
「なんか嫌われちゃってるみたいだから、汚名返上しようと思って」
「だがそう突っ走る癖は直した方が良いであるな」
ガストンから叱咤されると、なかなかに心に響きそうだ。
そんな声をしている。
まぁそこまでいじめる気も無いし、彼女も変な打算というより必死こいて信頼を回復させようとしているのが伝わってくる。
「もとより怒ってません」
「うそでしょ? だって顔が恐いもの」
「……」
「ほらぁー!」
いや、今のはお前が悪いだろ。
「今のはセレクが悪いであるな」
「今のはセレクが悪いわね」
「今のはセレクさんが悪いです」
お前らも悪いぞ。
誰も否定してねぇ。
結果的に装備素材のした取りしつつ、俺の新しい装備を作ってもらうことになった。
あれでもセレクはかなり腕のいいプレイヤーなんだとか。
「ではローブ込みで新しい装備の新調をお願いできますか」
「まかせて!」
そう一言だけ告げて、彼女は部屋から出て行った。
忙しない女性である。
「問題はこの子ね」
「ドッグタグくらいならすぐつくるであるが」
「それより首輪の方が可愛いです」
レイラ、ガストン、サイゼが思い思い呟く。
「モンスターって懐くんですか?」
「そこよね」
最後に残ったフォレストウルフに回復ポーションとサンドイッチを恵んだだけだぞ。
モンスターがそれで懐くんだったら、誰も苦労して狩らないんじゃないか。
「何かしらのトリガーがあったんだと思う。まぁラッキーだってことで、軽く受け取っておいたら?」
「そうします」
首輪はセレクに頼むことにした。
飛び切り可愛いのをお見舞いしてあげるんだからとメッセージが飛んで来たが、別に可愛いのじゃなくて丈夫で首が守れる様なデザインにしてほしかった。
成長早そうだし、装備はまだ買わないでおこう。
「ワォン!」
女性に交代で抱かれながら、嬉しそうな目をする駄犬を見てそう思った。
「狩りに連れて行くのも良いが、完全に野生の感覚を失ってそうであるな」
「……はい」
ガストンの呆れた口調に、俺も掠れ声で同意するのであった。
さて、装備が整う時間までまだしばらくある。
何をするかと言ったら、【調教】スキルを買いに行こうと思う。
なに、金はある!
色々売っぱらって結局25000グロウくらいにはなってる。
これはかなりデカいぞ。
道具屋で【調教】スキルをさっそく買おうと思ったが……。
先んじてNPCに調教師がいないのか聞いてみることにした。
「あの、この辺りで調教師とかそう言うことを教えてくれる人はいらっしゃいますか?」
「なんだ、買わないのなら帰んな!」
なんと殺伐とした対応だろうか。
最近露店が賑わっててこういう道具屋に客が入らないから困ってるのかな。
でも一定のプレイヤーはここでスキルを購入すると思う、なんでこうも機嫌が悪いのか。
「犬アレルギーだからはやくどっかやってくんない?」
そう言うことでしたか。
それは失礼しました。
おい、駄犬、謝っとけ。
「ワォン!」
「わっぷ!? やめてくれよ!?」
とりあえず簡易食料を数個購入しておく。
すると道具屋の店主は快く教えてくれた。
「調教師はこの町には居ないよ、次の町には確かいたかな……?」
「そうですか、ありがとうございます。あとこれもください」
【調教】スキルの購入が確定した。
第二の町を目指して行動しなきゃいけないのか。
確かボスは熊だったよな……、はたしてソロで倒せるのか。
【調教】
・熟練Lv1/6
ふむ、面倒くさくなくてよろしい。
ポイントを振る気は無いけど、いらんパラメーターが無いだけスッキリする。
そういえば、ポイントにまだ振ってなかったので、スキル画面をこのまま操作する。
もちろん【アポート】に全振り予定だが……、
【アポート】
・精度Lv5/10
・距離Lv2/10
・重量Lv10/10
・詠唱Lv1/1
重量マックスにして、残りは精度にしておいた。
順調に育って来て、嬉しいことである。
重量項目に目を通すと、500キロまで転位可能。
となっている。
引き寄せられる物は生物以外。
距離はレベル2で半径二十メートル。
精度は少しややこしいのだが、距離を十分割して距離レベル内は精度ほぼ100。
そこからどんどん減って行く。
重量も一つ要素になっていたが、もうマックスになっているので関係無い。
『第二の町の道場に来い』
メッセージが来た。
さっそく昨日の道場の下りを実践しているのだろうか。
『まだ第一、ってか犬が仲間になった』
『くそが、ってかなにそれ、おまえ違うゲームしてんの』
断じてそんなことは無いはずなんだが。
まぁ色物プレイだってことは掲示板で散々言われてわかっているし、このスタイルを変えるつもりも毛頭ない。
【調教】スキルは魔物を従えることが出来るんだとか。
テイマーかよ。
一々召喚帰還とかそんな便利なスキルではない。
鑑定でスキルを見た感じ、そんな説明しか書いてないから。
早い所第二の町まで赴いて、その調教師とやらに話しを聞かなくては。
この駄犬がリトルグレイウルフって事は、成長したら大きくなる。
手に負えなくなる前に躾ける計画である。
餌の補充がてら、西の草原へと出てグリーンラビットを狩ることにした。
駄犬は後ろからちょこちょこ着いて来て、石を投げつけ怯んだ兎に噛み付いていた。
駄犬の隙間を縫ってグリーンラビットに代かえの長剣を突き刺し倒す。
【解体】の効果なのか例によってドロップするのは【草原兎の皮】と【草原兎の肉】。
「わふわふっ!」
こいつ、ドロップ拾う前に喰らいつきやがった。
早急に躾けないと!
十数体程狩り続けていると、メッセージが入った。
『できたわよ! 手塩の力作よ!』
なんと漠然としている。
まだ午前中だし、一度装備を取りに戻って次は北の森の奥まで進んでみよう。
出戻りするように、北のフィールドを兎狩りしながら戻って行く。
ドロップ品は全てアイテムボックスへ。
やっぱり便利だ。
ーーー
プレイヤーネーム:ローレント
職業:魔法使い見習いLv10
信用度:50
残存スキルポイント:0
◇スキルツリー
【スラッシュ】
・威力Lv10/10
・消費Lv1/10
・熟練Lv1/10
・速度Lv1/10
【ブースト(最適化・黒帯)】
・効果Lv3/10
・消費Lv3/5
・熟練Lv3/5
【アポート】
・精度Lv5/10
・距離Lv2/10
・重量Lv10/10
・詠唱Lv1/1
【スティング】
・威力Lv1/10
・消費Lv1/10
・熟練Lv1/10
・速度Lv1/10
【投擲】
・精度Lv1/3
・距離Lv1/3
【掴み】
・威力Lv1/3
・持続Lv1/3
【採取】
・熟練Lv1/3
・眼力Lv1/3
【解体】
・熟練Lv1/3
・速度Lv1/3
【鑑定】
・見識Lv1/6
【調教】
・熟練Lv1/6
◇装備アイテム
武器
【凡庸の大剣】
【鋭いレイピア】
装備
【初心者用のローブ】
【初心者用の服(全身)】
【黒帯】
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朝更新忘れてたのでお詫び連投です。
次回川回、漁師の下りですとか行っときながらまだでした。
申し訳ございません。
今日はもう一投します。