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機動性は重要だな。
多対一。
針の穴を通す様にして、抜け出さなければ活路は得ない。
「ぐあば!?」
また抜きスライディングを躊躇無く出来る様になれば十分だけど。
ついでに抜き手で玉を打っておけ。
女性でも然りだ、変態だろうがなんだろうが戦いには関係無い。
普通に効くから、マジで。
軽装の男を仕留めた。
ちらほら逃げ出す奴が出て来たので、会場を大きく逃げ回りながらそいつらを仕留める作戦へと切り替えた。
勿体無い。
経験値入るんだから勿体無い。
ちなみに龍嶮のじーちゃんが教えてくれた。
糞爺は珍玉剃刀拳と自称していた。
「女プレイヤーでかかれ!」
「ちょ、男がよってあたしらは魔法だって話でしょ!?」
「うるせー!」
ガンスト、魔法使いプレイヤーと遠距離武器を持ったプレイヤーに怒鳴っている。
いいか、女の子は優しく丁寧に斬れ。
容赦はするなよ?
撲滅痴漢冤罪、慈悲はない。
ついでに俺にレイプ魔とか行った奴らも顔は確りと覚えている。
残念ながらDグループは誰かさんの子飼みたいだけどな。
「きゃあ!!」
三節棍を引き戻して、両手で長剣を握りしめると迷わず女性プレイヤーの顔面を目指した。
魔法が飛んでくる、発動が早い火属性の初級スキルかな?
あとは矢が身体を霞めるが気にしない。
「スペル・バイブレイド」
打ち消せ、そして万倍で返す。
狙い?
眼球に決まってる、ゲームギアの奥にまで痛みを焼き付けてやるのだよ!
鬱陶しい記憶を思い出した!
くそ!
電車で手首をもたれて痴漢にさせられそうになった事がある。
返し技で相手の手首を握りつぶして粉砕骨折させたが、その時の女性がこう言った。
“きゃあああ! 痴漢よ!!!”
暴力事件の間違いだろうに、お陰で二駅走るはめになったんだがな。
傷害事件?
いえいえ、正当防衛です。笑。
「ひっ」
視線があっただけで、失礼な女だな!
横ばいに思いっきり三節棍を殴りつけておく。
女性とは思えない悲鳴を上げて場外判定。
よし、次。
***
「おい、おい、ローレントってポイントトッププレイヤーだよな?」
「他はシード権持ってんのに、何であいつ予選会場に居るんだよ?」
「聞いた話だと、上位陣には運営からメッセージが言ってるらしいぞ? 試合盛り上げ特別枠だって事で、日刊GSONPCSに書いてある」
「ってかもう、ありゃ狩場状態だな……」
「運営いいいいいい!! 何故あいつを解き放っている!!」
「うわ、相手の武器投げて眉間にうわっぐろっ」
「そういや俺達、あいつにレイプ魔とか言って噂して遊んでたよな?」
「お、おい。こっち見てるぜ?」
「顔覚えられる! 早く逃げるぞ! 良かった参加してなくて!」
***
レベル差があるのかな?
ぜんぜんレベル上がる兆しがない。
そして敵はどんどん逃げ出す始末。
後ろから攻撃を加えているが、盾勢も逃げに転じてからやり辛くなった。
いや、俺は誰だよ。
ラスボスか?
最初は俺が撤退戦みたいな事をしながら戦ってたのに。
なんでお前らが撤退戦してんだよと言いたい。
「お、おい。せっかくこいつをボコろうぜって金だって払ったのに何で……」
「ガンストさん、こりゃ無理ですよ」
「ケンドリック勢として優勝狙って入ったけど、これは流石に俺達も引きましょう」
ガンストは引かなかった。
呆れた様に談合仲間達も場外へと飛び出して行く。
戦意喪失するくらいなら大人しく経験値になってほしいのだが?
最終的にぽつんと一人残って斧を振り回すガンスト。
虚勢かな?
「だいだいてめぇなんぞ! 俺一人だけで十分編んだよタコォ!」
試しに一歩近付いてみる。
あ、斧をぶん回すスピードが上がった。
懐に手を入れた振りをしてみる。
お、目を閉じてぶん回してる。
「ぉぉおあああああぁぁあああ!!!!!」
どうしようこいつ、呆れてどうしようもないんだけど。
出来る限りの手を尽くすとしたら、捻り出すとしたら。
まず邪魔な斧をどうにかしよう。
一振り、そして返す刀で両腕がボトリボトリ。
「お! ああ! お、俺の腕ぇ!」
次は両足の部位破壊切断。
これで達磨だな。
胴体を蹴飛ばして三本抜き手で視力を奪う。
「ひ、あ、……ひっひいっ」
「バカにした奴はいずれこうなるぞ、俺執念深いし?」
会場に居たよな、確か。
流石戦士というだけあって、HPはギリギリ残っているようだ。
ショック死しないだけでも十分すごいよな。
ってことで、胸に鬼子の長剣をゆっくり刺して行く。
[Dグループ一位通過者:ローレント]
[Dグループ二位通過者:ガンスト]
個人戦で再び相見えるときを待っておこう。
さらばだガンストまた会おう。
おい何静まってんだ!
ここは拍手するところだろう!
「……あいつだけ別ゲーじゃねーか」
「容赦ないのはわかってましたけど……、妹弟子やめたくなりました」
「ミツバシ、ツクヨイ、……あいつとは仲良くしとこうな?」
「細工師、新しい釣り竿でも納品しに行く、あと漁網作っておく」
「石工、石柱の納品の質をあげておくぜ」
「錬金術師、とにかく尽くします」
「アンタ達、……揃いも揃って何言ってんのよ。あいつがクレイジーサイコバトラーなのは今に始まった事じゃないって……?」
レイラは溜息を付いた。
そして、その後ろで頬を赤らめて関心し、悶える十六夜が居た。
「重たい、重たいですよローレントさん! そこがまた」
なんだかヤバい事になっておる。




