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初、夜の狩り。
なんだかんだ一日がすごく長かった。
俺はまだまだログインできるけど。
昼夜逆転のVRゲーで、時間の進行は現実と同じねぇ。
こりゃ第二の町まで向かうには、半日くらい必要なのかな。
諸々の情報を仕入れとかなきゃいけないみたいだ。
なんだかんだ腰に付けた髑髏は良いアクセサリアイテムになった。
というかアクセサリスロットに何故か収まっているのが、何とも言えない。
普段着はこんなにダークじゃないのよ。
夜狩りが終わったら一度町で休んでログアウトしよう。
明日の予定は鎧装備の新調で。
夜のルートは、北の森へ向かってみよう。
流石に鬱蒼とした南の森は危険だと判断した。
ちなみに作ってもらった大剣とレイピアの仕様はこちら。
【凡庸な大剣】調整済み:ガストン
重たいが破壊力はなかなかの物。
切れ味よりも、叩き潰す系。
重心を剣先に集めているので攻撃力が上昇しているが、やや扱い辛い。
・攻撃22
・防御Lv1
・耐久Lv1
・耐久100/100
【鋭いレイピア】製作者:ガストン
凡庸のレイピアよりも、更に鋭さを追求したもの。
突き刺すことを追求したことにより打ち合うことに向いてない。
・攻撃12
・耐久100/100
う〜ん、ガストン良い仕事してる。
元々レイピアで打ち合うつもりは無い。
殺しきれなかった敵にとどめをさすための物だからね。
北門から延びる道を進む。
夜の敵はグリーンラビットではなく、ナイトラクーンという狸だった。
戦ってみた感じはグリーンラビットよりもやや強い印象。
というか、夜行性で目が光ってる。
そんで、わらわら群れてくるので無数の目が怖い。
夜のフィールドが、こんなにリアルで暗いとは思ってなかった。
松明とかカンテラでも持ってくればよかった。
でも片手が塞がるからなぁ……。
目の前にナイトラクーンが飛び出してくる。
茶グロい体毛で見辛いが、目が光ってるのでまだ戦える。
「ブースト!」
足に喰らいついてくる狸を踏みつける、そして心臓部分をひとつき。
まだ息があるな、なら尻尾を掴んで振り回してはどうか。
鳴き声に群がってくる狸を掴んだ狸で蹴散らして行く。
大剣を使うまでもない、蹴散らした狸にとどめを刺して行く。
【夜狸の毛皮】
ナイトラクーンの毛皮。
少し癖があるが丈夫。
【夜狸の瞳】
不思議な力を持った瞳。
錬金術で使える。
一匹のナイトラクーンの断末魔が響いて、一瞬身体の動きが固まった。
心臓を鷲掴みにされた感覚がある。
プレイヤーネーム:ローレント
職業:魔法使い見習いLv7
状態:麻痺(微)
身体をチェックしてみると、状態異常が発生していた。
一体どういうことだ?
ナイトラクーンを鑑定してみることに。
【ナイトラクーン】Lv2
夜行性の狸型の魔物。
鳴き声で仲間を呼び、瀕死に陥ると金縛りの魔法を使う。
光る瞳に注意。
ご丁寧に金縛りと記載されていた。
なるほど、デバフを使用してくるということか。
気をつけなければならないな。
麻痺は時間経過で消滅した。
夜の狩りは続く。
そろそろ森の入り口に着く頃だ、昼と比べて進行は遅い。
おっと、途中でレベルが上がっているのを忘れていた。
わらわら群がってくる狸美味しいです。
プレイヤーネーム:ローレント
職業:魔法使い見習いLv8
◇スキルツリー
【アポート】
・精度Lv4/10
・距離Lv2/10
・重量Lv7/10
・詠唱Lv1/1
今の所装備品を手元に引き寄せることしか使ってないから、精度に全振りしておく。
重量がそこそこあると、ミスって自分に突き刺さってしまったら元も子もない。
狩りに夢中で、レイピアを装備した時、新しいスキルを覚えていたのを忘れていた。
◇スキルツリー
【スティング】
・威力Lv1/10
・消費Lv1/10
・熟練Lv1/10
・速度Lv1/10
突き攻撃のことかな。
レイピアの一次スキルだとしたら、相変わらず魔法職の近接スキルの育ちの悪さと言ったらない。
それでも威力補正で攻撃が1.3倍くらいになるからとどめでガンガン使って行こう。
スラッシュの威力はマックスだと2倍、レベル1だと1.5倍かな。
戦士職だとしたらこうなるんだって。
【適正職スラッシュの威力倍数】
Lv1 1.5
Lv2 1.6
Lv3 1.7
Lv4 1.8
Lv5 1.9
全てマックスにするとMAXボーナスで威力倍数が2.0になる。
要するに完成されたスキルは中途半端なスキルよりも強くなる。
うーむ、色々スキルを取った方が良いのか、それとも一つを確り上げて行けば良いのか。
未だ判断に迷う人が多そうだ。
俺の場合、近接技は威力オンリーの強化で良い。
打ち合うだけならプレイヤースキルでなんとかなりそうだし。
北の森へ北。
これで森の北まで足を進めると、北の森の北になる。
そんなことを考えながら、森の入り口から足を進めて行く。
森の中には夜狩りのパーティがちらほら居た。
お陰で、淡いが道を照らす灯りがでて幾分行動しやすくなっていた。
敵は変わるのか?
普通にフォレストウルフ出て来たんだけど、まぁ夜行性だもんな。
【フォレストウルフ】Lv5
昼夜行動がきく森のハンター。結束力が強い。
森に居るフォレストバードやフォレストラビットを狩る。
昼間は単独行動が多いが、夜になると群れでの狩りを行うので注意。
唸り声が聞こえる。
……囲まれたのかな?
周囲に気配を感じるが、目視は出来ない。
しまったな、流石に単独で夜の森は危険だったか。
牽制がてら、目の前でこちらを窺っている一匹だけでも仕留めようと思ったら、遠くで狼の悲鳴と聞き覚えのある声が聞こえた。
「——キャウンッ!」
「ちっ! あっちいけ雑魚狼!」
「あんまり声がデカいと夜が楽しくない。はやく蹴散らしてあのパーティを追うぞ」
ヘジーとザークだった。
奴らは遠くで孤立して狩りを行っているパーティに奇襲をかけるつもりなのだろうか。
潜伏しながらよってきた狼を蹴散らしている。
彼等のプレイヤーネームは、相変わらず真っ赤に染まっていた。
そして幸運なことに、狼の悲鳴に呼ばれるように、フォレストウルフは悲鳴の方へ、プレイヤーキラーである二人の方へと向かって行く。
助かった。
狼の優先度的に、向こうが大事だったか。
そりゃ一人なんて群れでいつでも狩れるもんな。
今が逃げるチャンスだが……。
仕返しのチャンスでもある。
まさかこんなに早く廻ってくるなんて思わなかった。
狼に気を取られて俺にはまるで気付いちゃいないようだ。
よし、このまま大きく迂回して近づこう。
「ちっ! わらわらわらわら! うざってぇよな!」
「お前が余計なことするからだ」
彼等の装備は妙に羽振りが良さげだった。
こうやって森で潜伏し、プレイヤーキラーを繰り返して奪って来たのだろうか。
戦闘の混乱に乗じて鑑定しておく。
【ヘジー】職業:野盗Lv11
・犯罪者、レッドネーム
[強奪、強盗、プレイヤー及びNPCキラー]
・賞金10000グロウ
【ザーク】職業:野盗Lv12
・犯罪者、レッドネーム
[強奪、強盗、プレイヤー及びNPCキラー]
・賞金10000グロウ
攻略組と同じくらいのレベル帯じゃないか。
だが、賞金首だ。
NPCキラーをしてしまうと、NPCの住む町から賞金をかけられる。
ってかこいつら、許すまじ。
なんというプレイスタイルだろうか。
無駄に高いレベルなので、フォレストウルフに囲まれた程度じゃ彼等が怖じ気づくことは無い。
十数匹いたフォレストウルフも彼等の剣戟によって次々斬り捨てられて行く。
【スラッシュ】で切り下げた後、すぐ切り上げ、そしてまた【スラッシュ】で斬り捨てる。
中々に良い腕をお持ちで、俺なんか【スラッシュ】一発打つだけで大きな隙が出来るというのに。
適正職だとこういう動きも可能なのか……、やっぱり魔法も数種類取っておこうかな。
狼達もただ奢られてばかりではない。
大振りの動きになった瞬間の隙を狙って足や腕に喰らいついている。
「おいザーク! 盾にしやがったな!?」
「痛いのが嫌いなんだよ」
すかしたザークと激昂するヘジー。
今がチャンスだな。
こっそり【ブースト】を掛けて飛び出す。
レイピアはもちろん?
投げて使うもんだ。
「うぐぁ!」
「情けねえ声だな! 冗談が過ぎるぜ、ヘジー! ……なんだその剣は?」
良い感じに腹に貫通したぜおい。
装備の羽振りが良いとしてもしょせん革鎧だ。
ガストンお手製の鋭いレイピアなら行けると思っていた。
「アポート!」
「だ、誰だ!?」
接近しながら右手にレイピアを呼び戻す。
そして怯んだヘジーの背中を蹴り飛ばして転がす。
「スティング!」
「くっ!」
隣に立っていたザークには、鋭い突きをお見舞いする。
そして改めて左手でアポートを唱え、大剣をヘジーの足に垂直落下させる。
バツンと音がした。
これは部位破壊した音だろう。
声にならないヘジーの悲鳴が聞こえる。
狼が喉元、顔面に喰らいついていた。
ナイスだ!
「てめぇは今朝の!? 何しにきやがった!!」
「仕返しに決まってる」
ザークが【スラッシュ】で斬り込んでくる。
動揺からか、かなり大振りの【スラッシュ】になっているので、【スティング】を使用して胸をひと突きしながら接近する。
これで大振りの剣なんかこわくない。
ザークの身体にズズズと突き刺さって行く確かな手応えを感じた。
急所攻撃になったか、大きくHPが減っているのがわかる。
ヘジーなんかもう虫の息みたいなもんだし、そのまま剣を持つ腕を掴むと、腰を払って投げ飛ばす。
「アポート!」
倒れたザークの両足にも大剣を落とす。
質量攻撃は強い。確信。
おっと、ヘジーのHPがもう残り僅かだ。
レイピアを喉元に突き立てると光の粒子になって消えて行った。
アイテムが飛び散る中で、ザークがこっちを睨みつけていた。
「てめぇ……覚えておけよ」
「さらば、もう会うことも無い」
ザークの喉元にレイピアを突き刺す、しぶとく生きていたので腹に大剣を【アポート】で落とした。
ちくしょうと、一言だけ告げてザークは光の粒子になって消える。
ザークのアイテムが散乱して、そんな中で良い物を見つけた。
【アイテムボックス】ウェストポーチ型
レベルに応じて収納容量が増える。
[スロット数=レベル×2]
こんな物があったのか。
正直大剣背負ってから、麻袋を背中に括り付けるのが面倒だった。
プラスして利用しよう。
大きな物も入るみたいだし、便利過ぎる。
そしてレベルが二つも上がっていた。
賞金も20000グロウ獲得している。
まぁ戦利品は一旦帰ってから整理しよう。
手当り次第にアイテムボックスや麻袋に彼等のアイテムを詰め込んでいると。
手傷を負った狼が悲しい鳴き声を上げていた。
瀕死のへジーの反撃を受けて喰らいついていた僅かな狼もみんな死んでしまったみたいだった。
傷を負ったフォレストウルフが一頭、傷を負った足をペロペロと舐めていた。
「おいで」
「くぅん?」
魔物だけど、流石に狩る気には慣れなかった。
これも何かの縁だし、初級回復ポーションを掛けてあげる。
流石に生肉は持って無いからな、サンドイッチ食うのかな?
上げてみるとほとんど食べられた。
俺も残った一つを食べて空腹を満たす。
ポーションのクーリングタイムも終わったみたいなので、改めて今一度初級ポーションを傷に掛けてあげる。
これで完治するはずだ。
「ワォンッ!」
まるでお礼を言っているかのように、ひと鳴きするフォレストウルフに背を向けて俺は森を後にする。
次ぎ会う時は狩るもの狩られるもの同士だしな。
第一、群れで居たら次は見分け着かんし普通に狩っちゃうだろう。
さらば狼、お元気で。
ーーー
プレイヤーネーム:ローレント
職業:魔法使い見習いLv10
信用度:50
残存スキルポイント:4
◇スキルツリー
【スラッシュ】
・威力Lv10/10
・消費Lv1/10
・熟練Lv1/10
・速度Lv1/10
【ブースト(最適化・黒帯)】
・効果Lv3/10
・消費Lv3/5
・熟練Lv3/5
【アポート】
・精度Lv4/10
・距離Lv2/10
・重量Lv7/10
・詠唱Lv1/1
【スティング】
・威力Lv1/10
・消費Lv1/10
・熟練Lv1/10
・速度Lv1/10
【投擲】
・精度Lv1/3
・距離Lv1/3
【掴み】
・威力Lv1/3
・持続Lv1/3
【採取】
・熟練Lv1/3
・眼力Lv1/3
【解体】
・熟練Lv1/3
・速度Lv1/3
【鑑定】
・見識Lv1/6
◇装備アイテム
武器
【凡庸の大剣】
【鋭いレイピア】
装備
【初心者用のローブ】
【初心者用の服(全身)】
【黒帯】
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朝更新忘れてたのでお詫び連投です。
次回川回、漁師の下りです。
お読み頂きありがとうございます!