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俺もローヴォも共にレベルアップは無し。
報酬は?
グロウに魚素材と食材でした。
レア報酬とかあるのかね?
ないよりマシだが、強制戦闘は経験値効率がいい方なのかな?
クリアメンツにもよるのだが……。
「漁師さんまたね、一緒だったからクリア報酬が良かったよー」
「みんなみんな喜んでる」
損傷率は80%だった。
アベレージが知りたいところだが、そんな暇はない。
今日、市場が開かれてるという情報は仕入れている。
厄介な連中に見つからないようにローブを深く被ると、双子に別れをつけた。
「ダメだよ兄ちゃん、こりゃ買い取れねえ」
古物商?
両替屋?
ルーペ持った奴に売りたいと申し出たら買取不可を食らった。
どうやらノークタウンの先にある教会の印をつけなければならないんだと。
幾らかのお布施によってそれを受けなければ、流通価値を得ることはない。
何のためにここまで……。
「闇市に行きゃあいいと思うが……、信用度は下がるしレッドネームになりかねないぞ?」
「やめとくよ」
元来た道を引き返す。
貨幣的素材としては扱えないってことは、おとなしく装備品に利用しろってことかな。
ちぇ、うまく考えられてやがる。
「あら、ごきげんよう」
「ん?」
後ろから声がかかる。
日傘にドレス。
見たことあるな……?
【アンジェリック】見習い精霊術師:Lv30
・下級土属性魔法使い
・下級水属性魔法使い
思い出した、ケンドリックの妹か。
今日はうざいその他大勢はいないのか?
ふむ、可憐な姿だとは思うが、残念ながら俺の好みじゃないな。
特に話すこともない、狩場の独占してるなら俺はコンバットエイプと踊るだけさ。
「待ちなさい」
精霊術師というのが気になるところだが、一体何だろう。
止められた理由を振り向かずに考えていると。
「お茶でもいかがかしら?」
……いったいどんなタイミングで?
もう俺、帰ろうとしてたよね?
「おごってくれるなら」
「あら、麗しい婦女に支払いさせるなんて、罪な男ですこと」
「ならまたな」
「妾、お金は余っているのことよ? このアクセサリーだって貢物」
「さいでっか」
ってことで場面はカフェに移り変わる。
なんとね、彼らの領有する森の街へと入れちゃいました。
来賓扱いで、これがお嬢様の格なのか?
俺が気になるのはこの先の森マップなんだけど。
プレイヤーがある程度集まって規則も緩くなったのか?
それともある程度税を徴収して自由にさせてるのか?
思っていたより街は解放されていた。
ノークタウンとの関係もうまくいっているようだった。
これは評価のし直しかな?
ケンドリックも丸くなったというのだろうか?
[私兵団募集! 来るべきレイドボスに備えて、今こそにっくきテンバータウンのプレイヤー共に鉄槌を! 先に倒して馬鹿笑いしようぜ☆]
カフェの掲示物にある。
変わってないようだった。
「ただの陣取りゲームよ」
呆れる俺の表情を読みとったアンジェリックがクスクス笑いながら紅茶を飲んだ。
どいつもこいつも紅茶とかコーヒー飲みすぎ。
粗茶を味わえ。
「陣取りゲームか……」
ぶっちゃけ一人で遊ぶので十分面白かったりする。
いまさら役割分担してってのもなんだかな。
気ままにプレイする方が性に合ってるのも確か。
ちゃんと全うな戦士としてプレイしてれば兵隊ごっこしてもよかった。
「あらお嫌い?」
「あまり惹かれないかな」
「そうだ、この後時間はありまして?」
「え?」
「よかったら狩りでもいかがでしょうか?」
二つ返事で場面は変わった。
カフェは奢ってもらった、ケーキも食べた。
美味しいじゃないか、さすがノークタウン。
一応商売が盛んな町だという立ち位置通り。
いろんな物がおいてある?
アンジェリックとのレベル差は八。
ツクヨイも十分廃人勢だというみたいだから、この女もなかなかやるじゃん。
そして、気になるのは精霊術師の項目。
なんで魔法職技能二つ持てるんだよ。
と突っ込みたいのを我慢して、その戦闘を見ていた。
「エスメラルダ」
ニシキヘビのモンスターだと思ったら、彼女のテイムモンスターだった。
一体それは?
「この子はエスメラルダ。素敵な模様でしょう?」
なんと、ノークタウンの調教師に調教スキルを学んでから市場で偶然売られていた使役モンスターを購入したんだとか。
黒鉄の時もなんやかんやあったが、ノークタウン恐るべし。
格差ありすぎじゃない?
その分統制されていてモンスターの脅威は奥に行かなければないとか?
「そうだ、うちの兵は馬を持っているのよ?」
「ええ」
資本主義の宿命か?
格差社会か?
馬を持てるのは商人プレイヤーだけじゃなかったのかと問いたい所。
ノークタウンのプレイヤー陣で編成された騎兵隊は、町の巡回クエストをこなす事で馬の所有権を認められたのだった。
さて、アンジェリックとエスメラルダの戦いっぷりは?
キラータイガーすら容易に蹴散らす。
まあそんなものか?
フォレストタイガーのクラスチェンジモデルだからな。
縦ロールが揺れる。
土が動き、水が飛び、その精霊によって増幅?
下級魔法使いの魔法とは思えない威力だ。
エスメラルダは虎を締め上げると、一気に捕食した。
「次は貴方の番ですこと」
ぶっちゃけるとレベルが低過ぎて相手にならないと言うか。
シグナスウルフの群れでもよこしてくれたら良いと思う。
さて、森をかき分けて奥に進んでみる。
ノークタウンの森は何が出る事やら?
【フォレストオウル】Lv8
森の知恵者と呼ばれる猛禽類。
無音で森を飛び交う。
【フォレストオウル】Lv7
森の知恵者と呼ばれる猛禽類。
無音で森を飛び交う。
単体じゃなくて、数で飛んでるんだけど。
梟って群れるっけ?
さて、統べている奴が居た。
一回り大きな身体を音も無く飛ばす。
【オオフクロウ】Lv10
大型で極めて獰猛な梟。
無音で森を飛び交う。
ん、こいつも地味に数羽程飛び交ってるな。
どういうことだ?
群がる梟の中に目の色が違う梟がぽつりと存在した。
枝に止まって首を傾げてこちらを窺っているのか。
その首の動きに合わせて梟達が飛んでるように思える。
【マナフクロウ】Lv5
魔素を操り不思議な力を使うフクロウ。
扱う魔法属性は火、水、風、土のいずれか。
「いけない、ローレント。あのモンスターは最近この辺りに出没して多くの被害を産んでいるのよ!」
「上等」
正直、今となればワンクラスは雑魚。
ツークラスは生温いし、スリークラスまで行く上位モンスター陣とじゃないとろくに渡り合えない。
適正レベルを見ろとな。
まあそれでも、数で押されて勝てるのか?
そりゃ戦い方次第だよな。
ローヴォは既に森の茂みに潜り込んだ。
得物は?
最近流行の鬼魔の長剣を抜いて、取り回しが聞く黒鉄の双手棍を予備に持っておく。
先制攻撃はアポーターの揺るぎない一手だったのだが、今回は使わない。
腰につけてある弾機銛は鳥相手に的を絞れなそうだったから。
ストレージに常備してある物を取り寄せる。
投網ですな。
「な!?」
ありえない?
森でも網を使っていいだろう。
群がるこやつらにはうってつけの先鋒だったりする。
感想にもありましたが、一応イベント期間中です。
ただイベント開催日はログインの多い土日になっているので、平日はそのまま平日ダイヤで運行しておりますしだいです。
久々に登場しましたアンジェリックです。容姿とか覚えてなかったので、縦ロール高飛車って事にしておきました。彼女も彼女でセリフが妾とかわたくしとか安定しないと思います。
だってケンドリックの妹ですし。
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ローレントの事をレイプ魔呼ばわりした奴らには、きっと因果応報が降り注ぐでしょう……。