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こっそり着服しようと思っていたが、レイラにめざとく見られていたようだ。
レイラの疑り深い目が俺を襲う。
「なによその綺麗なの」
「おい斧回収してくれよ!!」
トモガラの手斧と等価交換したんだ!
銀の斧でも金の斧でもない。
俺が落としたのはなんでもない。
ただ虹色に光る鱗を拾っただけだ。
そう、これは魚の鱗。
ただの鱗だ。
「これは魚の鱗だから、なんでもない!」
素早くアイテムボックスに入れると沼に飛び込んだ。
ピラルークの数はそこそこ減っている。
そろそろ魔法スキルの波状攻撃を搔い潜った奴らが接近しているし、本領発揮と行く。
イシマル謹製の断罪の杭だ。
倉庫に入れてあるのは、もちろん大きな石杭だったりする。
「波を立てないでーーー!」
レイラの声が響くが、もう水中さ!
水守の玉を使う、妖精さんが舞う。
ああ、フェアリークリスタルの亜種みたいなもんか。
時間は三十分とそこそこ長い。
一度水面に上がってピラルークの突進が迫る。
「任せるである」
そう言って大盾を持ったガストンが突進を受け止めた。
そしてすぐに水の底へ。
なんとなくだが、こうなることは予想出来てた。
「ナイスガストン、ガストンナイス」
弾かれたピラルークに足でエナジーショック。
推進力を得ている。
ついでにスティング。
これなら泳がずとも飛びつける手筈だ。
懐から魚鉤を取り出して眼孔に突き立てる。
やや暴れた後、眼孔に抜き手をつっこんでエナジーショック。
痙攣した身体は静かに沈み始めた。
「ピラルークが降って来たである」
「もう死んでる」
「ひえええ、水怖い水怖い」
「落ち着けよ、アルジャーノのライトリットで照らされてるだろ」
「水が濁ってる!」
「潜水のスキルとっといて良かったぜ、あと防水加工の装備もな」
沼の底に、過剰な攻撃力を兼ね備えた男衆が集まる。
トモガラ、イシマルは相変わらずの力バカで、ガストンは硬い。
ミツバシは手先が器用で、俺は魚の弱点を熟知している。
「へえ、アクアベールって水中でも便利だね」
水属性の魔法使いは、まさに己の戦場とでも言える。
十八豪が意気揚揚にピラルークをぶん殴っていた。
「支援は任せてね!」
「お姉様? 何を流してるんですか?」
「ん? 浄化剤」
「毒じゃないだろうな!!!」
イシマルが吠えていた。
沼の視界が良好になる事を願う。
あと変な微生物とか菌とか寄せ付けない様にしてもらえると助かる。
「山田ーーー!」
「はいっす!!」
「船寄せるぞーーー!」
「了解っす!!!」
女性陣は基本的に船の守備に当たる。
こうして水中に主力が降りて来られたのも、ツクヨイのダークサークルが思ったよりも効果を発揮したからだ。
彼女の独壇場とかした黒い船に集まって、新徳丸と山田丸とマルタで舵を取り破損箇所を修復する。
迎撃には、十六夜とブルーノ、エアリル、ブラウ、アルジャーノ、ブリアンがいれば十分だろう。
レイラは指揮官。
幸運を運ぶ狼もいるから心配は要らない筈。
水中からピラルーク達の下をくぐる。
蠢く藻が絡むが、トモガラが鉈を取り出して断ち切って行く。
流石樵夫。
「うざってええええええ」
「水の事はもう怖く無いようで何より」
イシマルは強引に前に進んでいた。
まるで風よけにして、ミツバシが後ろを進む。
「ローレント、クラリアスっていったいなんだい?」
「大鯰だって」
「鯰って、あの口がデカい?」
「そう、あの口がデカい」
見えて来た。
沼の奥にジッといすわる、黒くて艶のある巨大な魚。
【クラリアス】Lv:???
沼の主。普段はじっとしているが、
一度暴れだすと大地が揺れると言われている。
ピラルークをひとのみ出来る程の口を持つ。
「でけえ……」
「飲み込みに注意だって、確かにあの口じゃ……、おいローレントどうする?」
あまりに規格外の巨体を目の前に、ミツバシとイシマルが息を呑んだ。
完全に飲まれている様だった。
そして目の前をただ泳いでいただけのピラルークが、捕食された。
バキバキと音がして、更に恐怖心を煽る様だった。
「これで腹一杯だな。行くぞ」
「あたしは蒲焼き好きだよ。……好きだよ、バーカ」
トモガラが戦斧を片手に飛び出して行った。
それに続いて十八豪も、何故か俺に蒲焼きが好物発言をして飛びかかって行く。
「なら捕まえて蒲焼きだな」
「醤油はどうなんだ」
「あれってタレがうめえだけだろ」
ミツバシもイシマルも、気を取り戻して戦場へ。
たった今、トモガラが髭に一撃を入れクラリアスが暴れだした最中へ。
果敢に飛び込んで行く。
日々、感謝の気持ちをこめて書いています。
感謝のタイピング、一万回!
わさーっと書いているので誤字脱字は申し訳ないです。