-10-
帰る前に一応メッセージを二人に入れておくと、既に鍛冶屋に二人とも集まってくれていた。
あれ、見かけない顔もある。
「調理師のサイゼです」
「私は服飾師系のセレクよ」
町人スタイルの恰好に身を包んだ二人だった。
サイゼだけエプロンを身につけてる。
ポリシーとか、アイデンティティーなんだろうか。
ちなみにレイラは白衣とローブを足して二で割ったような服を身につけて。
ガストンはスキンヘッドしかもう見えない。
汚れた前掛けと汗ばんだインナー、テカテカしているムキムキの二の腕なんか目に入らない。
吐き気がする。
「なんか、失礼なことを思っているであるか?」
「そんなことは断じてありません」
こういうお約束って普通美少女との絡みであるはずだが。
そんなイベントは俺には無いようだ。
「なんか、すごい恰好よね」
長剣とこん棒、それにゴブリンの髑髏を腰に身につけ、パンパンに膨れた麻袋を背負ってボロボロの初心者用装備に身を包んだ俺のことだろうか。
「南の森で薬草の群生地を見つけました。ゴブリンも取りに来るのでついでに狩っていただけです。一緒に買い取りお願いできないですか?」
レイラは二つ返事で了承してくれた。
「ひゃ〜たくさんだね薬草、ありがとう! 色々オマケしとくね。代金はどうするの? グロウ払い? それともポーションも必要?」
「初級回復ポーション五つと残りはグロウでお願いします」
ゴソゴソと鞄から金貨類を取り出すレイラ。
初級回復ポーション五つと3000グロウ頂いた。
「一杯あるから色付けといた」
「レイラさん、お肉はこっちに回してもらっていいですか?」
「グリーンラビットの毛皮は私が貰っていい?」
「いいよいいよ〜」
レイラさんを介して麻袋の中身が根こそぎ奪われて行く。
残ったのはゴブリンの骨くらいだった。
食べカスみたいになってしまった。
腰からゴブリンの髑髏を外すと改めて袋に入れなおしておく。
「それもドロップかしら?」
「そうです、袋に入りきらなかったので腰に括り付けてました」
ありのままを告げると、
「蛮族みたいよね……」
レイラさんはそう言葉を漏らしていた。
途中で消えていたガストンが、武器を手に持って戻ってくる。
「注文の品である。大剣は調節だけなのですぐ作れたのである。レイピアは力作である、トコトン鋭さを追求した、強度も序盤では申し分ない」
無骨な大剣と、針の様な剣。
一目で気に入った。
「鞘は別途の料金がかかるのだが、ゴブリンの骨とこん棒を頂ければ無料で見繕うのである」
「じゃあそれで」
「承った」
ガストンは短く返事すると、再び奥に戻ってしまった。
そんな様子を見ながらサイゼが言う。
「ガストンさん、心無しか嬉しそうじゃ無いですか?」
「まぁ鍛冶馬鹿みたいなもんだからねあいつ」
酷い良い様だった。
それも友達の間ならでは、なのかな。
「えっと、ローレントさん……だったわよね?」
「はいなんでしょう」
セレクが俺の服装を見ながら訝しむ表情をする。
「何でローブ着てるの? 剣とか作っといて」
その質問に、レイラの方へ目を向けると、口笛を吹きながら目を泳がせていた。
生産職は口が硬いし義理堅いんじゃないのか。
「すいません、その辺はプライベートなので」
「ふーん、アポートのローレント、……よね?」
ちくしょう、あの掲示板みんな見てんのか。
アレから迂闊な書き込みしないように心がけてたのに。
「迂闊でしたね、ほんとに」
レイラを見ながらそう言うと、フォローを入れてくれる。
「セレク、あんまり深入りしない」
「ごめんごめんって、どういう人なのか気になっただけなの。……でも魔法職でスラッシュ持ってる馬鹿だけど、得体の知れないスキルを持ってる馬鹿だって掲示板では有名よ?」
馬鹿が被ってる。
そんな言われようなのか……。
もう二度と書き込まない。
苦悶の表情を浮かべる俺に、セレクは慌てて謝罪してくる。
「ごめんってば、わ、私でよければ装備とか作るよ? ほらもうそのローブボロボロ見たいだし……、うん、安くします。機嫌直して」
「はぁ、大丈夫です」
一度失った信用を再び取り戻せると思うてか。
セレクには少し気をつけて対応しよう。
ちょっと掲示板見てみようかな。
ーーー
スキル詳細つくろうぜ☆1
1.ユヅキ
ここはお互いのスキルグローイングの詳細を公開する場所です。それに伴った上位スキル、派生スキルも余す事無く公開しましょう。
私は魔法職なので、エナジーボールから。
成長パラは、
【エナジーボール】
・威力Lv5/5
・消費Lv5/5
・熟練Lv5/5
・速度Lv5/5
初期5ポイントとレベルアップポイント全部つぎ込んだら、6レベくらいでマックスに
そこから火、水、風、土の四属性のスキル派生。
単体から複数まで出現。
一応スキル攻略したいから全部取るけど、上げて行くのは基本一つかな。
2.パニオ
ベータみたいに1次スキルオンリーでずっと続けて行く事ってできなくなったのか。
あの時は上位派生って言うよりも別の単体スキルって感じだった気がする。
〜〜〜省略〜〜〜
765.オバンド
武器にも種類があって、それでスキル派生でる。
大剣、長剣はスラッシュ……大きな一撃系
ナイフ系はスタブ……発動早めの二連撃系
後は予想だが、ランスだとスピアとかそんな感じの突き刺す系のスキルがでるんじゃん?
766.モハーメド
さっそくグリラビの皮で手甲ってかグローブ作ってみた。
ブースト先行の格闘タイプをやる!
で、スラッシュも一応取ってみたんだが……、
767,ユヅキ
>>765
情報ありがとうございます。
今の所派生はマックスにしなくても良い感じみたいですが、上位スキルはマックス必須っぽいですね。
二次転職がレベル幾つからなのかわかりませんが、レベルの上がり的に30前後だろうとは予測されています。
上位スキルとは二次転職を行ってから取得可能なのか。
ひたすらそのスキルを上げておけば取得可能なのか。
まだ私もレベル全然たりないマンなので、攻略組に出てるかたよろしくお願いします。
768.パニオ
>>766
おい、そこでとめんな。
続きを早く話せ。
さもなくばしらんぞ、どうなっても。
769.ガンスト
>>767
まとめてばっかじゃなくて、はよフィールドに出ろガリ勉。
まぁ……ありがとな///
ってかローレントっていうアホ育成してるやつ、見た?
書き込みも無いようだしな。
770.めろんちゃん
キモいおっさんがいるわね。
771.モハメド
素手でスラッシュできた。
手刀みたいな感じだけど……、偉い反動が来た。
だけど、新しいスキル正拳突きを手に入れた。
【正拳突き】
威力Lv1/5
消費Lv1/5
熟練Lv1/5
速度Lv1/5
一次スキルだからパラは変わらん。
ブースト先行だが、フィニッシュブローとして上げるのはどうだろうか。
772.ユヅキ
>>769
死んでください、お願いします。
あんまりにも皆さんが罵詈雑言いうから来なくなってしまった可能性があります。
ここではあくまで持ってるスキルのグローイングを公開する場所なので、
個人のスキル獲得方針にケチ付ける場所ではありませんから。
773.パニオ
>>769
きもい
>>771
武闘家プレイがんばってな。
魔物に素手とか正気の沙汰じゃないが、ロマンはあると思うようん。
俺は絶対やらないけどね。
確かにスキル公開は基本善意だしな。
まぁ迂闊に公開してわけのわからんプレイヤーに狙われるより、完全に隠しといた方が良いこともあるが、中途半端に晒してるからもうどうしようもない。
\(^o^)/おわた〜状態だよな。
なら公開した方がマシだってこともあるけど。
色々な事情があるんだろうなぁ。
774.めろんちゃん
まぁ、もうその話しは置いといた方がいいんじゃない?
こうやって話題にしてるとより一層こなくなっちゃうわよ。
卑屈できもい気になるおっさんは死んでね。
775.ガンスト
なんでこんな叩かれんの?
泣きそう……。
ーーー
とりあえずガンストは、アホアホ抜かした報いだな。
掲示板を作ったユヅキという人がしっかり火消しとか後の対応してるみたいだから、一々書き込まなくても問題ないだろう。
というか、書き込むつもりもさらさらないが。
グッバイ掲示板、フォーエバー。
「掲示板なんてどうでもいいです。もう見るつもりもありませんから」
「ねぇ、そんな卑屈にならないでよ」
どう勘違いしたか知らないが、卑屈にはなってない。
断じて。
「セレクについては私からも謝っておきます。ごめんなさい」
「いえ、それはもう大丈夫なんですが」
頭を下げるサイゼ。
もう気にしてないからいい加減にしてほしい。
さっそくだが、大剣とレイピアの使い心地を試してみたいんだ。
「待たせたのである……、ん? なんであるかこの空気」
「ああ、セレクが彼のプライベートについてちょっとね」
「なんだまたであるか、客が逃げかねないぞ」
「ごめんなさいってば」
やれやれと溜息をつく生産職御一行。
さて、とガストン改めて俺の方を向くと、大剣とレイピアの鞘を渡してくれた。
「斜め掛けで身につけるタイプもあるのだが、レイピアも使うとなると、両肩は出来るだけ自由な方が良いと見た、抜刀に関しては垂直になっているのでやり辛いと思うのであるが、……必要ないであろう」
ガストンの言葉に頷いて返す。
背中の大剣はアポートで真上に転位させて重さで斬りつけるから、無問題だ。
「ちなみに直すことはできるのであるか?」
「やってみます、アポート!」
後頭部付近に手を持って来て、転位の呪文を呟いた。
すると、シュンと背中にずっしりとした重さが伝わってくる。
「ぐっ……、ブーストで何とかなりそうです」
「それは良かったである」
女子一同は「これが……」と呟いていた。
セレクが言う。
「ねぇ、さっきは本当にごめんなさい」
「いえ、気にしていませんから」
「あの、私もずっと転位とかそういう魔法に憧れてたの。絶対に他言しないと誓うから、教えてくれないかしら?」
ガバっと頭を下げるセレク。
他の皆は絶句している様だった。
気持ちはわかるが、爺さんに迷惑がかかるのも頂けないから、このスキルについて、誰かに教える気はさらさらない。
「すいませんそれはできません、教えてくれた人に迷惑がかかってしまうので」
それにセレクを完全に信用した訳じゃないしな。
残念そうな顔をするセレク。
すまんが、ここの職人達とはこれでお別れかもしれん。
「ガストンさん、ありがとうございました。またいつかお窺いするかもしれません」
「いつでも構わん。修理が必要になったらフレンドリストからメッセージを送るのである」
うん、ガストンだけは余計なこと聞いて来ないし、信用に値しそうだ。
レイラは、ポーションだけで関わりを持とう。
面倒くさくなりそうだし。
「じゃ、さっそく切れ味確かめて来ます」
「夜の狩りは気をつけてね、プレイヤーキラーが最近でるって噂だから」
良いこと聞いた。
北の森の道で俺を殺してくれたヘジーとザーク。
あったら仕返しする。
その前に、気になることを聞いておこう。
「プレイヤーキラーを撃退した場合ってどうなるんですか?」
「特にペナルティは発生しないわね。賞金首プレイヤーになってたらその分お金が手に入るって聞いたことあるけど、まだ初期よ?」
レイラは物騒よね。と笑っていた。
良いこと聞いたぜ!
「ちょっとフレンドずるいわ! 私だって!」
「あ、よろしければお弁当とか包みますがどうでしょうか?」
サイゼの言葉にだけ反応して、500グロウ払って兎肉を使ったサンドイッチを五つ作って包んでもらった。
ついでにポーンと送られて来たフレンド申請、美味しかったので承諾しといた。
もう一つの申請は……、無難に無視しておこう。
触らぬ神に祟り無し。
ーーー
プレイヤーネーム:ローレント
職業:魔法使い見習いLv7
信用度:20
残存スキルポイント:0
◇スキルツリー
【スラッシュ】
・威力Lv10/10
・消費Lv1/10
・熟練Lv1/10
・速度Lv1/10
【ブースト(最適化・黒帯)】
・効果Lv3/10
・消費Lv3/5
・熟練Lv3/5
【アポート】
・精度Lv2/10
・距離Lv2/10
・重量Lv7/10
・詠唱Lv1/1
【投擲】
・精度Lv1/3
・距離Lv1/3
【掴み】
・威力Lv1/3
・持続Lv1/3
【採取】
・熟練Lv1/3
・眼力Lv1/3
【解体】
・熟練Lv1/3
・速度Lv1/3
【鑑定】
・見識Lv1/6
◇装備アイテム
武器
【凡庸の大剣(調整済み)】
【レイピア】
装備
【初心者用のローブ】
【初心者用の服(全身)】
【黒帯】
ーーー
お読み頂きありがとうございます!




