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第二話 中途半端な神様

ふわふわ~としている。まるで体が宙に浮かんでいるような。けれど頭が下になって血が上るとか、そんなことににはならない微睡みの世界。



俺は眠っていた。



小説風に前回のあらすじをいえば、俺は日本から異世界に召喚されて、身勝手にもなにも知らないその世界に放り出された。そのあとRPGみたいな自分のステータス画面をみて、衝撃的な自分のステータスを目の当たりにする。



んでこっからはそのあとの話なんだが、いつまでも門の前に立ち尽くしているわけにもいかないと思って近くにあった森に入ることにした。手っ取り早く身を隠したいと思ったんだよな。だから別に修行しようとか、自暴自棄になって自殺しようと思って入ったわけじゃない。



城とは反対側の道の先には町がみえてたから森じゃなくてそっちに行ってもよかったんだけどな。ステータス画面でもう一つ気づいたことがあったんだよ。



《ステータス》


緒方優人 オガタユウト


HP  23/25


MP  5/5


TA  7/7


LV 1


EXP 0


NEXT 15


金  0


途中略


【魔法属性】 無


【称号】 異世界の旅人・勇者・捨てられた勇者








そう、途中略に隠されて最初はみえなかったが、俺は一文無しだったんだなー、これが。なぜ金の部分だけ漢字なのか、とかつっこみたいが、もうそんな気力は残っていなかった。腹は減って空腹を訴える声をあげてたし、喉も乾いていた。でも町にいったところで無駄。金がなきゃなんもできん。そんでなんか売れるもんとかないかなーとか思って森にはいったわけだ。



結局なにもみつからなかったけどな。



金もない。食べ物もない。家もない。空腹だ。こうなったら寝るしかない。そう思って俺は木に寄りかかって寝ていたはずだった。



だけどなんでだろうな。なんか厄介な臭いのするナニカから声をかけられてる気がするんだが。ここは俺の夢の中じゃなかったのか。不法侵入反対。というか訴えてやる!



「そうだね。ここは君の夢の中だよ。夢の中への侵入に関する法律は聞いたことないなー」



夢の中?じゃあなんでこんなに意識がはっきりしてるんだよ。つか、あんた誰だ。不法侵入じゃないならプライバシーの侵害で訴えんぞ。



「あー、僕?そうだね、君にわかりやすくいうと、神様だよ。プライバシーのことはちょっと横においといて」

「……は?」



思わず声が出た。こいつ中二病か?てか横に置くな!



「中二病じゃないよ。僕は神様。夢の中なのに意識がはっきりしてるのは、(ぼく)と話してるからだよ」



心を読むな!わがまま姫の次は神様かよ。

あー、けどなんだ。ここは異世界なんだったか?じゃあなにが起こっても不思議じゃない……のか?



「……ん?」



俺はその神様とやらを拝もうと目を開けようとしたがあけられない。どういうことだ。



「ああ、目を開けようとしないでね。今僕の姿をみられたら、おもしろくないから」



ふと風が頬を撫でた。話しかけている奴が近づく気配がする。おもしろくないってなんだよ。そんな基準で人の(まぶた)縫いつけんじゃねーよ。まあ仕方ない。話を進めよう。



「んで、その神様が俺になんの用だ」



何度力をいれても開けられん。無駄な努力はしない主義だ。二、三回で諦めた。



「そうだねー、まずは一つ目の用事から話そうか。実は君の召喚に少し僕が関わっているんだ」

「……どういうことだ?」

「君達が召喚されたあの魔法陣。あれに込められている力ってのは僕の力でね」

「はあ?!あんたか、あんたのせいで俺はこんな世界に連れて来られたってのか!」

「あんまり怒らないでほしいな。使用されたのが僕の力ってだけで、不足分の魔力を補充して君達の召喚を実行したのはリリア達だよ。まあ、世界が危機に瀕している時のみ発動っていう条件(ロック)かけといたから、そうそうこんなことにはならないと思ってたんだけど、時期(タイミング)が悪かったよねぇ」

「……」



 いろいろ言いたいことはあるがとりあえず、とんでもないことに巻き込んどいて言い方が軽いな。



「とはいえこのままではあまりに可哀そうだ。というわけで、君の旅路を少しでも楽になるように手助けすることにした。神様が味方になったんだよ?感謝してよね!」



うぜぇ。



「そんな邪見にしないでよ。ステータスウィンドウはわかりやすかったでしょ?」

「……あれ、あんたの仕業だったのか」



そんでやっぱり俺の心の声、こいつに筒抜けだよな。



「あはは。うん。この世界って、君の世界における物語やゲームに出てくる剣と魔法の世界に似てるからさ、あのほうがわかりやすいかと思ってゲーム風にしてみたよ」

「かろうじてわかったけど、俺あんまゲームとかしねーから」

「え、そうなの?!健康な男子高校生がゲームしてないって不健全だよ!」

「普通ゲームして部屋こもってるほうが不健全って言われるはずなんだかな?!」

「それで用事二つ目ね」

「無視か!」

「ステータスやら用語説明をするよ。まず、ステータスウィンドウなんか出しちゃったからゲームみたいに思うかもしれないけど、これ現実だから」

「……というと?」

「この世界で君が死んじゃったら、それはちゃんと君の死ってこと。元の世界に戻ることもできない。そもそもステータスなんて君が理解しやすいようにただ数値化しただけだから、完全に信用してはいけない」

「ということは、この世界の人間は、ステータスを確認できないってことか?」

「できるのもいるけど、圧倒的に少ない。よくギルドでギルドカードを作ると、自分のステータスがみれる、なんていう話が君の世界のとある小説投稿サイトでは溢れてるけど、この世界ではある程度までしか把握できない。君も経験あると思うけど、水晶玉で魔力総量を計られたでしょ。あんな感じで把握したり、魔物は強さは種族によって一定レベルで止まるから、どの魔物を倒せるかで自分のレベルを測ったりしているみたいだね。それと、ステータスはあくまで数値化して具体化しただけであって、必ずそのとおりだとはかぎらないよ。体調気力次第で変化するからね」

「なるほどな。ステータスをみれるのは、俺だけか?」



俺は洋一のステータスもみることができた。なら逆もあるんじゃないかという発想だ。



「君の考えどおりだよ。君はこの世界のほぼすべてのもののステータスをみることができる。そして君以外なら、洋一君だけは同じようにステータスを確認できる」

「なら……」

「そうだね。いつか彼は自分が勇者ではないと気づくだろう。恨まれるかもね。彼のほうが君の召喚に巻き込まれたんだから」

「……やっぱりあいつは俺に巻き込まれたのか?」

「んー……そうだね。まず君がこの世界に召喚される前のことを思いだしてみてよ」



召喚される前?



確か高校で古典の授業を聞きつつ俺は睡眠学習してたんだよな。それで、古典の教師がチョークを……。



あれ?

 


「そう、君は授業中に居眠りしてて、先生にチョークを投げられたんだ。それでそのチョークは君の頭にあたった。打ち所が悪かったんだろうね。君はそのまま病院へ運ばれて死亡しちゃったんだよ」



そこまで詳しく思い出したわけじゃねぇ!そもそも、チョークで死亡ってなんだ。そんな死因さすがに嫌だぞ。



ちなみにその教師の苗字は土井じゃないからな。



「そしてね、残念なことにそのとき洋一君も居眠りをしててね、君に投げられると同時に彼にもチョークがなげられたんだよね。そしてちょうどリリアが召喚の儀式を指示したときと、その出来事は見事重なっちゃったんだ。なんの因果かそれが原因で彼はこの世界に巻き込まれた」

「……どこからつっこめばいいのかわかんねぇ」

「あははは!バレちゃった。今までのは全部冗談。でも君にチョークが投げられたのは本当。ただこの召喚の話はね、詳しく話すと鶏が先か卵が先かっていう不毛な話になるから気にしないことをおすすめするよ。それに彼は彼なりの理由があって召喚されたから。むしろ巻き込まれたのは君のほう」



俺が巻き込まれた。んじゃやっぱり俺は勇者じゃないのか。



「いや、君は確かに勇者だよ。本物の勇者である君が巻き込まれた。神の名のもとに宣言するがこれは動かない事実だ。ただ、君にとっては異世界にあたる今のこの世界は、非常に勇者にとって生きにくい時勢にあるんだよ。たとえば、……そうだね。君を召喚したリリアは勇者にこういったはずだ。魔王を倒してほしいと」



ああ、確かにそうだったな。そんなことをいっていた。



「だけどね、彼女がいっていた魔族が戴く魔王はね、まだ復活していないんだよ。未だにちゃんと完全封印されていてね、今は仮の王が魔王をやっているんだ。そしてこの魔王(仮)は穏健派でね、世界征服なんか全くする気がないんだよ」

「……じゃあなんでリリアは俺達を召喚したんだ?」

「それはねえーと、説明する気はあるんだけど、そこらへんの事情はまたの機会に説明しようかな。そろそろ君は起きたほうがいい」

「は?」



声が遠ざかって、意識が浮上するのを感じた。



「困ったときは、ステータスの詳細を意識するんだよー…」



最後にそんな声をきいた。







「ブルルルルっ、フゴッ」



耳元で変な声がする。



…がぶっ。



そしてなんかに耳を噛まれたぞふざけんな!



必死に目を開ければ目の前にいたのはイノシシ。そして……。



「フゴッ、フゴッ!グルルルルっ」



少し離れたところに、片足を地面に何度も擦りつけて俺に突進する気満々がみてとれる、目の赤い超巨大イノシシがいた。



「……はあっ?」



そしてぴろりん、という音と共に現れたのはお馴染みになりつつあるステータスウィンドウ。





【ワイルドボア】


LV 3


HP 104/110


MP 66/66


以下略





【普通のイノシシ】


LV 2


HP 55/55


MP 0/0


以下略







【ただものじゃないイノシシ】



LV 2


HP 77/77


MP 0/0




【百戦錬磨のバツ8イノシシ】



LV 7


HP 100/100


MP 0/0





【ウリ坊1、2、3、4】



LV 1


HP 3/3


MP 2/2
















ああもう、どこからつっこんだらいいかほんとにわからねぇ!









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