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渡せる舟は何処へゆく?

最近全然執筆できてなかったのでリハビリに短編をサーッと書きました

いつもどうり面白くないですが見てあげてください!

私は今舟に乗っている。

舟に乗り、川を渡っているのだろうか。

ここまでどう来て、何故舟に乗っているか一切思い出せないが舟にいる。

否、ここに来るまで何かあったのだがパッタリと記憶が無くなった感覚だ。

舟に乗っているのは私だけでは無かった。世間一般的に霊魂とか幽霊とか呼ばれるものだ。

私も最初は驚いたものの、特に危害も無く徐々に慣れてきた。

もう幽霊達は死んでいて最後の娯楽なんだ。そう思うことにした。

舟は風も吹いていないのに、何処かへと進んでいる。恐らく向こう岸だがどうやって動いているのか。誰かが操っているのか、私が知らないだけで後ろから誰かが押しているのか、はたまたここにいる幽霊達が漕いでいるのかさっぱり分からない。

一つ分かることはただ進んでいるということ。

まるで宛も無いようにひたすら進んでいるということ。  


ふと私は記憶の奥底から舟に乗る少し前をなんとなくだが、断片的に思い出した。

とても大きな山を登っていた。

下手したら富士の山なんで目じゃないくらい大きな山。

それを何日間もかけて登っていた。

なんでそんな山になんて登っていたのだろう。

その山には生命が無い感じがした。

草木が特別生えていなかったからかもしれない。

今の季節は冬だ。

そりゃ植物だって枯れていく。

他にも理由がある。

生きた物を見掛けなかった。

狐も狸もハクビシンも鼬も。

鳥も虫も何もいなかった。

何故だか分からない。

この地は分からないことだらけだ。


考えることにも疲れ、川の景色を楽しむことにした。

先程も言ったが今は冬。

桜が咲いてる訳でも紅葉が美しく色づいている訳でも無い。

その上霧がかかっていて到底美しいと言えたものじゃない。

ただ、死のような景色が続くだけだ。


今、私が渡っている川幅はそうとう広いのだろうか。

向こう岸に着く気配が無い。

霧がかかっていてうっすらとしか見えないが一本の橋が見えた。

なんとなく分かる色からは恐らく木製ということが推測できる。

私は不可解な点に気がついた。

橋が確実に短い。

遠近法とか霧のせいとかではない。

確実に自信が持てた。

なぜなら何人かの人影が見えたからだ。霧のせいでの幻覚かもしれないが、その動く人影は確実に先に舟に乗った私達より早く向こう岸に着いている。

生憎橋詰は見えないものの恐らく先に着いている。

苛苛してきた。まだ着かないのか。

そんなことを考えているうちになんとなくだが霧が晴れ、向こう岸が見えた。

「やっと着くのか」

無意識に口に出していた。周りの幽霊達は一切気にする様子がない。

知らないうちなのか、ただ本当に気付かなかっただけなのか、大男が舟を漕いでいた。

こんな大男と乗れば舟は倒れそうだがそんなことは無かった。

私は思いきって橋について訊いてみた。

「スミマセン、彼処に架かっている橋、どう考えても川幅と比例しない短さなのですが、なぜでしょうか」

大男は答えてくれなかった。

聞こえてない訳がない。

耳が聞こえない人なのか。

疑問に思ったところで大男が大きな声を張り上げる。

「いいかっー!お前ら、一度周りを見渡せ!川を歩いて渡っている奴らがいるだろう。そいつらは金が無かった奴らだ。その上この辺りはそうとう深い所だ。舟に乗れているだけ感謝をしろっー!」

これは先程質問をした、私に向けて言ったのだろう。

確かに川を歩いている人が沢山いる。

金が無いから?また記憶の断片を思い出した。そういえば舟に乗る前、お金を払った。昔のお金だ。確か・・・

     「六文」

舟に乗る前、大柄の老婆に金を請求され・・・た・・・?

私の中の点が一つに繋がった。

ここは、もしや

そう思った頃には向こう岸に着いていた。先程まで早く着けと願っていた私は今度は着くな着くなと念仏のように心で唱えていた。

大男が口を開く

「いいか!ここからは何度も裁判があるが決して無礼が無いようにっ!特に五回目の裁判では特にだ。閻魔王に無礼講が無いようにっ!お前らはもう死んでいるんだ。」

私は舟に乗る前も死に際も全て思い出した。

妻と喧嘩になり、ついカッとなってしまい殺してしまった。

その後、私も罪の重さから自殺をした。もし地獄があったらなんて馬鹿げたことを考え、六文銭を持ち自殺した。妻と結婚する前に個人的にお葬式のときに使えたらと考えて六文銭を買っていたのだ。

私は自分の体を見た。

私には実体が殆どない幽霊のような体をしていた。服は既に着ていなかった。だがそんなこと、全然気がつかなかった。恐らく他の幽霊達も私と似た感じだったのだろう。


岸には大きな木と大柄な翁がいた。睨まれてとても恐ろしかった。

私は大男に連れられ、

死の世界の裁判所まで歩いていった。

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