道化と俺と彼女。
あいつ等はいつでもお互いを想って、笑っている。
自分の事などどうでもいいというように、笑う。
二人だけの世界の中で楽しそうに、笑うんだ。
俺はそんな二人が羨ましかった………。
俺があいつ等と出会ったのは冷たい雨の降る秋だった。
道化の彼が笑って戯け、
彼女がそれを見て――――――笑っていた。
ああ、どうしてあいつ等はこんなにも楽しそうに笑っているのですか…?
どうしてあいつ等だけがこうして笑っているのでしょうか……?
道化の彼が笑い、観客の彼女が笑う。
その空間に、俺は入れないのだろうか…?
雨の降る公園で笑い合う彼と彼女が、羨ましかった。
だから、奪ってやった。
彼女にある話を持ちかけ、道化の彼から、彼女との時間を奪ってやった。
これで、これでいいんだ。俺はもう、
―――――――――――独りじゃない。
晴れたある春の日。あの日の公園で道化が一人の観客の前で笑う。
道化が笑い、観客が笑う。
俺は――――――――――――…………