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「わわわ~~どうしましょうクロガネさん!あのフリフリの女の子、本隊を一瞬で全滅させちゃいましたよ!」
隣で大きな声を上げるルルエルを慌てて黙らせると、隠れていた茂みに深く身を潜り込ませる。
「嘘だろ‥‥元プレイヤーだったとしてもいくらなんでもあれはおかしい。元々この世界に住んでる化け物かなにかか?」
使用した魔法も見覚えがある、勿論ゲームの中だが。
だが一度にあれだけ大規模な効果なんて無かったし、この世界に来てからもあれ程ゲームとかけ離れた魔法、スキルは見たことが無い。
「様子見しといて正解でしたねぇ~それにしても私達以外のグループはどこへ行ったんでしょうかね、全員が様子見してたって訳ありませんしぃ」
「わからん、確実に言えるのは奴隷中心の本隊は全滅、指揮官替わりの男もたった今殺されたって事だな。」
「情報収集はあらかた済みましたし戻りましょうよぉ~」
「これじゃああの塔に戻るわけにも行かねぇな、俺らだけ無事ってのも不自然な話だ」
「せっかく後少しで塔の内側の人間に接触出来そうだったのに、また振り出しですねぇ」
「また方法を考えればいいさ、命あってのなんとやらって言うしな。」
とっとととんずらする事に決め、音を立てないように立ち上がると、草に絡まってもがいてるルルエルを引っ張り上げ、元きた道を戻ろうとしたところで立ち止まる。
「全くその通りだと思うよ」
何か違和感を感じて足を止めたが、次の瞬間には耳元で聞こえる鈴の音のような聞き覚えのない声。
「危ないですっ!!」
次に聞きなれたルルエルの声が聞こえた次の瞬間には身体を強い衝撃が遅い、弾き飛ばされる。
どうやら間一髪ルルエルの魔法で弾き飛ばされたらしい。
ぐるぐると回る視界の中で、ルルエル杖をこちらに構えているのを見届けると、無理やり体制を立て直すと大剣を抜刀し、隙なく構える。
「大丈夫ですか!」
珍しく間延びした声ではなくはっきりとした口調で話すルルエルに、敵の警戒度をぐんと引き上げる。
首にひりひりとした痛みがある事から、薄く切られたらしい、魔法で弾き飛ばされなかったら今頃首がまっぷたつになっていただろう。
「いつっ、もうちっと手加減しろよ」
「いつもみたいに軽口叩いている余裕は無いみたいですよ」
そう言ってルルエルがいつものどん臭さを感じさせない俊敏な動きで飛び退くと、彼女の青色の前髪が一束ちぎれ、はらはらと宙を舞い、視界の端には辛うじて黒い影を捉える。
「!?速すぎますっ」
「これはやべぇな‥‥全然見えねぇ」
守りに徹する為にルルエルの前に立つと、長く持っていた得物の柄を短く持ち替えた。
次回投稿は8月中に‥‥




