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「ルーチェさん!バリケードの建設、及び迎撃の準備、完了しました!」
「は、はい!了解です、ありがとうございました」
私は今急ごしらえの見張り台の上に立っている。
綺麗な自衛団式の敬礼をしながら報告に来た私より年上の男性に、お礼を言ってから街の住人を一箇所に避難させる誘導に回るように指示すると不気味な程の静けさに包まれる森へ目を向ける。
「嫌な空気だな」
「あ、リーダー、お疲れ様です」
「すまんな、色々な仕事を任せてしまって。」
「い、いえ!私で役に立つなら」
いつの間にか隣に立っていたリーダーは懐から水筒を出すと一気に飲み干す。
「お酒‥‥ですか?」
「大丈夫だ、酔う程飲まんよ」
実際リーダーが酒に強いのは知っているのでそれ以上は追求しない。
「ルーチェ」
「は、はい?」
「お前は逃げろ」
一瞬彼が言った言葉が理解できずに固まるが思考が追いつくと直ぐに言葉が出た。
「なぜですか!私にもまだできることはあります!」
「お前は良くやってくれた、指示も的確かつ迅速だったし例の人間との交渉も成功させてくれた」
「だ、だったら!」
「私はお前に死んで欲しくは無いのだ」
な、なにを!と更に抗議しようとして言葉に詰まる、余りにも彼の目が真剣で、それでいてどこか懇願するような色をはらんでこちらをじっと見つめていた。
「もうじき敵はやってくるだろう、斥候との連絡が途絶えた。」
そう言って彼は小さく息を吐くと続ける。
「お前は良くやった、だから街の皆をまとめて一緒に逃げろ、俺が居なくなったあと街を支えられるのはお前だけだ」
「そ、そんな‥‥」
なぜそんなことを言うのだろう、私なんかなんの取り柄もない、ただ言われたことを卒なすこなせるだけで特別優秀って訳でもない。
「わかったら荷物を纏めろ、そして急げ、どうやら敵は想像より遥かに恐ろしいようだ。」
足早に見張り台から降りていくリーダーの顔は良く見えないが、重苦しい空気を発している、そして再び森を見て驚愕した。
「青い‥‥光‥‥?」
街の正面だけじゃない、良く見るとまるで街をぐるりと取り囲むように青い光が木々の隙間から見え隠れしている、数は多くないが一定の間隔を開けて十以上は見える。
音もなく近づかれ、いつの間にか包囲されている、それはつまり情報を得るために放っていた仲間が、ただ一人の生還、情報を持ち帰る事無く殺されたということだ。
これが敵か
もやもやとしていた感情を振り払い、駆け出す、勝てない、分かってたんだリーダーも。
足が震えるが無理やり動かしてひた走る。
目的は逃げるため、なるべく多くの人を連れて逃げるために




