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※2/1誤字訂正
1ページが長かったり短かったり安定しません汗
「街を襲うのを今すぐやめさせて。」
さもないと、という脅し文句と共に短剣を喉元に押し付ける。
「む、無理だし、もう既に始まってる。今から止めるのは不可能、結果的にあんたの負けだし」
冷や汗を流しながらもにやりと口角をあげて笑うアルティナ 。
「あんたは間に合わないし、ここで私を殺しても何も変わらない。」
「スキルがあるでしょ!あなたのスキルがあれば間に合うかも!」
「い、痛い!刃が当たってるし!」
首に短剣の刃があたった事で痛いと暴れるアルティナを押さえつけていると、ある事に気がついてはっとする。
「動かないで、変な真似したら殺す!」
「残念、もう遅いし」
なぜ今まで気が付かなかったのか。
もしアルティナが既に同一スキルの最使用に必要な時間、[リキャストタイム]を終えていて、スキルを使える状態にあるなら、人形と自分の位置を入れ替えることができる彼女を押さえつけておくことはできない、現に彼女の体は空気に溶けるように徐々に消えつつある。
「詰めが甘いし、あんたまだこっちに来たばかりでしょ、まだ完全にこの世界に慣れてないみたいね!」
「このっ!逃げるなぁ!」
押さえ付けていたはずの腕は半透明になったアルティナを通り過ぎ、彼女の首に向かって振りおろした短剣も同様に地面に浅い傷を穿つだけだ。
「命が惜しかったら街には来ない方がいいし、右も左もわからない世界で、私達はもう虐げられることも、野垂れ死ぬこともない」
「なにを・・・」
これからは私達、優れた能力を持った人間の時代だし。
そう呟いた彼女の姿はもうどこにも無く、次の瞬間には気配すら完全に消えて無くなった。
「急がないと・・・うぐっ・・・」
もう間に合わない、と言ったアルティナの言葉を振り払って、体のあちこちから主張する痛みを我慢して立ち上がる、幸いなことにアルティナが術を解除したのか、木の人形達は動きを止め、力なく横たわっている。
もうじき日が暮れればスキルが発動してもう少し楽になる。
短剣で服を破き、布を作る。それを傷口にきつく巻いて軽く止血すると、辺りを見回して戦闘で見失った街への方向を確認してゆっくりと走り出す。




