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臆病者は夜を駆ける  作者: くろねろこ
1章
16/48

16

短めです



「衛兵だ!ほら散った散ったぁ、見せもんじゃねぇぞー」



鉄製の鎧を着込んだ威勢の良い中年の男性ががそう叫び、男性と同じ格好をした男達が現場に現れる、彼らは雇われて中央街と外周街の間や、街の外壁を警備する衛兵達だ。


彼らが現れると野次馬達は蜘蛛の子を散らすようにして去っていく、残ったのは事件の当事者達と、自分とシェリル達の3人だけであった。




「なんだ、レイカの姉さんじゃねぇか、帰ってたのかい」





「あら衛兵長さんお久しぶりねぇ〜、さっき帰ってきたところよ、そしたら貴方達の目を盗んでおいたをしている人達がいたからちょっとお灸を据えてたところよぉ〜」




「なるほどなぁ、面目ねぇ。ホントなら事情を聞かなきゃいけねぇんだが、姉さんなら問題無いだろう、いつも世話になってるしな」




「ふふふ、それはどうも、じゃあ私は行くわねぇ〜。」





衛兵との会話を終えたレイカはゆっくりとした足取りで歩いてくる。




「お久しぶりですレイカさん。」




「久しぶりねぇヨルノちゃん、2ヶ月以上も留守を任せちゃってごめんなさいね、それとぉ〜そちらの方はお友達かしらぁ?」




「任されるなんてそんな!お部屋、貸してくれて助かってます。それと、この二人は友人です!」



「初めてまして、レイカさん、で宜しいのかしら?シェリル・リーゼバノアと申しますわ」




「初めてまして、妹のシェリアです。」




「あら、ご丁寧にありがとう。レイカよ、ヨルノちゃんとはちょっとした知り合い兼身元保証人なのよぉ〜。それにしても、ヨルノちゃんがこの街の生活に溶け込んでるみたいで安心したわぁ〜」




「仕事の方も順調です。」




「それは良かったわぁ〜、旅先でも心配していたのよ?」




「どうやらヨルノにも用事が出来そうですし、私達はそろそろ家に戻りますわね、外周街もゆっくりみられましたもの、申し訳ないけどヨルノ、家まで送って貰ってもよろしいかしら」




「ごめんね、埋め合わせはするから。」




「気にしてませんのよ、元々私達のわがままですもの」



「お姉ちゃんの言う通りです、それに私も満足しましたし、今日はありがとうございましたヨルノちゃん、家まで宜しくお願いします。」

















「それでヨルノちゃん、私がいなかった間、何か大きな事はあったかしらぁ?」




シェリアとシェリルを家まで送り、別れたあと、先に宿に戻ってて貰ったレイカさんと合流し、近況報告をしていた。



「特に街で大きな事はありませんでしたよ?」




「そう、それならいいわぁ〜、ヨルノちゃん自身の事はどうかしら?」




「私ですか?そうですね・・・」



そう聞かれて、レイカさんを見送った後の事を思い出す。



「深夜の配達の仕事が軌道に乗りました、それとシェリル達と出会って、それから今、街にに在住してる冒険者の方と知り合って、剣を教えて貰っています。」




「そう、そう言えば背中の武器が変わっているものね、でも戦闘は危ないから、余り無理しちゃだめよぉ〜」




「分かっています、あくまでも自衛程度ですから、レイカさんの方はお仕事うまくいったんですか?」




「ぼちぼちねぇ〜、そうそう、旅先の街で元プレイヤーと接触出来たわ」



プレイヤーの話が出ると、いつもの笑顔ではなく急に真面目な表情になるレイカ、その変化に若干戸惑いつつ聞き返す。




「ほ、ほんとですか?どうでしたか?元の世界の知り合いだったり・・・はしないですよね、今後も連絡とったりとかは?」




「残念ながらゲームの頃の知り合いとかじゃなかったわ、ヨルノちゃんみたいにアバターの姿でこっちに来ていたら分かり易いんだけど、普通、こっちの世界に来た人は元の姿だからオフ会でもしてないと見ただけじゃ分からないわ、それに・・・」




いったん話を区切り、テーブルの上に置いてあった紅茶のようなものを一口飲むと、レイカは続ける。





「レベルにもよるけど、元プレイヤーはこの世界の元の住人よりも格段に強いっていうのはもう感じているわよね、その能力は悪用することだってできる、簡単にね。元プレイヤーの中にはもちろんそれを実行する人だっている、その事は覚えていて頂戴ね。」







そう言って席を立つレイカの声は同じ人物とは思えないほど低く、冷たかった。

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