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臆病者は夜を駆ける  作者: くろねろこ
1章
13/48

13

※1/9 誤字を修正しました。

木製の門を開けて広場の奥にある小さな小屋の中に入ると、そこには様々な種類の武器が置いてある、と言っても訓練用なので、鉄製の刃のない剣や、木製の軽い剣などだが。



その中から短かめの鉄製の剣と、30cmくらいの一番小さい短剣を手に取る。



敷地の真ん中まで来ると一旦短剣を足元に置くと、剣を両手で構える。




上段から斜めに一線。



お世辞にも綺麗とはいえない立ち筋だが、剣を振る練習をし始めた頃よりはかなりましになったと自分でも思う。


これを始めたのはおよそひと月前、シェリルと初めて出会ったあの夜、ゴロツキの一人すら遅れをとった事にショックを受けたからだ。



心のどこかで甘く見ていたのだ、レイカさんや自分たち元プレイヤーはこの世界の住人が持つことのできないスキルという強大な力を振るう事ができる、いくら元のレベルが低くても一対一で負けることなんてないと思っていた。




だが現実は違った、ゲームと違いボタン一つでスキルを発動できるわけではない。



現に今使えるスキルはたったの3つ、しかもその内の一つは自動で発動するタイプの物だ。


本来Lv.15のスカウトであればアクティブスキルだけでも5つものスキルを使うことができる筈なのに、だ。



それに現実世界では鉄の剣なんて振ったことなんて無かった。



短剣ならまだしも小刀は短めのであるにも関わらず振るう度に振り回される有様だった。



体格というのもここ数日頭を悩ませる原因だ、身長は低く体つきは華奢なもので力もない、レベルが上がれば腕力は強化されるかも知れないが身長はどうしようもない。



そんな事を考えながらひたすら同じ動きを繰り返していると、木製の門が開き、一人の男が入ってくる。





「クレインさん!待ってました、今日もよろしくお願いします!」




「おう、早いなヨルノ、関心関心。さて、日が暮れないうちにとっとと始めるか!」



茶色の髪を短く刈り上げ、全身を革の鎧で包んでいる、腕には鈍い光を放つ手甲をはめている、歳は20代後半くらいだろうか、がっしりとした体つきではないが、革の鎧の下には鍛え抜かれた肉体があるだろう。



夜乃はギルドにある資料で勉強をしていたが、それだけでは限界を感じ、指導者してくれるものを探していた。



そして今、彼と、彼の仲間数名から、対人戦闘を教わっている、普通ライバルであり商売敵である仲間以外の冒険者に戦闘技術を教えようとする人間はいない、だが彼等は必死で頭を下げて回っている夜乃を見かけ、声をかけてくれたのだ。





「さぁ、いつでもいいぜ、かかってきな」



そう言ってクレインは武器であるその両手をガチンと音を立てて合わせる。



それに対し、夜乃は足元に置いてあった短剣を拾うと右手の剣はそのままに短剣を左手で逆手に持つ。



腰を落として右足を引き、左手の短剣を前に、右手の剣の剣先を地面すれすれに構える。



ゲームであったらありえない、二つの武器を使う戦い方、クレインに教わり、つい最近やっと形になったものだ。




「行きます!」



唯一の持ち味である速度を活かして一気に踏み込むと一息にクレインの懐に潜り込む。



「はぁっ!」



地面から跳ね上がるように下から振り上げられた剣は空気を切り裂きながら突き進み・・・・・ ・・・・・キィィィィンと甲高い音を立て容易く弾かれる。




「踏み込む速度だけは一流、やっぱり面白な、ヨルノは」




直ぐにカウンターが来る、そう思ったときには左手を衝撃が襲う。



振り抜かれたクレインの左腕を考えよりも早く短剣の腹が受け止めたのだ、持っていかれそうになる短剣を握りしめ、体をずらすと短剣を傾ける、ガリガリと音を立てながら短剣の腹を削るように迫ってきたクレインの腕は微妙に逸れ、ずらした体のギリギリを掠めていく。



受けた衝撃のまま後ろに飛ぶと、そのまま距離を取る。



「うまく受け流せたな、及第点だ。だが力任せに剣を振ろうとするな、体格に恵まれないお前さんが戦うにはひたすらに敵の攻撃を受け流し、隙を突いた死角からの一撃しかない。」



まぁ俺も短い剣、それも二刀なんてやったことないからあくまでアドバイス程度だけどな、とそう付け加えると、再び構えるクレイン。




「はい、もう一度お願いします!」



再びクレインの懐に潜り込むと、今度は剣を降らずに短剣をつき出すように押し出す。



その刺突を軽くかわし、再び繰り出されるクレインの一撃を今度は右手の剣で受け流す、今度はうまく衝撃を逃せずに後ろに倒れるが、地面に両手をつくと逆さまのまま体をひねって蹴りを繰り出す。



「そうだ、それでいい。せっかく身軽なんだ、全身を使え!」



軽く受け止められた足を引き戻すと半回転して体制を立て直すが、既に目の前に迫っていたクレインに足を払われ、地面に転がる。





「まいりました」





「なかなか良かったぞ、やっぱりヨルノは筋がいい、声をかけたのは正解だったな。まぁまだまだひよっこだけどな。」




「自分でも短時間でここまで動けるようになるとは思いませんでしたよ、クレインさん達のおかげです。」






そのあと数回模擬戦すると、すっかり日が落ちてしまったので、今日は解散となる。




「ありがとうございました、本当に感謝してます。」




「いいってことよ、その代わりお前さんが強くなったら俺達の仕事手伝って貰うんだからよ」




そう言って気分良さげに笑うクレイン。




「早くお役に立てるくらい強くなってみせます!」




「おう、次は3日後だな、ルーエンが来るはずだ、ヨルノと同じ軽量武器を使う奴だから、俺よりも参考になると思うぞ」




「はい、楽しみにしてます。それじゃあ、配達の依頼行ってきますね」



依頼の時間まではまだあるが、汗を流しに宿にも帰りたい、最後にもう一度クレインに頭を下げて宿までの道を歩いていく。














「それにしても、とんでもない人材だな、たかだか数日訓練したやつの動きじゃねぇぞあれは、俺達もうかうかしてらんねぇな」




そう呟いたクレインの声は誰に届く事もなく風にかき消されていった。





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