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AYAKA  作者: 星河 翼
3/20

#3約束

「毎日、あのお地蔵檬の所には行っているの?ちゃんと行かないと、私達いつまでもこのままだよ?このまま人生生きて行くのなんて考えたくも無い!」

彩華は、真剣に悠治に向き合って、毎日の動向を確認しあっている。倒れた時、耳に流れ込んだ言葉。それはお地蔵様の駆け引きだった。

天から罰されたこの仕打ちを、二人は意識のない頭できちんと聴いていた。

そう、お地蔵様からの要求は三つあった。

毎日欠かさず、供物を捧げる事。それは何でも良かった。とにかく、それを続ければ、二人の魂を元に戻すとそう耳に焼きつている。そして、二つ目に二人に囁いた言葉。

7年。

それが最終期間だと言う事だった。しかし、その事をあの時彩華であった悠治は何故か覚えていなかった。その事を覚えているのは、今の彩華。そう、制限のある約束。それを知っているのは、今の彩華なのである。そして最後にもう一つ……

「もちろんさ。それに間違っても、自分が悠治だって事は言わないようにしてるしさ。安心しなよ?」

そう、この事は誰にも言えない秘密。それが7年の日々を作り上げている。誰かに知られたら最期。一生このままなのである。

「信用して無い訳では無いけど……私達は只でさえ芸能人なんだよ?いつ、この事がバレでもしたら……」

悠治の容貌をしている彩華も実は芸能人。ジェイズと言うユニットで歌手をしている。それは、入れ替わりが済んだ後でも、悠治がちゃんと自分の位置を確保したかった為である。だから、二人が入れ替わった後、悠治は彩華に歌手になる為の一般募集のオーディションを無理矢理受けさせた。

悠治は芸能界で働きたかった。そして、歌手志望であった。空手を習っている傍ら、ピアノも嗜んでいた。その為、音感やリズム感は良い。そして、夢は歌手。いつの日か、大きなステージできらびやかなライトの下で唄を歌いたい。ある意味目立ちたがり屋なのかも知れない。だから、彩華のこの身体でモデルと言う仕事をしている内に色々勉強しておきたかった。そして、演劇やテレビドラマで培いながら、日々歌手になった時の事を思い浮かべながら、芸能界に慣れておくのは手っ取り早いと思っていた。

それは今、叶わないけど、それが夢であった。

それとは相反して、彩華は平凡な生活を送って大好きな人と巡り逢い、そして結婚する事を望んでいた。

親の七光りのような仕事はしたく無い。それが望みだった。それは多分、両親の仕事に対する情熱を幼い頃から見て来た為と、その中で独り寂しい想いをして来たせいでもあった。温かい家庭を持つのが夢であった。

それに輸をかけて、悠沿の家で生活している内により気持ちはそちらに流れ込んでいた。そう、二人は全く異なった考え方をしている。

彩華は、魂が元に戻ったら、直ぐに芸能界から足を洗うつもりだし、それに実はもう好きな人がいる。それは今はどうしてもその本人に伝える事が出来ない相手。同じユニットを組んでいる、英二と言う青年である。

心は女でも、身体は悠治。つまり、どうやっても想いを伝える事が出来ない相手な訳で、毎日仕事で逢う度に、喉から声が出そうな気分で接している。好きなんです。と……

その事は、悠治にも分かっていた。直接、彩華から事情を聞いていたからであった。でも、悠治はその事が面白く無かった。それは、実は悠治が彩華を好きだ。と言う気持ちがそうさせている。複雑すぎる、想いの交錯がそこに有った。空手を習い始めたのも、実は、彩華と一緒に遊ぶ為の工作。二人で行動する事に文句を言う者はいなかったが、それでもいつどんな苛めを受けても耐えられる様になっておきたかったからであった。

しかし、彩華は、まさかそんな気持ちを悠治が抱いているとは微塵も思っていなかった。ただの幼馴染み位にしか思っていなかった。だから何でも悠治には話せた。そして、英二の事も応援してくれるに違いないと、気軽に話したのである。

その時の悠治の気持ちは?そう、憤慨する訳にも行かなかった。嫉妬と言う気持ちは有りはしたが……でも、告白する気にはなれなかった。振られて、自らより去って行く彩華を考えたくは無かった為である。

だから一つの賭けに出たのであった。たった一ヶ月の賭け。それを最期に彩華を諦める事ができるか?それとも振り向かせる事が出来るか?その結果は、一ヶ月後。出来れば自分の気持ちを知って欲しい。でも、彩華の想いは一途。不器用だし、引っ込み思案だし……実る恋かどうか怪しいが……

「大丈夫だよ。分かってる。絶対バレない様にするって!約束するぜ?」

今は安心して寝かし就けなければならない。彩華に負担が行くようにはしたくは無いが、でも、もう、悠治の気持ちは揺るがない。明日からは戦闘だ!と分かつている。これが、彩華の為だし自分自身の為だった。

「うん。じゃあ、おやすみ……悠治」

彩華は、ちょっと不安そうではあったが、自分の部屋に戻ろうとする。

「良い夢見ろよな?おやすみ彩華」

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