#1プロローグ
人は、人の魂を愛するのか?それとも見た目を愛するのか?
大事な人は、一目惚れでも良いのか?それとも、長く連れ添った者を言うのか?
秘密を共有する者同士は愛しあえるのか?それとも、それは不可能なのか?
誰かを好きになるのに理由がいるのか?それとも理由は必要では無いのか?
永久に友人でいなければならないのか?それとも愛は芽生えるのか?
その答えは誰にも出せないから、この世は楽しい。そう、いつでも誰かを求めている。求める事を忘れる事は出来ないのである。
ミルク『今日、発売した雑誌カンロの彩華見たかい?』
ケイ『勿論見たぜ!最高に良い女だよな!あんなイケてる美少女いたらさ、是非彼女になってもらいたいもんダゼ』
カイ『だよな〜グラビアや画像で見るだけってのは勿体無いぜ?身近にいたらさ、モノにしたくなるってもんよ〜』
ここ、彩華公認ファンクラブのホームページでは、毎日多数のファンが集う。彩華は十歳の折り、モデルデビェーした後。演劇、テレビドラマと多才に実力を発揮している今光り輝く一押しの芸能人。その上幸運な事に、大手プロダクションでプロデューサーとして活躍する父と、映画を主として仕事をしている名女優の母親を持つサラブレット。はっきり言って、親の七光りも有りバックアップも伊達ではない。
しかし、そんな彩華にも或る秘密が有った。
彩華『みんな、ありがとう!』
今迄、彩華は一度としてこのホームページに書き込みなどした事は無かった。よくこのサイトを訪れては、自らのポジションを冷静に把握して来た彩華ではあったが、やはり、こういう場に降臨してしまったら有らぬ話題が起こってしまう。だから、今迄は自らの身の振り方を考えて慎重に行動して来た。しかし、ある事情を抱えて彩華はついに降臨してしまったのである。
今日は六月三十日。後一ヶ月後には!その事を考えながら……そして再び書き込みを行った。
彩華『実は今迄このサイトには来てたの。そして重大なお知らせが有ります。その具体的な事は明日の9チャンネルのお昼のワイドショーで明らかになるけど、興味が有ったら是非見てね!じゃあこの辺で失礼します!グッドラック!』
その後に書き込まれた掲示板の内容は、突然の本人自らの書き込みなのか?それともガセか?その話題で多くの者達が賑わった。それほど大変な騒動になっていながら、それを楽しむように見ながら、彩華はほくそ笑んでいたが、『力タリ』という物音が聴こえ、慌ててノートパソコンの電源を切った。
日課になっている訪問者が彩華の二階のベランダに現れたからである。『ガラリ』と窓が開かれる。すると、ちょっと癖のある茶色い柔らかそうな髪を掻き上げ、細身の眼鏡を掛けた一人の少年が彩華の整理された自室に入り込んで来た。
イケ面と言うには少し違うが、お姉さん辺りに好まれそうな甘いマスクをしている。
「何やってたの?」
こんな時間に、女の子の部屋に上がり込む男ってのは問題では有るが、それも仕方ない事であった。そしてちょっと、女言葉で不思議なテノールの声が彩華に話し掛けた。
「別に?」
彩華は、先程迄の事を思い返しながら笑った。これからする事が……明日の昼に何が宣言されるのか?この少年にどういう印象を与えられるのか?その事を考えながら、より、ケタケタと笑った。
「何か隠してるでしょ!」
少年は何か苛立つと言うよりは、ちょっと心配げなそんな表情で問いかけた。でも、当の彩華は笑って誤魔化した。
「悠治は、心配性だね〜」
彩華は相変わらず融通がきかない悠治と言うその少年、にそんなとこに突っ立ってないで。とベッドに座るように指示した。彩華と悠治の背の高さは同じ。同じ目線で話が出来る。
「もう!茶化さないで!それに、忘れないでちょうだい。私達は魂が入れ代わっていて、本当は私が彩華で、あなたが悠治なんだから!二人でいる時くらい自分達をちゃんと位置付けたいのよ!」
ちょっとヒステリックに言っているみたいだが、実の所精神はかなり繊細でか弱い。それがこの悠治の短所だとも思える。そして、重大な秘密とは、悠治が彩華で、彩華が悠治と言う事である。
どうしてこんな事になったのか?それは……
「へいへい、分かってるよ。彩華が言いたい事はさ?でも、容姿は、僕が彩華で君は悠治だ」
不自然だが突然男言葉に戻る。透き通るようなソプラノの声。そう、彩華の中にいる悠治の性格はこうだ。あけっぴろげで、何にでも真正面から接する。その中身とは裏腹に容姿的には、かなりの美少女。色白のモデル体型で、手足が一般の日本人の体型より長い。そして、切れ長の瞳は知的感を出している。その上、長いストレートの黒髪がキューティクルで、光の下では 天使の輸を幾重にも形どるくらい艶が有る。
そんな少女であっても魂は男。何がどうしてこうなったのか?そしてこの二人、彩華と悠治の関係は?それは、今から7年前に遡る事となるのである。
初めまして。こちらでの投稿は初めての翼です。
愛の形。
色んな形も有って良いかなと思い、書き始めた作品でもあったりします。
魂の入れ替わりと言う物で、人の心を何処まで客観的に且つ主観的に表現できるか?
また、二人(彩華と悠治)の気持ちがこれからどう変わっていくのか?
そう言うものも含めて描いて行きます。
かなりハチャメチャな展開ですが、楽しんでいただければ嬉しいです。
もし宜しければ、ちょこっと感想など頂けると嬉しかったり。
これから宜しくお願いいたしますm(--)m