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4. 失われた左目と

この場を借りて……。

読んでくださっている方、ありがとうございます!

とても励みになっています。



「 い……今、何て…… 」


――――命が……削られる……?


四人の中にふと最悪の状況が思い浮かぶ。それは「 死 」。

今までいた人がそこからいなくなる、任務や旅に出ていなくなるのとは違い、二度と帰ることもなく二度と会えない。先ほどのように「 ただいま 」と言って「 おかえり 」と言うことも出来ない。

リゼラは愕然とした。

自分の師は強い。だからどんな任務に出たとしても必ずここに帰ってくる。任務には危険が伴うのもあり、死を覚悟しなければならない時もあるが、自分はずっと師が無事であるのをずっと信じてきたと言うのに。ついにそれも叶わなくなるのか、と。

すると、肝心のディートは首を横に振る。


「 勘違いしないでほしい。 今すぐに寿命が尽きるわけではないよ。 しかし、問題なのは左目を失った際に少しずつ命を削る呪い、その術をかけられた事。 よって今も、進行を遅らせてはいるけど少しずつ私の命が削られていることは確かなんだ 」


だが本当のところは彼自身、今どのくらいの寿命の量が削られているのか分からなかった。

あえて「 少し 」と言ったのは自分の弟子たちに少しでも心配をかけたくないといった親心のようなものだ。

しかし、死は確実に彼を遠い場所へと近づけている。

そんなこととは露知らず、自分に何か出来ることはないか、とリゼラ達は考えていた。


「 俺たちにできる事は? 」


「 何でもします。 仰ってください……! 」


「 呪いをかけた奴は誰なんだ? 」


各々が、師ディートのためにと声をあげた。

が、リゼラは黙ったままである。皆と同じように師を助けたい、望むなら元凶を殺して来よう。術や呪いというのはたいてい、かけた本人が死ぬと解ける。

だが……果たして師はそれを望んでくれるだろうか?そのためだけにわざわざ七階層の部屋に集めたのだろうか?

そんな嫌な予感を胸に秘めてリゼラはディートの言葉を待っていた。


「 うん。 ありがとう。 そう、言ってくれると思ったよ 」


彼の表情はとても穏やかだった。


「 でもね。 お前たちには別件を頼みたいんだ。 ……それはお前達四人にしか任せられない事だよ。弟子のお前たちにしか 」


「 …………なんで……っ! 」


シャンテが悲痛な声をあげる。彼女たちのもどかしさは募るばかりだ。

こんな時こそ頼って欲しい。

一方リゼラは、あぁやはりそうなのか、と思った。

やはり私たちには彼自身のために何もさせてくれないのか、と。


「 すまない。 皆の気持ちは本当にうれしい。 ……でも、これはもしかすると、このユハ・ミシュテアを揺るがす大事になるかもしれない 」


「 世界を……揺るがす? 」


そう、と言って話を続ける。


「 今、各地では光人と対なる存在、闇人達が突然に暴走すると事態が起きている 」


対なるというのは、自分たちの種族を指す時リゼラ達のように、主に昼活動するものは光人、夜に活動するのは闇人、と分けられている。だが、基本的にどちらの時間帯に活動しても身体的に問題はなく、何故そう分けられたかは創世の時代にまで遡る……とか。


「 普段彼らは我々と同じく穏厚な者たちだが、普通にしていたかと思えば、いきなり襲いかかったり破壊行動をとったりする。 年々その数は増してるんだ 」


そこで調査のために二年の長期任務に任命されたのが自分だった、とディートは言った。

アニエスが疑問を問うた。


「 先生がその傷を負ったのはその時なのか? 暴走した闇人に傷付けられたのか? 」


「 ははは。 まぁ似たようなものです 」


「 おい。 はぐらかすのは得策じゃないぜ 」


アニエスの問いに対して曖昧に答えたディートの言葉が気に入らなかったのか、ハバートが口を挟んだ。


「 アンタのそれは暴走しただけの者が付けられる代物じゃない。 冷静にかつ冷酷非道な、ましてや命を削る術なんてのはよ。禁術を平気で扱うやつ以外いねぇだろ 」


はっと全員が息をのんだ。

ハバートがなぜここまで分かるのかというと、まがりなりにも聖職者だからである。正道も邪道も扱い、正義を求め神に仕える。これがこの世界の聖職者である。ハバートが聖職者らしくないのは、また別の話だが。

彼の言葉を聞いたディートは、やっぱりそうですね……と少し頼りなさげに呟いた。


「 ではこの事もお話ししましょう。 ですが、先に四人に任務を告げなくては 」


――――新しい任務。


これで決まってしまった。自分たちが師のために出来ることはないと。新たな監督者の元、言い渡される新しい任務に集中しなければならない。

つまり彼は、自分自身よりも世界を選んだのだ。それが使命でもある。

だが、形容のしがたい思いがリゼラ達の胸に走った。


「 四人全員に任務を言い渡します。 お前たちでパーティーを組み、改めてその原因について調査をし、場合によっては支部とも連携を取って問題解決に当たりなさい。 ……長期任務になるかもしれない。それも、念頭に入れておくように。 …………返事、は? 」


師の切実な最後の台詞に四人は歯噛みする思いで返事をする。


「 ……っ、はい…… 」


ディートは苦笑いしながら瞑目した。彼らにそんな顔はさせたくなかったが、仕方がないと割り切った。

だが、その表情は少しだけさびしげに見える。

そしてセレーヌを見やり、互いに神妙な顔で頷いた。


「 ……彼女に、私の引継ぎとして来てもらったと言ったね 」


確かに、言っていた。


「 今まで私が任務を言い渡してお前たちをまとめていたが、これからは彼女がまとめ役だ。 ……あぁ、もちろん私がここを去る訳ではないよ。 ただ、任務には万全を期した方がいいと巫女長と話したんだ 」


だから、ちゃんと彼女とうまくやってねと四人に念を押した。

セレーヌは厳しそうに見えるが、ディートとのやり取りを見て、己が師の信頼を得ている者なのだろうと彼らは思った。一人、シャンテは複雑そうだったが全員頷いた。


「 私からも、よろしく頼む。 精一杯君たちの力になろう 」


セレーヌもそう言って四人と手を交わす。


「 あと、皆に忠告することがある。 セレーヌ、君にもだ 」


ディートはそう言って五人を見た。


「 この左目の件……どうやら闇人の暴走とはまた違って、裏で動いている闇人がいる。 これはその者につけられた 」


半年前、彼が調査のために訪れた最後の地域で遭遇し、その際に左目を切り付けられ今まさに命を削られているという。



「 闇人の名前はジルと言っていた。 年齢は不詳だが、白髪に髭の生えた隻腕の老人だ。 かなり危険な人物だよ。 もし見かけたら出来る限りすぐに退却すること。 間違っても戦ってはいけない。 いいね? 」




めが・・・目がぁぁぁぁ(二回目)……大事なことなので二回言いました。


また更新は不定期ですが、よろしくお願いします。


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